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キャロル（CAROL）
（2015年 イギリス・フランス・アメリカ）（上映時間1時間58分）
監督：トッド・ヘインズ
出演：ケイト・ブランシェット、ルーニー・マーラ、サラ・ポールソン、ジェ
イク・レイシー、カイル・チャンドラー、ジョン・マガロ、コーリー・マイケ
ル・スミス、ケヴィン・クローリー
＊TOHOシネマズみゆき座ほかにて全国公開
ホームページ http://carol-movie.com/
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＜ストーリー＞
1952年、クリスマス目前のニューヨーク。デパートのおもちゃ売り場で販売員
のアルバイトをするテレーズ（ルーニー・マーラ）。写真家を夢見る彼女だが、
恋人のリチャードからは結婚を迫られ決断できずにいた。そんなある日、娘の
クリスマスプレゼントを探しに売り場へ来たキャロル（ケイト・ブランシェッ
ト）と出会い、その美しさに心を奪われてしまう。まもなく２人は会うように
なり、テレーズはキャロルから車での小旅行に誘われるのだが……。
＜レビュー＞
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禁断の愛に突き進む２人の女性を繊細に描写
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映画化されて有名になった小説『太陽がいっぱい』を書いた女性作家パトリシ
ア・ハイスミスが、1952年に別名で発表した小説『ザ・プライス・オブ・ソル
ト』の映画化です。何で別名かというと、当時はタブーだった同性愛を扱った
小説で、しかもハイスミス自身が同性愛者だったかららしいです。
デパートのおもちゃ売り場でバイトするテレーズという若い女性が、娘へのプ
レゼントを買いに来たキャロルという毛皮のコートを着たミセスと出会い、心
を奪われます。キャロルが忘れていった手袋を返送したことがきっかけで、2人
は接近し、やがて一緒に小旅行に出かけます……。
というわけで、同性愛という要素はあるものの、そこを除けば単純なロマンス
話ともいえないこともありません。しかも、離婚問題を抱えた有閑マダムが、
純朴な若い女の子を籠絡したやれやれな話という感じさえします。
しかし、そこはさすがに『エデンより彼方に』のトッド・ヘインズ監督。色々
な仕掛けを用意しています。まず、キャロルは夫との離婚問題を抱え、娘の親
権をめぐってバトルが勃発します。その要因として彼女の道徳的退廃（つまり
同性愛のことね）が指摘されているため、テレーズとの関係は同性愛に加え、
二重の禁じられた恋になるわけです。おまけに２人が出かけた小旅行では、そ
れに関係した落とし穴まで待ち受ける波乱の展開。
一方、テレーズは男性の恋人がいて結婚を迫られているものの、優柔不断な性
格もあって身動きが取れません。おまけに、彼女は写真が趣味で写真家志望な
のに、それについても何の行動も起こせずに不満がたまっています。そんな彼
女がキャロルと会うことで変化していく成長物語も、この映画の見どころです。
そして、何よりも素晴らしいのがヘインズ監督の繊細な演出。例えば、キャロ
ルがテレーズの方にそっと手を置くそれだけで、２人の微妙な心理が透けて見
えます。セリフのニュアンス、ほんのわずかな視線の動きなどで、２人の揺れ
動く心情が雄弁に語られてしまうのです。
時代がかった雰囲気をうまく出すのも、この監督の持ち味。セットや衣装、音
楽なども巧みに使って、昔の雰囲気を出していきます。
ラストは「やっぱり、そうくるのか」というようなベタな展開ですが、これま
た抑制された的確な演出で余韻を残してしまうから見事なもの。
キャロル役のケイト・ブランシェットの貫禄の演技はさすがですが、個人的に
はテレーゼ役のルーニー・マーラの繊細さのほうに軍配。
まあ、なんにしても見どころの多い映画なのは間違いありません。
≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
（89点）
（田中ひろあき）
〔鑑賞データ〕
2016年2月16日（火）TOHOシネマズ新宿にて。午後1時50分の回
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