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マネー・ショート 華麗なる大逆転（THE BIG SHORT）
（2015年 アメリカ）（上映時間2時間10分）
監督：アダム・マッケイ
出演：クリスチャン・ベイル、スティーブ・カレル、ライアン・ゴズリング、
ブラッド・ピット、ルディ・アイゼンゾップ、ケイシー・グローヴズ、マリ
サ・トメイ
＊TOHOシネマズ日劇ほかにて全国公開
ホームページ http://www.moneyshort.jp/
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＜ストーリー＞
2005年。金融トレーダーのマイケル（クリスチャン・ベイル）は、低所得者層
向け住宅ローン（サブプライムローン）を含む金融商品が崩壊すると確信し、"
クレジット・デフォルト・スワップ（ＣＤＳ）"という金融取引で、ウォール街
を出し抜く計画を立てる。同じ頃、若き銀行家ジャレッド（ライアン・ゴズリ
ング）は投資家バウム（スティーブ・カレル）と組んで、また若き投資家ジェ
イミーとチャーリーは元銀行家ベン（ブラッド・ピット）のサポートで、ウ
ォール街を出し抜くべく行動を開始するのだが……。
＜レビュー＞
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金融システムの欺瞞をついて大儲けを企む面々
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「マネーボール」の原作者マイケル・ルイスのノンフィクション『世紀の空売
り
世界経済の破綻に賭けた男たち』の映画化です。サブプライム・ローンの破
綻を引き金としたリーマンショックをネタにした実話ベースのお話。
住宅バブルに沸くアメリカで、誰も何の疑いも持たずに売り買いしていた金融
商品に対して、金融トレーダーのマイケルという男が「どうもコイツはおかし
い。実はこれってデタラメな商品で、間もなく崩壊するんじゃないの？」と疑
問を持ちます。そこで、その金融商品が崩壊すると巨額の保険金が入る契約を
投資銀行と結びます。同じ頃に若き銀行家ジャレッドや投資家バウム、若き投
資家ジェイミーとチャーリーと元銀行家ベンなども同じ事に気づいて、大儲け
を企みます。
まあ何よりも登場する人物がユニークすぎます。クリスチャン・ベイル演じる
マイケルは、ヘビメタ好きでいつもＴシャツ、短パンにハダシ。スティーブ・
カレル演じるバウムは、兄が自殺した心の傷を負い、世の中の不正に激しく憤
ります。その他の面々も個性派ぞろい。
そして、この映画の最大のポイントは、金融業界が進めるデタラメに対して主
人公たちが単純に正義の鉄槌を下すのではなく、それを利用して大儲けをしよ
うとするところ。いわば毒をもって毒を制すわけ。そのため犯罪ドラマのよう
な魅力があります。
歴史を見れば、彼らの予想が当たって大儲けするのはすでにわかっているので
すが、そこに至る過程がスリリングなので目が離せません。後半になってもな
かなか彼らの思うように事態が進まず、焦りだし、自分たちの破滅も覚悟する
ものの……というハラハラドキドキの一発逆転劇に持ち込むところも、実に面
白い展開。
何しろ複雑な金融システムが描かれるだけに、すべては理解できません。しか
し、スクリーンの中の人物が、観客に向かってわかりやすいたとえ話で解説し
てくれるので、何が行われているのかは何となくわかります。金融知識ゼロの
私でも、十分についていけました。
監督のアダム・マッケイはもともとコメディー畑の人ということもあって、笑
える場面がたくさんあるのも観客を飽きさせない秘密。時代背景を感じさせる
コラージュ風の映像などでテンポよく描かれるので、なおさら楽しく観ること
ができます。まさに金融エンターティメント！
とはいえ、ただ楽しいだけではないのがこの映画の特徴。ブラッド・ピット演
じる元銀行員が、若い投資家コンビがはしゃぐのに対して「はしゃぐんじゃね
え！ お前らが儲かるってことは失業者や自殺者がたくさん出るってことなん
だぜ！」と一喝したり、ラストでスティーブ・カレル演じる投資家が良心の呵
責に苦しみ、最後の決断を迷いに迷うあたりに、社会派映画の視点が感じられ
ます。
カタルシスはなし。観終わって苦さが残る映画です。しかし、それだからこそ
ただのエンタメを越えて、見応えがある映画なのです。
≪ぽちの満足度≫
★★★★☆
（92点）
（田中ひろあき）
〔鑑賞データ〕
2016年3月12日（土）ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後4時50分の回
[「ま」のページ]
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