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裸足の季節（MUSTANG）
（2015年 フランス・トルコ・ドイツ）（上映時間１時間37分）
監督：デニズ・ガムゼ・エルギュヴェン
出演：ギュネシ・シェンソイ、ドア・ドゥウシル、トゥーバ・スングルオウル、
エリット・イシジャン、イライダ・アクドアン、ニハール・Ｇ・コルダシュ、
アイベルク・ペキジャン
＊シネスイッチ銀座、YEBISU GARDEN CINEMAほかにて公開
ホームページ http://www.bitters.co.jp/hadashi/
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＜ストーリー＞
トルコの小さな村。10年前に事故で両親を亡くし、祖母の家で叔父たちと暮ら
す5人姉妹。ある日、学校帰りに男子生徒と海で遊んだことが祖母に知られ、ふ
しだらだと激しく叱責される。それをきっかけに、外出を禁じられ、家の中に
閉じ込められる姉妹。さらに、家族が決めた結婚相手に一人ずつ嫁がされてい
く。そんな姉たちの姿を見た13歳の末っ子、ラーレ（ギュネシ・シェンソイ）
はある計画を思いつくのだが……。
＜レビュー＞
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古い因習に翻弄されながら生きる姉妹の青春を瑞々しく
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あちこちの映画祭で評判になり、第88回アカデミー賞外国語映画賞にもノミ
ネートされた映画。監督はトルコ出身の女性監督デニズ・ガムゼ・エルギュヴ
ェン。これが長編デビュー作です。
舞台はトルコの田舎の村。冒頭は、学校の先生が転任していくシーン。彼女は
ラーレという生徒に、自分の新しい住所をメモしたかどうか確かめます。実は、
これがラストの伏線になっているんですねぇ〜。
続いて登場するのは、末っ子ラーレをはじめ5人の姉妹が、男子生徒と海で楽し
く遊ぶシーン。キラキラした青春全開のシーンです。ところが、この光景が姉
妹の面倒を見る保守的な祖母や叔父の怒りを買い、彼女たちは学校にも通わせ
てもらえなくなり、半ば軟禁状態に置かれます。そして、花嫁教育をされて、
一人ずつ見知らぬ男のもとに嫁がされていくのでした。
この映画には、いくつもの魅力があります。まずはガールズムービーとしての
魅力。5人姉妹が無邪気に戯れるシーンや、内緒で観戦に出かけたサッカー試合
のシーンなど、彼女たちの輝きが瑞々しい映像とともに描かれます。特に光の
使い方が効果的で、印象的なシーンがたくさん登場します。同じガールズムー
ビーであるソフィア・コッポラ監督の『ヴァージン・スーサイズ』あたりと共
通する雰囲気もあります。
二つ目の魅力は、社会派映画としての魅力。古い因習や価値観に苦しめられな
がらも、そこから自由になろうとする姉妹の姿を描いて、世界中の人々に問題
提起をしています。ただし、それを前面に押し出すのではなく、あくまでも思
春期の少女たちの青春ドラマの中で描いているのが特徴。それによって、監督
の思いがごく自然に胸に届きます。
脚本と演出で目立つのは、場面ごとのメリハリです。最初のころの躍動感あふ
れる少女たちの日常、自由を奪われ次々に結婚させられる沈鬱な展開、さらに
その後に起きる衝撃的な事件、末っ子ラーレによるある計画。それぞれの展開
がそれにふさわしいタッチで描かれ、同時にラーレの表情の変化がキッチリ捉
えられています。
最後に用意されているのは脱出劇という魅力。ラーレが車の運転を習うなど準
備を進め、そしてついに……というあたりは緊迫感満点。この監督、ハリウッ
ドのサスペンスなんかも、ちゃ〜んと撮れるんじゃないかしら。そのぐらい巧
みな演出です。
ラストの舞台となるのはイスタンブール。そこの空気感が姉妹の住む村とは全
然違うんです。そんな中で、それまでの緊迫感がやわらぎます。ラストでは冒
頭の伏線がキッチリ回収されて、すがすがしい開放感が漂います。
声高な主張を展開しがちなテーマを、こういう瑞々しい青春ドラマとして描く
アイデアがユニーク。美しい映像も見事で、とても新人監督の作品とは思えま
せん。必見の一作です。
そして、忘れてはならないのが5人の姉妹キャスト。オーディションやスカウト
で監督が見つけた新人で、ほとんどが演技初体験だそうですが、その初々しさ
がこの映画をさらに魅力的にしています。特に末っ子ラーレ役のギュネシ・シ
ェンソイがキュート！！
≪ぽちの満足度≫
★★★★☆（＋1／2★）
（95点）
（田中ひろあき）
2016年6月14日（火）シネスイッチ銀座にて。午後7時の回
[「は」のページ]
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