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64 ロクヨン 前編
（2016年 日本）（上映時間2時間1分）
監督：瀬々敬久
出演：佐藤浩市、綾野剛、榮倉奈々、夏川結衣、窪田正孝、坂口健太郎、筒井
道隆、鶴田真由、赤井英和、菅田俊、烏丸せつこ、小澤征悦、金井勇太、芳根
京子、菅原大吉、椎名桔平、滝藤賢一、奥田瑛二、仲村トオル、吉岡秀隆、瑛
太秋川、永瀬正敏、三浦友和、宇野祥平、菜葉菜、三浦誠己、嶋田久作、小橋
めぐみ
＊TOHOシネマズ日劇ほかにて全国公開
ホームページ http://64-movie.jp/
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＜ストーリー＞
わずか７日間で幕を閉じた昭和64年。少女誘拐殺人事件・通称「ロクヨン」が
発生する。平成14年、事件はいまだ解決せず時効が目前に迫っていた。かつて
刑事部の刑事としてロクヨンの捜査にも関わった三上義信（佐藤浩市）は、現
在は警務部の広報官を務めていた。だが、私生活では高校生の娘が家出失踪中
だった。そんな中、ロクヨンをめぐって警察庁長官の視察が計画される。三上
は長官と被害者の父・雨宮との面会を調整するよう命じられるが思うようにい
かない。一方、ある交通事故での匿名発表に記者クラブが反発し、長官の視察
取材のボイコットを決める。懸命に事態の収拾に奔走する三上だったが……。
＜レビュー＞
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四面楚歌の状況下で葛藤する警察官の人間ドラマ
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2013年「このミステリーがすごい！」第1位を獲得するなど高い評価を得た横山
秀夫の警察小説「64（ロクヨン）」の映画化。前後編２部作の第１部です。
冒頭に描かれるのは少女誘拐殺人事件。犯人によって身代金を奪われ、少女は
殺害されます。天皇崩御によってわずか７日間で終わった昭和64年の出来事で
す。
続いて舞台は、それから14年後の平成14年に移ります。「ロクヨン」と呼ばれ
るようになったかつての事件は未解決で、時効が１年後に迫っています。当時
刑事として捜査に関わった主人公の三上は、今は警務部の広報官。私生活では
娘が行方不明というトラブルを抱えています。
そんな中、警察庁長官がロクヨンの捜査陣の激励のため視察に来ることになり、
三上は被害者の父親との面会を調整するよう命じられます。しかし、父親は断
ります。そしてまたしても問題が。ある引き逃げ事件の匿名報道に記者クラブ
が反発し、長官刺殺の取材をボイコットするというのです。はたして三上はこ
の窮地をどう切り抜けるのか……というお話です。
原作はミステリーとはいえ、人間ドラマにかなりの力点を置いています。この
映画はそれをさらに加速。警察内部の対立、広報ＶＳ記者クラブのバトル、未
解決事件ロクヨンにまつわる奇妙な謎、私生活でのトラブルなどを背景に、主
人公・三上の苦悩と葛藤、刑事として人間としての矜持を力強く、そしてスリ
リングに描きます。特に警察組織と記者クラブの板挟みになり、四面楚歌の状
況に立たされ、もがき苦しむ三上の姿が印象的。
瀬々敬久監督は、殺人事件の被害者遺族を描いた『ヘヴンズ ストーリー』な
ど、登場人物の心理描写に定評がある監督。だから、こういう人間ドラマにな
るのは当然でしょうね。ちなみにその『ヘヴンズ ストーリー』は４時間半越
えの長尺の映画。前後編で４時間のこの作品を描くのにはピッタリでしょう。
おまけに三上を演じるのが佐藤浩市ですからねぇ。何を演じても彼の色に染ま
ってしまう人ですが、今回はその中でも出色。後半で、記者クラブの連中に対
して、ある被害者の人生を静かに語る後半のシーンは圧巻で、胸が熱くなりま
す。
超豪華なキャストが演じる三上以外の人物も、それぞれが抱える苦悩や葛藤が
過不足なく描かれます。
まあ、あえて欠点を言えば、警察上層部や新聞記者たちの人物造詣がややステ
レオタイプなところでしょうか。
とはいえ見応えは十分です。ロクヨンを模した新たな誘拐事件の発生で幕を閉
じるエンディング。後編に大いに期待を抱かせます。
≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
（86点）
（田中ひろあき）
〔鑑賞データ〕
2016年5月7日（土）ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後1時30分の回
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