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マジカル・ガール（MAGICAL
GIRL）
（2014年 スペイン）（上映時間2時間7分）
監督・脚本：カルロス・ベルムト
出演：バルバラ・レニー、ルイス・ベルメホ、ホセ・サクリスタン、ルシア・
ポリャン、イスラエル・エレハルデ、エルザベット・ジェラベルト、マリソ
ル・メンブリロ
＊ヒューマントラストシネマ有楽町、YEBISU GARDEN CINEMAほかにて公開。
全国順次公開
ホームページ http://bitters.co.jp/magicalgirl/
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＜ストーリー＞
白血病の少女アリシア（ルシア・ポリャン）。彼女の願いは、大好きな日本の
アニメ「魔法少女ユキコ」のコスチュームを着て踊ること。失業中の父ルイス
（ルイス・ベルメホ）は、夢をかなえてやろうとするが、90万円もする衣装に
手が出ない。思い詰めたルイスは、高級宝石店に強盗に入ろうとするが、その
瞬間、心に闇を抱える人妻バルバラ（バルバラ・レニー）の嘔吐物が直撃する。
それをきっかけにバルバラは暗い過去に舞い戻る。一方、刑期を終えたばかり
の元数学教師ダミアン（ホセ・サクリスタン）はバルバラと再会するのだが…
…。
＜レビュー＞
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奇妙奇天烈ながら不思議な魅力を持つノワール映画
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スペインの新鋭カルロス・ベルムト監督の映画。冒頭は、教師と女子生徒のや
り取り。そこで起きる驚きのマジック。続いてアニメ好きの少女アリシアが登
場。長山洋子の曲に合わせて踊る彼女は白血病で余命わずか。願いは一点もの
のアニメキャラの衣装を着て踊ること。父のルイスがネットで検索すると、な
んと価格は90万円。金策に困ったルイスは、ついに宝石店強盗を企てるが……。
というわけで、何じゃ？こりゃ、という感じで始まった映画。奇妙奇天烈すぎ
るじゃありませんか。なので、ただのキワモノ映画なのかと思ったら、その後
は意外な展開に突入。
ルイスが強盗を働こうとした瞬間、空から降ってきた嘔吐物。そこから時間を
さかのぼってバルバラという妖しい人妻が登場（この人、エロ過ぎ）。彼女の
日常をひとしきり描いた後で、彼女が嘔吐するシーンが描かれます。そうです。
ここでルイスとバルバラが接点を持ち、ドラマは意外な方向に走り出すのです。
冒頭に見られた奇天烈さはその後もあちこちに見られます。検索エンジンの名
前は江戸川乱歩からとったらしい「ＲＡＭＰＯ！」。これまた乱歩絡みらしい
トガケの部屋など、日本趣味が満載。ピンク・マルティーニがカバーした美輪
明宏の「黒蜥蜴の唄」まで流れます。どうやらベルムト監督は何度も日本に来
て、影響を受けたらしいです。
しかし、そんな奇妙さの一方で、意外にもフィルム・ノワールのツボを押さえ
たドラマが繰り広げられます。不吉な雰囲気の中で、予測不能の展開が続き、
ちょっとしたボタンの掛け違いによって思わぬ方向にドラマが進みます。
後半では、刑務所を出所してきた元教師ダミアンが登場。「バルバラに会いた
くないから」と出所を嫌がった彼が、ついにバルバラに再会したところから惨
劇が起こります。
うーむ、何なんでしょう。この映画。全体は静かな雰囲気ながら、ハラハラド
キドキ感がずっと続きます。笑えるような笑えないような微妙なブラックユー
モアも満載。ジグソーパズルなどの象徴的なアイテムも効果的に使われ、深読
みすればいくらでもできそうな感じです。
そしてあまりにも多い謎。バルバラが金策のために封印していた過去に戻り、
謎の組織の仕事を請け負うもののその内容は謎のまま（これまたかなりエロっ
ぽい雰囲気だけど）。バルバラとダミアンの間に過去に何があったのかも謎の
ままです。そんな謎のテンコ盛りが、観客の欲求不満を生むのではなく、むし
ろ怪しく不吉な雰囲気を増幅させるから不思議なもの。
ラストのマジックを冒頭のマジックとつなげる構成も心憎いばかり。まあ、と
にかくスクリーンから目を離せないという意味では、これほどよくできたノ
ワール映画はあまりないかもしれません。こういう映画を長編デビュー作で撮
ってしまうのですから、今後が楽しみな監督なのは間違いありません。ハマる
人は何度も観たくなるような不思議な魅力を持つノワール映画。一見の価値ア
リです。
≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
（89点）
（田中ひろあき）
〔鑑賞データ〕
2016年3月14日（月）ヒューマントラストシネマ有楽町にて。午後6時50分の回
[「ま」のページ]
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