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疑惑のチャンピオン（THE
PROGRAM）
（2015年 イギリス・フランス）（上映時間1時間43分）
監督：スティーヴン・フリアーズ
出演：ベン・フォスター、クリス・オダウド、ギョーム・カネ、ジェシー・プ
レモンス、リー・ペイス、ドゥニ・メノーシェ、ダスティン・ホフマン、エド
ワード・ホッグ、エレイン・キャシディ、ローラ・ドネリー、ピーター・ワイ
ト
＊丸の内ピカデリーほかにて全国公開
ホームページ http://movie-champion.com/
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＜ストーリー＞
自転車選手のランス・アームストロング（ベン・フォスター）は、25歳で発症
したガンを克服後、自転車レースの最高峰「ツール・ド・フランス」で7年連続
総合優勝の偉業を達成する。同時に、ガン患者を支援する慈善活動に尽力する
アームストロングは、世界的なスーパーヒーローになる。そんな中、あるジ
ャーナリストの追及により、彼にはドーピング疑惑が持ち上がるのだが……。
＜レビュー＞
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ドーピング疑惑に包まれたスーパーヒーローの光と影
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自転車競技に疎い私でも、ツール・ド・フランスが世界最高峰のレースで、そ
こで7連覇したアームストロングという選手がいたことは知っています。そして、
その選手がドーピングで永久追放になったことも……。
そんなアームストロングの半生を追ったドラマです。10年以上にわたる長いス
パンのドラマですが（てことは、その間アームストロングはドーピングの尻尾
をつかませなかったわけです）、『クイーン』『あなたを抱きしめるまで』の
スティーヴン・フリアーズ監督がポイントを押さえて、興味深く描いています。
何が一番興味深いかといえば、ドーピングの手口です。単にレース前に注射す
るとか、そういう次元ではないのです。医師やチームの監督、そして同僚も巻
き込んで、システム的に行われるドーピング。まるでトレーニングの一環のよ
うです。ドーピングだけでなく、その隠ぺい工作もスゴイ。汚れた血を薄める
ために、保存しておいた自分の血液を大慌てで輸血するシーンなどを見ている
と、なんだか背筋がゾクゾクしてきます。
最近もオリンピック選手のドーピング問題などが出てきていますが、その根深
さを思い知らされます。
当然ながら、主人公のアームストロングの人生も描きます。彼は駆け出しの25
歳の時にガンになり、復活してからは「何が何でも勝つ！」という執念にとら
われます。それがドーピングの原点になっているようです。とはいえ、事実を
徹底的に隠ぺいし、追及するジャーナリスト（この人が、この映画の原作者）
をあらゆる手段でぶっ潰そうとします。その一方で、ガン患者のチャリティー
に熱心で、彼らのヒーローとして振る舞います。
いったい、こいつの心の中はどうなっているんだ？ そんな思いが作り手にあ
ったに違いありません。彼の内面は複雑で簡単には理解できません。その光と
影の部分をそのままさらけ出し、観客それぞれに解釈を委ねています。
それでも、結局、彼は後々に事実を認めて永久追放になるわけだし、悪役的な
側面は避けようもないわけで、観客は確実に嫌悪感を募らせるはず。それを受
けたラストでカタルシスを体験させるあたりも、ソツのない脚本と演出だと思
います。自転車レースのシーンも本格的に作られているし見応え十分です。
主演のベン・フォスターのあまり感情を表に出さない表情が、この役柄にはピ
ッタリでした。クリス・オダウド、ギョーム・カネなどの脇役も存在感アリ。
なんとダスティン・ホフマンもチラッとですが登場しています。
まさに事実は小説よりも奇なり。その奇想天外さとリアリティで、最後まで目
が離せませんでした。ドーピングがはびこるスポーツ界だけに、なおさら観て
おく価値のある映画だと思います。
≪ぽちの満足度≫
★★★★☆
（90点）
（田中ひろあき）
〔鑑賞データ〕
2016年7月3日（日）シネ・リーブル池袋にて。午後2時40分の回
[「き」のページ]
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