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ふきげんな過去
（2015年 日本）（上映時間2時間）
監督・脚本：前田司郎
出演：小泉今日子、二階堂ふみ、高良健吾、山田望叶、兵藤公美、山田裕貴、
児玉貴志、アハマッド・アリ、大竹まこと、きたろう、斉木しげる、黒川芽以、
梅沢昌代、板尾創路
＊テアトル新宿ほかにて公開
ホームページ http://fukigen.jp/
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＜ストーリー＞
北品川の食堂"蓮月庵"で暮らす女子高生・果子（二階堂ふみ）は、死ぬほど退
屈な毎日を過ごしていた。そんなある日、18年前に死んだはずの伯母・未来子
（小泉今日子）が突然帰ってくる。未来子は果子が赤ん坊の頃に爆弾事件を起
こした前科持ちで、今は戸籍もない。自分の部屋に図々しく居候する未来子に、
いら立ちを募らせる果子だったが……。
＜レビュー＞
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女子高生と死んだはずの伯母。オフビートな笑いに満ちた奇妙なドラマ
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ヘンな映画はたくさんありますが、この映画もかなりヘンです。
冒頭、二階堂ふみ演じる果子の不機嫌そうな顔がアップになります。これがま
た強烈な顔なのです。その表情に象徴されるように女子高生の彼女は、いつも
不機嫌。人生を諦観して、退屈な毎日を過ごしています。そんな中、突然18年
前に死んだはずの伯母の未来子が帰ってきて、果子と彼女の家族は大混乱にな
ります。
というわけで、死んだはずの女性・未来子の帰還に揺れ動く家族の姿を、主人
公の果子と未来子との交流（というよりもバトル）を中心に描いたドラマです。
それがなぜヘンなのか？
まず舞台となる果子の家からしてヘンです。北品川の"蓮月庵"という食堂です
が、もともとはソバ屋。しかし、豆料理が得意だというヘンな外国人が現れた
ことから豆料理の店に変身。今は祖母や母などとともに連日、豆の皮をむいて
いる果子。店はいかにも昭和テイストで、いつも扇風機が回っています。
未来子の過去もヘンです。彼女はかつてヤクザの事務所に爆弾を仕掛けて捕ま
り、その後死んだことになっていました。しかも、今まで何をしていたのか不
明。謎の組織に監禁されていたという疑惑まで浮上します。果子の父親とも深
い関係にあったみたい。
それ以外にも、冒頭近くで飛び出す赤ん坊がワニに食われたという話、未来子
の消息にも関わる謎の誘拐事件と被害者の青年など、奇妙奇天烈な逸話のオン
パレードです。
なので、「何じゃこれは？」という感じですが、観ている分にはそれなりに楽
しい映画です。ディテールに食いつきながら、どうでもいいことを言い合う登
場人物の会話が、オフビートな笑いをたくさん生み出していきます。
監督・脚本は、演劇界で有名な前田司郎。映画監督デビューを飾った前作『ジ、
エクストリーム、スキヤキ』でも、オフビートなゆる〜い会話劇を炸裂させて
いましたが、今回もそれが健在です。おかげでクスクス笑いながら最後まで観
てしまいます。そういえば、こういう会話劇って下北の小劇場あたりでやって
いそうですよねぇ〜。
そんな会話の中に、ごくたまにマジなセリフがあったりするのも面白いところ。
未来子が果子に対して言う「人間は結局孤独だ」「見えるものばかり見ても仕
方ない」的なセリフには、思わず「うーむ」とうならされてしまいます。
未来子に連れられて、果子といとこの小学生カナが、昔の村の跡に硝石を探し
に行く……なんて展開もユニーク（しかも、トイレの跡）。でもってもその硝
石で爆弾を作ったらアララララ……。
ラストの展開も脱力系。普通ああいうことが起きたら、ファンタジー的なぶっ
飛んだ展開になるはずなのに、なぜか突然お茶の間劇に。そして例のワニがつ
いに……。
とにかく人を食いまくったドラマです。未来子と果子（過去）というネーミン
グでもわかるように、未来と過去をテーマに果子の成長を描いていますが、そ
ういうことに関係なく楽しめるドラマです。ハマる人はハマるんじゃないでし
ょうか。
まあ何にしても、この映画の最大の見どころは小泉今日子と二階堂ふみの共演
ですね。どちらもそれぞれの個性を発揮した素晴らしい演技。そうめったに見
られない2人の共演だけでも観る価値のある映画だと思いますヨ。
≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
（85点）
（田中ひろあき）
〔鑑賞データ〕
2016年6月29日（水）テアトル新宿にて。午前11時の回
[「ふ」のページ]
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