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ベストセラー 編集者パーキンズに捧ぐ（GENIUS）
（2015年 イギリス・アメリカ）（上映時間1時間44分）
監督：マイケル・グランデージ
出演：コリン・ファース、ジュード・ロウ、ニコール・キッドマン、ローラ・
リニー、ガイ・ピアース、ドミニク・ウェスト、ヴァネッサ・カービー
＊TOHOシネマズ シャンテほかにて公開
ホームページ http://best-seller.jp/
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＜ストーリー＞
1929年、ニューヨーク。名編集者マックス・パーキンズ（コリン・ファース）
のもとに、無名の作家トマス・ウルフ（ジュード・ロウ）が書いた原稿が持ち
込まれる。それを読んだパーキンズはウルフの才能に惚れ込み出版を約束する。
ウルフと激論を重ねながら編集作業を進めるパーキンズ。やがて完成した処女
作『天使よ故郷を見よ』はベストセラーになる。続いて2人は2作目に取り組む
のだが……。
＜レビュー＞
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実在の名編集者と天才作家の絆と葛藤
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1920年代のアメリカで、アーネスト・ヘミングウェイやスコット・Ｆ・フィッ
ツジェラルドを発掘した伝説の名編集者マックス・パーキンズ。そして彼に見
出された天才作家トマス・ウルフ。2人の絆と葛藤を描いた実話をもとにしたド
ラマです。
2人の出会いは、他の出版社で相手にされなかったウルフの原稿が、パーキンズ
のもとに持ち込まれたことがきっかけ。パーキンズはそれを読んで、ウルフの
才能を認めます。とはいえ、それはかなりの長さで出版するには、相当に削除
しなければいけません。なので、2人は編集作業を進めます。そこでは、売れる
本を作ろうとするパーキンズと、できるだけ自分の書いたものを尊重してほし
いウルフの間で、激しいやり取りもあります。
というわけで、この映画、編集者と作家のやり取りが中心に描かれます。コリ
ン・ファース演じる編集者パーキンズは、まさに編集の職人。簡単なことでは
妥協せずに、自分の仕事を全うしようとします。ふるまいも大人のふるまいで、
若いウルフに対して父親のように余裕をもって接します。それに対してジュー
ド・ロウ演じるウルフは、天才を絵に描いたような若者（ちなみにこの映画の
原題はGENIUS＝天才）。すごい才能の持ち主ですが、性格は天衣無縫で自由気
まま。ある意味、子供のまま大人になったような人物です。年齢も、キャリア
も、立場も、性格も違うこの2人がぶつかり合うことで、見応えあるドラマが生
まれています。
2人の共同作業によって出版されたウルフの処女作『天使よ故郷を見よ』はベス
トセラーになります。それに続く2作目の編集作業も前作以上の大変さ。大量の
原稿が次々にパーキンズのところに持ち込まれる様子は、まるでコメディ。ま
あ、ウルフはそのぐらい天才だということです。
そういう厳しい編集作業を通じて、2人は絆を強めていきます。その一方で、ウ
ルフとパトロン兼愛人のアリーン（ニコール・キッドマンがいい味出してま
す）は、パーキンズの出現によって関係が悪化していきます。また、パーキン
ズは仕事に没頭するあまりに、家庭をおろそかにし、妻（ローラ・リニー）と
ギクシャクするようになります。そのあたりのあれこれも、ドラマに厚みを与
えています。
パーキンズが発掘したヘミングウェイやフィッツジェラルドも登場。特にガ
イ・ピアース演じるフィッツジェラルドの哀愁漂う落ちぶれ方が、印象に残り
ました。
実話をもとにしているということで、仰々しい出来事などは起きません。終盤
近くに2人が離れていくところも、決定的なけんか別れというよりは、いろいろ
な要素が積み重なった結果として描かれます。そうなると、ド派手な演出で盛
り上げたくなるものですが、マイケル・グランデージ監督（監督デビュー作だ
けれど、演劇界では有名な人らしい）はひたすら抑制的に、ていねいに描いて
います。
ラストは病に倒れたウルフからの手紙がパーキンズに届くシーン。それまでは
帽子をかぶり続けていたパーキンズが、ついに帽子を脱ぐ心憎い演出で深い余
韻を残して終わります。
地味だけれど、編集者と作家の生きざまが表現された見応えある映画だと思い
ます。
≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
（87点）
（田中ひろあき）
2016年10月14日（金）TOHOシネマズ シャンテにて。午後1時50分の回
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