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モヒカン故郷に帰る
（2015年 日本）（上映時間2時間5分）
監督・脚本：沖田修一
出演：松田龍平、柄本明、前田敦子、もたいまさこ、千葉雄大、木場勝己、美
保純、小柴亮太、富田望生
＊テアトル新宿ほかにて全国公開
ホームページ http://mohican-movie.jp/
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＜ストーリー＞
モヒカン頭の売れないバンドマン、田村永吉（松田龍平）は、恋人の由佳（前
田敦子）が妊娠したのをきっかけに、彼女と一緒に７年ぶりに瀬戸内海の戸鼻
島に帰郷する。実家には矢沢永吉に心酔する父・治（柄本明）と熱狂的なカー
プファンの母・春子（もたいまさこ）、そしてなぜか帰省中の弟・浩二（千葉
雄大）がいた。家族が珍しく顔を揃えたのも束の間、恒例のド派手な親子喧嘩
が勃発する。そんな中、治が倒れてしまう。病院で受けた検査結果はガンだっ
た……。
＜レビュー＞
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ガンの父を看取る息子の姿をユル〜イ笑いで描く
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『南極料理人』『横道世之介』などで知られる沖田修一監督の映画。ほぼ素人
の普通のオバサンたちを主人公にした前作『滝を見に行く』で、ユル〜イ笑い
に磨きがかかった沖田監督らしい作品です。
タイトル通りに「モヒカン男が故郷に帰る」というお話。売れないバンドマン
の永吉が、妊娠したカノジョの由佳と戸鼻島という島に７年ぶりに帰ります。
そこにいたのは、父・治、母・春子、そしてなぜか帰省中の弟・浩二。
この父親の治が強烈なキャラなんです。矢沢永吉に心酔し、「矢沢は広島県民
の義務教育です！」と豪語。吹奏楽部の子供たちに無理やり矢沢の「アイ・ラ
ヴ・ユー、OK」を演奏させます。一方、母親の春子ものほほんとした性格なが
ら、広島カープのことになると人格が変わるヘンな人。
こういう強烈キャラが登場すると、笑いは爆笑方面に走りがちですが、そこは
やっぱり沖田監督の映画。全編にユル〜イ笑いが満載です。永吉や由佳、治、
春子たちのかみ合っているようないないような微妙な会話、ちょっとした言動
のズレなどが、クスクス笑いを生み出します。島に流れるのんびりした雰囲気
も、良い味わいになっています。
ただし、ドラマの展開はけっこうシリアス。映画の中盤で治が倒れ、末期ガン
であることが明らかになります。そこから何が描かれるかというと、遅ればせ
ながら親孝行らしきものを始める永吉の姿です。
しかし、それがややピントのはずれた親孝行。治が昔食べたというピザをもう
一度食べさせようとして、宅配ピザ屋にわざわざ船に乗ってピザを届けさせた
り（それも3軒も！）、吹奏楽部に「アイ・ラヴ・ユー、OK」を演奏させて治に
聞かせようとするものの、どんどんテンポが速くなったり。それらがまた、ユ
ルユルで楽しい笑いを生んでいくわけです。
クライマックスは治の願いで行われた永吉と由佳の結婚式。しかし、これまた
型破り。場所もヘンなら出席者もヘン。そして、最後はこの映画には珍しく、
ストレートな爆笑の笑いにつなげています（まるでドリフのコントみたい）。
ガンになった父を看取る息子というシリアスな物語を、お涙頂戴とははるかに
離れたところで、笑いに満ちたドラマに仕上げているのですからユニークです。
それがまた最後には、そこはかとない感動と余韻につながっています。
現代版のホームドラマを描きたかったという沖田監督ですが、まさにそんな感
じの映画ですね。ことさらに劇的な展開や描写を避けているのは、何気ない日
常の積み重ねこそが人生なのだという監督のメッセージなのかもしれません。
ただ個人的には、もう少しドラマに何かメリハリがあったほうが、よかった気
はしますけれどね。
≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
（86点）
（田中ひろあき）
〔鑑賞データ〕
2016年4月14日（木）テアトル新宿にて。午後4時の回
[「も」のページ]
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