64 ロクヨン 後編


(2016年 日本)(上映時間1時間59分)
監督:瀬々敬久
出演:佐藤浩市、綾野剛、榮倉奈々、夏川結衣、緒形直人、窪田正孝、坂口健
太郎、筒井道隆、鶴田真由、赤井英和、菅田俊、烏丸せつこ、小澤征悦、金井
勇太、芳根京子、菅原大吉、柄本佑、椎名桔平、滝藤賢一、奥田瑛二、仲村ト
オル、吉岡秀隆、瑛太、永瀬正敏、三浦友和
*TOHOシネマズ日劇ほかにて全国公開
ホームページ http://64-movie.jp/
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<ストーリー>
昭和64年に発生した未解決の少女誘拐殺人事件・通称「ロクヨン」。事件から1
4年が過ぎた平成14年、新たな誘拐事件が発生する。犯人は「サトウ」と名乗り、
身代金2000万円をスーツケースに入れ、父親に車で運ぶよう要求するなど、事
件は「ロクヨン」をなぞっていた。広報室の三上(佐藤浩市)は記者クラブと
報道協定を結ぶ必要に迫られるが、捜査情報はほとんど提供されず、記者たち
は一斉に反発する。業を煮やした三上は、刑事時代の上司・松岡が指揮を執る
捜査車両に乗り込んでいくのだが……。

<レビュー>
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スリリングな誘拐事件の顛末と犯罪をめぐる人間ドラマ
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横山秀夫のミステリー小説を映画化した前後編2部作の後編です。昭和64年に
起きた未解決の誘拐殺人事件「ロクヨン」に関する警察庁長官の視察話を背景
に、県警内部のバトル、県警VS記者クラブの対立と、その中で苦悩する広報
官・三上の姿を描いたのが前編。

そして、この後編では、前編の最後に登場した新たな誘拐事件が描かれます。
それは「ロクヨン」を模倣したかのような事件。犯人が「サトウ」と名乗り、2
000万円をスーツケースに入れて父親に運ばせます。誘拐事件なので、三上は記
者クラブと報道協定を結ばねばなりませんが、捜査陣は情報をひた隠しにし、
記者クラブが猛反発します。そこで三上は捜査車両に乗り込んで、情報を収集
しようとします。

前編は人間ドラマが中心でしたが、こちらはエンタメ的な面白さがタップリ。
誘拐事件の顛末をスリリングに描き出しています。特に三上が捜査車両に乗り
込んでからは、息をもつかせぬ展開です。

同時に、その現在進行形の事件を通して、かつての未解決事件「ロクヨン」の
真相が少しずつ明らかになっていきます。そこには遺族、犯人、事件に翻弄さ
れた元警官などがかかわっており、彼らの様々な思いがスクリーンに渦巻きま
す。

ラストに待ち受けているのは原作とは違う展開。「ロクヨン」の真相が見えた
のに、それが十分に追及されない状況の中、三上はある行動に出ます。それは
映画的に魅力的な展開であるだけでなく、三上をはじめ事件にかかわった人々
の情念を浮き彫りにする展開でもあります。それを通して人間の心の闇と、犯
罪の持つ複雑な側面を思い知らされます。修羅場のあとの少女の絶叫がいつま
でも耳に残り、やるせない気分にさせられます。

というわけで、エンタメ的な面白さから始まった後編ですが、ここに至って人
間ドラマとしても見応えのある作品に仕上がっています。人間の心の闇と犯罪
の不可思議さ、複雑さを描いたという点で、同じ瀬々敬久監督の『ヘヴンズ ス
トーリー』と通底するものを感じてしまいました。

最後に描かれるのは「どんど焼き」のシーン。それまで多くの人々を翻弄して
きた「ロクヨン」が、ついに終わりを迎えたことを示し、ほんのわずかながら
希望の灯をともす心憎いエンディングです。

前後編を通して、エンタメ的な面白さと人間ドラマが融合した、身応え十分の
映画でした。豪華キャストの演技も含めて、日本のメジャー映画の最高峰に近
い作品といえそうです。

≪ぽちの満足度≫
★★★★☆
(91点)
                            (田中ひろあき)

〔鑑賞データ〕
2016年6月11日(土)ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後12時45分の回


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