|
エヴェレスト 神々の山嶺
（2016年 日本）（上映時間2時間2分）
監督：平山秀幸
出演：岡田准一、阿部寛、尾野真千子、ピエール瀧、甲本雅裕、風間俊介、テ
インレィ・ロンドゥップ、山中崇、佐々木蔵之介
＊TOHOシネマズスカラ座ほかにて公開
ホームページ http://everest-movie.jp/
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
＜ストーリー＞
1993年、山岳写真家の深町（岡田准一）はエヴェレスト登頂に失敗し、写真集
の出版計画が挫折する。そんな中、彼はネパールの首都カトマンドゥで行方不
明になっていた天才登山家の羽生丈二（阿部寛）を目撃する。帰国した深町は
羽生の過去を調べ始め、羽生との登山中に命を落とした男の妹・岸涼子（尾野
真千子）と出会う。やがて涼子とネパールを訪れ、羽生が冬季南西壁の単独無
酸素登頂を計画していることを知るのだが……。
＜レビュー＞
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
過酷なエヴェレストの大自然が迫る山岳映画
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
夢枕獏の小説の映画化です。VFXの進化によって、こういう山岳小説もずいぶん
リアルに描けるようになりましたね。
エヴェレスト登山の写真集を出そうとして挫折した山岳写真家の深町は、ネ
パールの首都カトマンドゥで行方不明だった登山家の羽生を目撃します。帰国
後、彼は羽生の過去を調べ始めます。
というわけで、前半は深町による調査を通して羽生の人となりを明かすととも
に、彼の元恋人涼子とともに深町がネパールで羽生を追う姿が描かれます。羽
生はとんでもない天才登山家。しかし、人間的には最低な奴だと、かつての仲
間が語ります。羽生は登山中にザイルを切って仲間を殺したという噂まであり
ます。
やがてネパールで羽生と出会った２人は、羽生がエヴェレストの冬季南西壁の
単独無酸素登頂という無謀な計画を進めていることを知ります。
というわけで、後半は羽生のエヴェレスト登山が描かれます。それを深町がカ
メラに収めようとします。この登山ときたら、とにかくスゴすぎます。切り立
った絶壁。壮絶な悪天候。VFXで盛っているにしてもロケの過酷さがわかります。
こんなところで演技をした岡田准一と阿部寛は、それだけで尊敬しちゃいます。
まるで自分も登山しているかのようなハラハラ感と息苦しさ。さあ、はたして
羽生は登頂に成功するのか？
と思ったら、その結末はうやむや。よく考えりゃ、主人公は深町で羽生じゃな
いですからね。なので、次は羽生が登頂に挑みます。これまたスゴすぎる登頂
でスリル満点です。
ただし、ハリウッド映画のようなスリルとは違います。けっしてスカッとはし
ません。むしろ重たい感じ。「そこにあるから山に登る」のではなく、「俺が
いるから山に登る」という羽生の言葉をキーワードに、「山に登るとは？」
「生きるとは？」といった哲学的ともいえる問いを根底に置いているからです。
エヴェレスト登頂の歴史なども、効果的に使われます。このあたり、さすがに
『愛を乞うひと』の平山秀幸監督らしい映画です。
そこでは、山の上での死者と生者との対話まで登場。まあ、そんなに深い掘り
下げ方をしているわけではありませんが、それでも重厚感が漂います。
欲を言えば、かなりの野心家として登場する深町が羽生と出会ってどう変化し
たのかを、もう少しわかりやすく描いてほしかったですね。なんだかその辺は
モヤモヤしたままでした。深町の人間ドラマとしては薄味感が否めません。
とはいえ、圧倒的な大自然の映像など見応えは十分。観るなら絶対に映画館で
見るべき映画だと思いました。
≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆
（80点）
（田中ひろあき）
〔鑑賞データ〕
2016年3月21日（月）ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後12時15分の回
[「え」のページ]
|
|