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めぐりあう日（JE
VOUS SOUHAITE D'ETRE FOLLEMENT AIMEE）
（2015年 フランス）（上映時間1時間44分）
監督：ウニー・ルコント
出演：セリーヌ・サレット、アンヌ・ブノワ、ルイ＝ド・ドゥ・ランクザン、
フランソワーズ・ルブラン、エリエス・アギス、カトリーヌ・ムシェ、ミシ
ャ・レスコー、パスカル・エルソ
＊岩波ホールほかにて公開。全国順次公開
ホームページ http://www.crest-inter.co.jp/meguriauhi/
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＜ストーリー＞
パリで夫と８歳の息子と暮らす理学療法士のエリザ（セリーヌ・サレット）。
養父母のもとで育った彼女は、実の母に会いたいと思い、息子のノエを連れて
自分の出生地であるダンケルクに引っ越す。そんな中、息子の学校で働くアネ
ット（アンヌ・ブノワ）が、背中を痛めてエリザの診療所にやって来る。エリ
ザは彼女に親近感を抱くのだが……。
＜レビュー＞
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実母と娘、2人の心の揺れ動きと命のつながり
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ウニー・ルコント監督の長編デビュー作『冬の小鳥』は、韓国から養女として
フランスに渡った自身の経験をもとにした作品。主演のキム・セロンの圧倒的
な存在感もあって、素晴らしい映画に仕上がっていました。それから6年。よう
やく登場した第2作がこの映画です。
主人公は、パリで夫と８歳の息子と暮らす理学療法士のエリザ。冒頭は彼女が
調査を依頼した専門機関から説明を受けるシーン。養女として育った彼女は、
実の母に会いたいと思ったのです。しかし、守秘義務の壁に阻まれたことから、
まもなく息子を連れて自分の出生地であるダンケルクに引っ越します。そんな
中、息子が転校した学校で働くアネットという女性が彼女の患者になります。
出生の秘密をめぐるミステリードラマになりそうな素材。ですが、ルコント監
督はそれをあっさり拒否します。何しろ冒頭近くから、エリザとともにアネッ
トに焦点を当てたドラマが進行します。どんなに鈍感な人でも、「彼女がエリ
ザの実母では？」と早いうちから感じ取ってしまうはずです。
なぜそんなことをしたのか。ルコント監督が描きたかったのは、エリザとアネ
ットの心の動きだからです。エリザは自分の出生に関して思い悩み、夫や子供
との関係にも苦しみます。アネットと知り合い親近感を抱きつつも、「もしか
したら」という思いで心が惑います。一方、アネットは封印したはずの過去が
よみがえり、こちらも悩み苦しみます。
そんな2人の心理の揺れを繊細に描き出すのがルコント監督の真骨頂。前作でも
そうでしたが、セリフだけに頼らずに視線や表情、しぐさなどの細かな描写を
通して、30年ぶりに再会する母と娘の心理を雄弁にスクリーンに刻み込みます。
セリーヌ・サレットとアンヌ・ブノワという2人の女優の細やかで情感あふれる
演技もそれに寄与します。
ただし、けっしてお涙頂戴のメロドラマにはしません。お互いに母娘と知らな
いままに、2人が交流を重ねる場面では、理学療法士のエリザがアネットの肌に
触れ、胎児のように彼女を抱く印象的なシーンを用意。あくまでも抑制的に2人
の関係を描きます。
ラストも抑制的。2人の正面対決のシーンを経て、公園での対話のシーンを重ね、
それぞれの人生と思いを交差させます。ここも最低限のセリフながら、様々な
ことを雄弁に観客に語りかけています。それによって単なる「母子もの」のド
ラマを超えて、消息不明のエリザの実父や彼の面影を引いているらしい息子の
ノエも含めて、命のつながりをスクリーンに刻み込みます。
エンディングの船上のシーンも余韻タップリ。そこでは、誕生した娘に捧げら
れたアンドレ・ブルトンの詩が朗読されます。「あなたの誕生に何一つ偶然は
ない」。それこそがルコント監督が言いたかったことなのでしょう。やさしさ
と明日への希望に満ちたエンディングです。
『冬の小鳥』ほどの衝撃はないものの、さすがにルコント監督らしい見事な作
品でした。
≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
（89点）
（田中ひろあき）
〔鑑賞データ〕
2016年8月24日（水）岩波ホールにて。午後1時30分の回
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