|
ブルックリン（BROOKLYN）
（2015年 アイルランド・イギリス・カナダ）（上映時間1時間52分）
監督：ジョン・クローリー
出演：シアーシャ・ローナン、ドーナル・グリーソン、エモリー・コーエン、
ジム・ブロードベント、ジュリー・ウォルターズ、フィオナ・グラスコット、
ジェーン・ブレナン、アイリーン・オイヒギンス、ブリッド・ブレナン、エミ
リー・ベット・リッカーズ、イブ・マックリン
＊TOHOシネマズシャンテほかにて全国公開
ホームページ http://www.foxmovies-jp.com/brooklyn-movie/
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
＜ストーリー＞
アイルランドの小さな町で姉と母と３人で暮らす少女エイリシュ（シアーシ
ャ・ローナン）。意地悪な女店主のいる食料品店で働く彼女は、新天地を求め
て姉の協力で単身アメリカへと渡る。過酷な船旅を経てニューヨークへ降り立
ったエイリシュは、ブルックリンの高級デパートで売り子として働き、同郷の
女性たちと寮生活を送る。最初は新生活になじめなかったものの、ダンスパー
ティで知り合ったイタリア系の青年トニーと付き合うようになり、自信を取り
戻していく。だが、そんな彼女のもとに驚くべき知らせがもたらされる……。
＜レビュー＞
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
２つの土地の狭間で揺れ動く少女の成長を生き生きと
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
アイルランドの少女の成長物語です。1950年代。アイルランドの小さな町で母
と姉と暮らすエイリシュ。ちゃんとした仕事もなく閉塞感を抱えた彼女は、姉
の協力でアメリカに一人で渡ります。ニューヨーク・ブルックリンへとやって
来たエイリシュは高級デパートの売り子になり、寮生活を送るようになります。
最初は内気で無口なエイリシュ。「はたしてこれで都会でやっていけるの
か？」と誰もが思ってしまいます。しかし、時間が経つにつれて徐々に明るさ
を取り戻し、キラキラと輝きだします。それを後押しするのが、おしゃべりな
寮の女の子たち、彼女たちの面倒を見るキーオ夫人、そしてフラッド神父です。
神父のサポートでエイリシュは簿記の勉強も始めます。
そして、さらに大きな転機になるのが、ダンスパーティで知り合ったイタリア
系の青年トニーとの恋。このトニーが絵に描いたような「いいヤツ」なんです。
エイリシュもまた純真な少女ということで、初々しい恋が展開されます。ト
ニーとつきあううちに、エイリシュはすっかり都会生活を満喫するようになり
ます。
というわけで、エイリシュの微妙な心理の移り変わりを、きちんとと捉えてい
るのがこの映画の特徴。ホームシックになったり、キラキラ輝く笑顔を見せた
り、その時々の彼女の心の日向と影の部分を生き生きと見せていきます。エイ
リシュの成長の過程を的確に演じたシアーシャ・ローナンの演技が素晴らし
い！ 1950年代のドラマということで、ノスタルジックで趣のある映像も魅力
的です。
後半で、エイリシュはいったん故郷のアイルランドに帰ります。それはある事
情によるものですが、それまでも彼女の心の底には、常に望郷の思いが流れて
いました。そのため、あれほどブルックリンになじんでいた彼女の心が変化し
ます。しかも、彼女の前にはトニーとは別の男性も現れます。
下世話に描けば、「２人の男の間で揺れ動く女」的なドラマになりがちですが、
そうならないのは「ホームタウン」という大きなテーマがあるから。エイリシ
ュにとって、生まれ育ったアイルランドと、自分を輝かせたアメリカという２
つの場所のどちらがホームタウンなのか。それが人生の大きなポイントになり
ます。
映画の途中で賑やかなアメリカのビーチと、静かなアイルランドのビーチが出
てきます。それぞれに魅力と短所があって、一つに絞れないのが人情。それで
も、エイリシュはアイルランドかアメリカを選択しなければいけなくなります。
はたして彼女の選択は？
冒頭近くとラストを船のシーンにして、最初は年上の女性から入国などのアド
バイスをもらっていたエイリシュが、最後のほうでは若い女の子にアドバイス
する構成が秀逸。彼女の成長を如実に物語ります。地味な映画ですが、まじめ
に、ていねいにつくられていて好感が持てます。主人公の人生を、自分の人生
に投影させる観客も多そうですね。
≪ぽちの満足度≫
★★★★☆
（91点）
（田中ひろあき）
〔鑑賞データ〕
2016年7月1日（金）角川シネマ新宿にて。午前10時45分の回
[「ふ」のページ]
|
|