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後妻業の女
（2016年 日本）（上映時間2時間8分）
監督・脚本：鶴橋康夫
出演：大竹しのぶ、豊川悦司、尾野真千子、長谷川京子、水川あさみ、風間俊
介、余貴美子、ミムラ、松尾諭、笑福亭鶴光、樋井明日香、梶原善、六平直政、
森本レオ、伊武雅刀、泉谷しげる、柄本明、笑福亭鶴瓶、津川雅彦、永瀬正敏
＊TOHOシネマズ日劇ほかにて全国公開
ホームページ http://www.gosaigyo.com/
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＜ストーリー＞
結婚相談所主催の婚活パーティで知り合い、中瀬耕造（津川雅彦）と結婚した
武内小夜子（大竹しのぶ）。２年後に耕造は脳梗塞で入院し、やがて他界する。
その葬儀の席で耕造の２人の娘、朋美（尾野真千子）と尚子（長谷川京子）は、
全財産を小夜子に遺すと記された遺言公正証書を突きつけられる。納得できな
い朋美が同級生の弁護士に調べてもらうと、小夜子は裕福な老人の後妻に入っ
て全財産を巻き上げる「後妻業の女」と判明。彼女の背後には結婚相談所の所
長、柏木亨（豊川悦司）の存在があった。朋美は裏社会の探偵・本多（永瀬正
敏）とともに２人を追及していくのだが……。
＜レビュー＞
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老人をたぶらかすコワ〜イ男女をユーモラスに
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直木賞作家・黒川博行の小説『後妻業』の映画化です。「後妻業」とは何かと
いえば、高齢の男性をたぶらかして後妻になり、死んだら遺産を独り占めする
仕事。しかも、この映画の主人公の小夜子は、裏で糸を引く結婚相談所の所長、
柏木とともに、夫を殺害するのもためらいません。
というわけで、ネタ的にはコワ〜イ男女による犯罪ドラマ。壮絶で背筋ゾクゾ
クもののドラマが展開しそうです。ところが、なんとそれを笑い満載のコメデ
ィ映画に仕上げているのです。
何人もの男を手玉に取ってきた小夜子ですが、この映画で中心的に描かれるの
は元大学教授の中瀬耕造との一件。結婚から２年後に耕造は脳梗塞で入院し、
やがて他界。彼の２人の娘、朋美と尚子に対して、小夜子は全財産を小夜子に
遺すと記された遺言公正証書を突きつけます。納得できない朋美が弁護士に調
べてもらうと、小夜子は「後妻業の女」と判明します。
婚活パーティのシーン、耕造の死をめぐるシーンなど冒頭から笑いの波状攻撃
が続きます。なにせ小夜子と柏木のキャラが強烈です。どちらも欲望をギラつ
かせて、本音をズバリと言いまくります。そして欲望の実現のためには手段を
選びません。善悪の境界線なんてとっくに飛び越えてます。その一方で、小夜
子はどこか抜けているし、後半では意外にも自分が騙されそうになります。柏
木もやり手のはずなのに、女にだらしなく、それでトラブルになったりします。
そんなアクの強い人物を大竹しのぶと豊川悦司が見事に演じます。２人が操る
大阪弁も効果的。メチャクチャなことを言っても、どこか人間臭くて味がある
んですよね。２人の競演を観ているだけで、無条件に楽しくなってしまいます。
凄惨なシーンもあるのですが、あくまでも軽〜く、むしろ明るいぐらいに描い
てしまうので、嫌な感じは全くしません。
ドラマ的な転機は、朋美が裏社会の探偵・本多とともに２人を追及していくと
ころ。それによって、いよいよ小夜子と柏木の悪事が露見しかかります。ただ
し、そこも勧善懲悪劇のような展開にはしません。実は本多もかなりのクセモ
ノ。彼にも欲望があって、それがもとで思わぬ方向に転がっていきます。
後半のハイライトのひとつは、小夜子と朋美のすさまじい取っ組み合いでしょ
うか。女の意地と欲望がぶつかり合い、異様な熱気を生み出しています。まる
でホントにケンカしているみたいです。
さらに、ラスト近くのドタバタ劇も見応えタップリ。そのほか下ネタもたくさ
ん飛び出すし、本筋と関係ないところでカワイイおねぇちゃんの裸を出したり
と、サービス精神も十分。大人向けのエンターティメント映画として、なかな
かよくできています。
とはいえ、ただ楽しいだけではなく、考えさせられるところもあります。この
ドラマの背景には、高齢者の婚活ブームという現実の社会現象があります。そ
して登場人物の多くが金に踊らされています。欲望に取りつかれて、右往左往
しています。そんな、しょーもない人間たちを観ているうちに、何やら物悲し
い気持ちにもなってきたのでした。
≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
（88点）
2016年8月28日（日）ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後1時25分
（田中ひろあき）
〔鑑賞データ〕
2016年6月4日（土）TOHOシネマズ新宿にて。午後1時40分の回
[「こ」のページ]
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