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イレブン・ミニッツ（11
MINUT）
（2015年 ポーランド・アイルランド）（上映時間1時間21分）
監督・脚本：イエジー・スコリモフスキ
出演：リチャード・ドーマー、パウリナ・ハプコ、ヴォイチェフ・メツファル
ドフスキ、アンジェイ・ヒラ、ダヴィッド・オグロドニック、アガタ・ブゼク、
ピョートル・グロヴァツキ、ヤン・ノヴィツキ、アンナ・マリア・ブチェク、
ウカシュ・シコラ、イフィ・ウデ、マテウシュ・コシチュキェヴィチ、グラジ
ナ・ブウェツカ＝コルスカ、ヤヌシュ・ハビョル
＊ヒューマントラストシネマ有楽町、ヒューマントラストシネマ渋谷ほかにて
公開。全国順次公開
ホームページ http://mermaidfilms.co.jp/11minutes/
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＜ストーリー＞
大都会の午後5時。一人の男が家を飛び出し妻のもとへと向かう。彼の妻は女優
で好色な映画監督との面接のためホテルに向かっていた。一方、刑務所を出た
ばかりのホットドッグ屋、質屋に強盗に入った少年、バイク便の男、救急現場
に向かう救命士、犬を連れた女など様々な人々がうごめく……。
＜レビュー＞
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鮮烈な映像と不気味な音がもたらす緊迫感と衝撃のラスト
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タイトル通りに11分間の出来事を映した映画です。女好きの映画監督、彼のい
るホテルに面接に行く女優、心配で後を追う嫉妬深い夫、刑務所を出たばかり
のホットドッグ屋、ドラッグをやりながら人妻とセックスするバイク便の男、
質屋に強盗に入る少年、救急現場に向かう救命士、犬を連れた女……。そんな
様々な人々に11分間に起きた出来事を、時間をバラバラにしてモザイク状に映
していきます。
ドラマらしいドラマなどまったくありません。詳しい人物の背景もわかりませ
ん。ホットドッグ屋は刑務所を出たばかりのようですが、若い女に罵倒されま
す。それがいったい何を意味するのか説明はなし。犬を連れた女は男と別れた
ばかりのようですが、それに関する説明もなし。救命士が向かった現場には産
気づいた女がいますが、入り口は家具でふさがれています。なんで、そうなっ
てんの？
とにかく細かなことは謎だらけ。よくわからないことばかり。それでも目が離
せないのは映像の見事さゆえ。携帯の動画や監視カメラなど身近な装置によっ
て映し出された映像を使った冒頭から、斬新な映像の連続です。犬の目線で飼
い主を追うなど意表をついたアングルの映像も満載。「よ！ 映像の魔術師」
とでも声を掛けたくなるような妖しくて、スリリングな場面が続きます。おか
げで、「なんじゃこりゃ？」と思いつつ、スクリーンにずっと釘付けになって
しまいました。
そんなふうに技巧を凝らした映像ではあるものの、ドキュメンタリー映画を観
ているような感覚に陥りました。おそらくそれは、映し出されているものがす
べて現代社会の欲望の縮図だからでしょう。そして、それに翻弄される人々の
感情の揺れ動きが何ともリアル。
観ているうちに心がざわついて、ハラハラドキドキしてきます。まるで塀の上
でバランスをとっているみたいな不安定な感覚。でもって、音楽や効果音も不
気味でますます心をざわつかせます。そんなこんなで、「きっとよからぬこと
が起きるだろう」と想像はできたのですが、ラストの衝撃的な出来事にはただ
ビックリ。
そこに至って、それまでのエピソードが一つにつながるものの、それは起承転
結や因果応報のドラマがもたらす結末ではありません。必然とはほど遠い、ま
ったくの偶然。運命のいたずらに、あっけにとられるばかり。この結末を通し
て何が言いたかったのか。解釈は様々でしょうが、人生の不条理さ、不確かさ
を確実に表現しているのは間違いありません。
考えてみたら、人生なんて思わぬことばかり。映画やテレビドラマみたいな展
開なんてめったにないし、ワケのわからない出来事が多いもの。とくれば、こ
の映画の結末はまさに不可思議な人生そのものを表現しているのかもしれませ
ん。相当に変わった映画なので観るには覚悟が要りますが、個人的には単純に
面白かったです。難しいことを抜きにしてもね。
イエジー・スコリモフスキ監督は、『アンナと過ごした４日間』『エッセンシ
ャル・キリング』などで知られ、カンヌ、ベルリン、ベネチアの世界3大映画祭
で受賞歴のあるポーランドの鬼才だそうです。すいません。知りませんでした。
そして年齢はなんと今年で78歳。それでこんなにぶっ飛んだ、アバンギャルド
な映画を撮るなんて……。アンビリーバブル！！
≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
（88点）
（田中ひろあき）
〔鑑賞データ〕
2016年8月23日（火）ヒューマントラストシネマ有楽町にて。午後12時5分の回
[「い」のページ]
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