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アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場（EYE IN THE SKY）
（2015年 イギリス）（上映時間1時間42分）
監督：ギャヴィン・フッド
出演：ヘレン・ミレン、アーロン・ポール、アラン・リックマン、バーカッ
ド・アブディ、ジェレミー・ノーサム、フィービー・フォックス、イアン・グ
レン、バボー・シーセイ、ギャヴィン・フッド、リチャード・マッケーブ、モ
ニカ・ドラン、ダニエル・フォックス、マイケル・オキーフ、ライラ・ロビン
ズ
＊TOHOシネマズシャンテほかにて公開
ホームページ http://eyesky.jp/
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＜ストーリー＞
イギリス・ロンドン。英国軍のキャサリン・パウエル大佐（ヘレン・ミレン）
は、国防相のフランク・ベンソン中将（アラン・リックマン）と協力して、英
米合同テロリスト捕獲作戦を指揮していた。米国軍の最新鋭ドローン偵察機が
ケニアのナイロビで凶悪なテロリストたちのアジトを突き止める。彼らが自爆
テロを決行しようとしていることが発覚し、パウエル大佐はドローンのミサイ
ル攻撃によるテロリスト殺害を決断する。ところが、アジトの真横でパンを売
る少女の姿が発見されて……。
＜レビュー＞
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ドローンを使った現代の戦争の本質を鋭くえぐった秀作
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最近の戦争ではドローンが使われます。上空数千メートルからドローンでテロ
リストの行動を監視して、ミサイルを撃ち込んで彼らを殺害します。自分たち
は犠牲を出さずに、完璧に敵をやっつけられるなんて素晴らしい！と思うかも
しれませんが、はたしてそうでしょうか。そこには様々な問題があることを、
この映画が示しています。
描かれるのは英米合同テロリスト捕獲作戦。英国軍のキャサリン・パウエル大
佐は国防相のフランク・ベンソン中将と協力して、作戦の指揮に当たっていま
す。上空6000メートルを飛ぶドローンの映像が、ケニアのナイロビの隠れ家に
潜んでいるアル・シャバブの凶悪なテロリストたちを突き止めます。その映像
が、イギリス、アメリカ、ケニアの司令官たちがいる会議室のスクリーンに映
しだされます。
当初の作戦はケニア軍がそこに突入して、テロリストたちを生け捕りにするこ
と。ところが、彼らが自爆テロを決行しようとしていることが発覚し、パウエ
ル大佐はドローンのミサイル攻撃によるテロリスト殺害へと作戦を変更します。
しかし、これが簡単にはいきません。イギリスはもちろん、アメリカの政府機
関も巻き込んで、パウエル大佐の攻撃命令を許可するかどうか大騒ぎになりま
す。何しろ、テロリストたちの中にはアメリカ国籍の男やイギリス出身の女性
が含まれているのです。
というわけで、こうしたギリギリの作戦が、ドローンからの映像を使ってスリ
リングに描き出されます。ドローンといっても飛行機だけではありません。鳥
の形をしたり、虫の形をしたドローンまであるのです。それが家の中にまで入
って様々な映像を送り出します。それを見ながら作戦を遂行する英米軍の人々。
まるでゲームのようですが、ゲームと違って人命がかかっているだけに、安易
な決断はできません。
ようやく了解を取り付けたパウエル大佐は、ドローンを操作する米国ネバダ州
の新人ドローン・パイロット、スティーブ・ワッツにミサイルの発射準備を命
じます。ところが、そこでなんと、アジトの真横でパンを売る少女の姿が発見
されます。ミサイルを撃ち込めば、彼女もかなりの確率で死んでしまいます。
それをめぐって、再び事態は混乱します。
パウエル大佐は、それでもミサイルを発射すべきだと言います。たとえ少女が
死んでも、自爆テロによって大勢が死ぬよりはましだというわけです。しかし、
それに反対する人もいます。英米の政府機関や外遊中の政治家までをも巻き込
んで、「ああでもないこうでもない」と議論が迷走します。あまりの難題に責
任を回避しようとする政治家も現れます。
終盤に近付くにつれて、ハラハラドキドキ度はどんどん高まっていきます。自
爆テロの準備を着々と進めるテロリストたち。相変わらずパンを売る少女。そ
こにケニア軍の諜報員も絡んで、焼けつくような緊張感が続きます。
パウエル大佐は、自分の主張を通すためにある工作まで行います。考えように
よっては、とんでもない非人間的な人物にも見えますが、彼女の主張が100％間
違っているとも言い切れません。確かに、自爆テロが起きれば大勢の人が亡く
なる可能性があります。だからといって、ミサイルを発射した結果、少女が死
んでもいいのか？ 映画の中の司令官や政治家たちに突き付けられた問いが、
スクリーンを通して観客にも突きつけられます。
ラストは修羅場の中で人間の善意をチラリと見せて、一筋の光を感じさせるも
のの、最後の最後に過酷な現実を示します。観終わって苦く重たいものが残り
ました。
ヘレン・ミレン演じるパウエル大佐の冷酷さも戦争の一面なら、彼の指示でミ
サイル発射のボタンを押す若きパイロットの苦悩も戦争の一面。そして何より
も、「あなたたちは安全な場所で攻撃した」とベンソン中将に向かって投げつ
けられた言葉が、現代の戦争の本質を表しています。
現代の戦争をリアルに、そしてスリリングに切り取って、そこに潜む問題を痛
烈に提示した秀作です。
≪ぽちの満足度≫
★★★★☆
（92点）
（田中ひろあき）
〔鑑賞データ〕
2016年12月23日（金）TOHOシネマズシャンテにて。午後12時50分の回
[「あ」のページ]
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