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ボーダーライン（SICARIO）
（2015年 アメリカ）（上映時間2時間1分）
監督：ドゥニ・ヴィルヌーヴ
出演：エミリー・ブラント、ベニチオ・デル・トロ、ジョシュ・ブローリン、
ヴィクター・ガーバー、ジョン・バーンサル、ダニエル・カルーヤ、ジェフ
リー・ドノヴァン
＊角川シネマ有楽町ほかにて全国公開
オフィシャル・サイト http://border-line.jp/
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＜ストーリー＞
ＦＢＩの誘拐即応班の女性捜査官ケイト・メイサー（エミリー・ブラント）は、
ある日、メキシコの麻薬組織の壊滅を目指す特殊チームにスカウトされる。そ
こには、リーダーの特別捜査官マット・グレイヴァー（ジョシュ・ブローリ
ン）やチームに同行する謎のコロンビア人アレハンドロ（ベニチオ・デル・ト
ロ）がいた。彼らと国境を越えてメキシコに向かったケイトは、違法で乱暴な
捜査の実態を目にするのだが……。
＜レビュー＞
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善と悪の境界があいまいな麻薬戦争を臨場感たっぷりに
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麻薬戦争の最前線を舞台にした映画です。邦題の「ボーダーライン」とは、国
境線と同時に、善悪の境界があいまいな麻薬戦争の実態を指しているのかもし
れません。
主人公はＦＢＩの誘拐即応班の女性捜査官ケイト。冒頭は、彼女たちが誘拐事
件の現場に踏み込むシーン。そこにはおぞましい惨状と恐怖が待ち受けていま
す。
その後、ケイトはメキシコの麻薬組織の壊滅を目指す特殊チームにスカウトさ
れます。しかし、そのチームは何やら怪しい雰囲気。リーダーの特別捜査官マ
ットに加え、謎のコロンビア人アレハンドロも参加しています。
前半のヤマ場は、彼らのチームがメキシコに行って、麻薬組織の幹部を移送す
るシーン。その途中の映像には破格の緊張感が漂います。ケイトが乗った車の
中から見える映像。残虐に殺害され吊るされた死体。花火のように鳴り響く銃
声。初めてそうした場所に放り込まれたケイトのヒリヒリする心情をリアルに
あぶりだします。まるで、自分も現場にいるかのような臨場感です。
そんな中、マットやアレハンドロは、正義や法を無視した乱暴な捜査を展開し
ていきます。確かに敵は残虐で非道ですが、はたしてそこまでやっていいの
か？ 正義感の強いケイトと同時に、観客もそんな気持ちになってきます。そ
れでもマットたちはかまわず突き進んでいきます。
後半のハイライトは麻薬組織のボスを狙う作戦。トンネルと呼ばれる暗い地下
の中での追跡劇が展開します。そこで使われるサーモグラフィや暗視ゴーグル
ごしの映像が出色。ここもリアルで臨場感たっぷりです。身の危険を感じなが
ら、前に進むしかないケイトの心情が手に取るように伝わります。
実はこの作戦の前に、ケイトは買収された地元の警官によって身の危険にさら
されます。そうした中で、最初は決然と非合法な捜査を批判していた彼女自身
にも、迷いが生じてきます。いったい何が正義で何が悪なのか、境界線があい
まいになっていきます。
同時に、ケイトはマットから彼女がスカウトされた真の理由を知らされます。
また、謎のコロンビア人アレハンドロの正体も明らかになります。
まさに混沌とした状況の中、ラスト近くでケイトはある決断を迫られます。そ
の後の銃声が鳴り響くメキシコのシーンも含めて、ひたすら苦くて重い結末で
す。『灼熱の魂』『プリズナーズ』などでも才気を見せたドゥニ・ヴィルヌー
ヴ監督が、単なるアクション・サスペンスを超えた深みを生み出しています。
臨場感という意味では一級品の映画。重低音の鳴り響く音楽も見事です。役者
では、エミリー・ブラント、ジョシュ・ブローリンがなかなかの演技を見せて
いますが、一番すごいのはやっぱりベニチオ・デル・トロでしょう。いろんな
意味で怖すぎる演技です。
≪ぽちの満足度≫
★★★★☆
（90点）
（田中ひろあき）
2016年4月22日（金）角川シネマ有楽町にて。午後4時30分の回
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