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グランドフィナーレ（YOUTH）
（2015年 イタリア・フランス・スイス・イギリス）（上映時間2時間4分）
監督・脚本：パオロ・ソレンティーノ
出演：マイケル・ケイン、ハーヴェイ・カイテル、レイチェル・ワイズ、ポー
ル・ダノ、ジェーン・フォンダ、マーク・コズレック、ロバート・ジータラー、
アレックス・マックイーン、ルナ・ミヨヴィッチ、トム・リピンスキー、ヴィ
クトリア・ムローヴァ、スミ・ジョー
＊Bunkamuraル・シネマほかにて全国公開
ホームページ http://gaga.ne.jp/grandfinale/
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＜ストーリー＞
世界中のセレブが集まるスイスの高級ホテル。80歳を過ぎた著名な音楽家フレ
ッド（マイケル・ケイン）は、引退して優雅なバカンスを満喫していた。一方、
同じホテルに宿泊する長年の親友で映画監督のミック（ハーヴェイ・カイテ
ル）は、現役にこだわり、若いスタッフたちと新作の準備に精を出していた。
そんな中、フレッドのもとには英国の女王陛下の特使が訪れ、演奏会で名曲
「シンプル・ソング」の指揮をするよう依頼する。フレッドはそのオファーを
頑なに断るのだが……。
＜レビュー＞
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ユーモアと斬新な映像で描く栄光をつかんだ人々のその後
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簡単に言うと、人生の終焉に向かってどう歩んでいくかという映画。老作曲家
をはじめ、かつて栄光を極めた人々のその後の人生が描かれます。というと、
深刻なドラマのように思えますが、そうではありません。ユーモアに満ちたユ
ニークな映画。ありきたりのドラマでは味わえない映画的な面白さがたっぷり
です。
舞台はスイスの高級ホテル。そこで娘とともにバカンスを過ごす老作曲家フレ
ッド。引退した彼のもとに、英国女王の特使が来て「シンプル・ソング」とい
う名曲を指揮するように依頼します。しかし、フレッドは頑強に拒否します。
一方、ホテルには彼の友人の映画監督ミックも滞在していますが、こちらはま
だ意欲満々。新作の脚本をスタッフとともに練っています。巨匠と呼ばれたフ
レッドとミックの現状は、対照的なものです。ついでに言えば、フレッドの娘
はミックの息子と結婚していますが、「好きな女ができた」と捨てられて号泣
します。
描かれるのは彼らだけではありません。ロボット映画で名声を築いたハリウッ
ド・スター、マラドーナそっくりの元サッカー界のカリスマなども登場。後半
では、ミス・ユニバースの女性まで現れます（彼女の入浴姿を見てフレッドと
ミックが「神だ！」というのが笑えます）。
こういう栄光をつかんだ人々のその後の人生が描かれるわけですが、それ以外
にも、まったく口をきかない夫婦や、奇妙なホテルのマッサージ師など不思議
な人物が続々。そのあたりにもユーモアが満ちあふれています。
同時に自由奔放なシーンも満載。放牧された牛がフレッドの指揮で、カウベル
と鳴き声で見事な音楽を奏でたりする夢や妄想のシーンがあちこちに。終盤近
くでは、ミックの映画に出演してきた数々のヒロインが総登場で出現します。
フレッドの娘が父親に対して不満をぶつけるシーンでは、なぜか２人は全身泥
パック。そんなふうに、ごく普通のシーンまでどこかヘンなのです。パオロ・
ソレンティーノ監督が紡ぎだす、そんなユニークなシーンを観ているだけで楽
しくなる映画です。
やがて、フレッドとミックに転機が訪れます。ミックは出演を予定していた大
女優（ジェーン・フォンダが怪演）に断られ、新作の雲行きが怪しくなります。
一方、フレッドのもとには再度英国女王の使者が訪れて、彼はオファーを断っ
た真の理由と向き合うことになります。さてさて、フレッドはオファーを断り
続けるのか？ 彼の名曲「シンプル・ソング」は披露されるのか？
詳細は伏せますが、ラストは心が解放される瞬間。この映画には見事な音楽劇
というもう一つの側面があることが印象付けられます。
観終わって、年の取り方についていろいろと考えさせられました。達観したり、
おとなしく過ごすのもいいですが、最後までジタバタするのもアリなんじゃな
い？ 人生は人それぞれというメッセージがさりげなく伝わってきて、ポジテ
ィブな気持ちで映画館を後にしました。
マイケル・ケイン、ハーヴェイ・カイテルという２人の名優の競演も、もちろ
ん見逃せない映画です。
≪ぽちの満足度≫
★★★★☆
（90点）
（田中ひろあき）
〔鑑賞データ〕
2016年4月19日（火）シネ・リーブル池袋にて。午前10時の回
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