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リトル・ボーイ 小さなボクと戦争（LITTLE BOY）
（2014年 アメリカ）（上映時間1時間46分）
監督：アレハンドロ・モンテベルデ
出演：ジェイコブ・サルヴァーティ、エミリー・ワトソン、ケイリー＝ヒロユ
キ・タガワ、マイケル・ラパポート、デヴィッド・ヘンリー、エドゥアルド・
ベラステーギ、ベン・チャップリン、トム・ウィルキンソン
＊ヒューマントラストシネマ有楽町ほかにて全国公開
ホームページ http://littleboy-movie.jp/
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＜ストーリー＞
第二次世界大戦中のカリフォルニア州の小さな漁村。８歳のペッパー（ジェイ
コブ・サルヴァーティ）は背が低く、「リトル・ボーイ」とからかわれていた。
そんな彼にとって、優しい父が唯一の「相棒」だったが、徴兵検査で引っかか
った兄の代わりに、父は戦場に駆り出されてしまう。自分に不思議な力がある
と信じたペッパーは、父を呼び戻すために戦場に念を送るようになる。そんな
ある日、ペッパーの目の前に収容所から釈放された日系人ハシモトが現れる。
他の人々と同様にハシモトに敵意を剥き出しにするペッパーだが、教会の司祭
に諭されて、すべてを達成できたら願いがかなうというリストを渡される……。
＜レビュー＞
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父を思う一人の少年の日常を通して描く戦争の愚かさ
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第二次世界大戦中のアメリカの漁村のお話。主人公は背の低い８歳の少年ペッ
パー。「リトル・ボーイ」とからかわれ、友達がいない彼にとって父親が唯一
の相棒。ところが、兄が徴兵検査で引っかかったため、父親が代わりに戦場へ
送られます。そして、彼は日本軍の捕虜になってしまいます。
というわけで、戦争、人種差別、信仰などけっこう重たいテーマを持った映画
です。それでも、子供目線で生き生きと物語を紡いでいくので、楽しく観るこ
とができます。
面白いのは、ペッパーが大好きな奇術師のベン・イーグルのショーでアシスタ
ントを務め、ビンを動かすことに成功したことから、「自分には不思議な力が
ある」と信じて、戦場に向かって念を送り始めること。そんな設定もあって、
ファンタジー調の映像があちこちに出てきます。ユーモアもあるし、ノスタル
ジックで温かな雰囲気の映画です。
映画の中盤、ペッパーは教会の司祭からリストを渡され、それを達成すれば願
いがかなうといわれます。そこには「飢えた人に食べ物を」「家なき人に屋根
を」「病人を見舞え」などという項目とともに、人々から敵視されていた日系
人のハシモトに親切にすることも挙げられていました。そこでペッパーは嫌々
ながら彼に接近します。
大人たちに影響されてハシモトを憎んでいたペッパーが、彼と交流するうちに
少しずつ変化していくのがミソ。年齢の離れた２人のほのぼのとした友情を通
して、憎しみ合うことのむなしさを訴えます。同時に、一人の少年の成長も実
感させます。
後半、たまたま念を送っていた最中に地震が起きて、ますます自分の力に自信
を持ったペッパーは、父がいるはずの日本に向かってさらに強く念を送ります。
それがなんと原爆とリンクします（「リトル・ボーイ」は原爆の愛称でもあ
る）。
ここは描き方によっては日本人の反発を買いそうな展開ですが、そんなに嫌な
感じはしません。原爆の悲惨さも描いているからです。ペッパーの夢（あるい
は空想）の世界で、原爆の落ちた広島の惨状を見せます。それは多くのアメリ
カ人の喜びとは裏腹の恐ろしい世界（黒い画面の中の真っ赤な原爆が印象的）。
敵味方を超えて戦争の悲惨さが伝わってきます。
いったん悲しい結末かと思わせて、ラストにはどんでん返しが用意されていま
す。都合よすぎなのは確かですが、映画全体がファンタジー調で、しかも「奇
跡」がポイントになっているので、こういう結末もありではないでしょうか。
何よりも、ホッコリとさせてくれるあと味の良いラストです。
モンテヴェルデ監督はメキシコ出身の若い監督ですが、なかなか才能がありま
すね。そして、ほぼ演技未経験だというペッパー役のジェイコブ・サルヴァー
ティ、母役のエミリー・ワトソン、ハシモト役のケイリー=ヒロユキ・タガワな
ど、俳優たちもいい味を出しています。
≪ぽちの満足度≫
★★★★☆
（90点）
（田中ひろあき）
〔鑑賞データ〕
2016年9月1日（木）ヒューマントラストシネマ有楽町にて。午後1時25分の回
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