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日本で一番悪い奴ら
（2016年 日本）（上映時間2時間15分）
監督：白石和彌
出演：綾野剛、YOUNG
DAIS、植野行雄、矢吹春奈、瀧内公美、田中隆三、みの
すけ、中村倫也、勝矢、斎藤歩、青木崇高、木下隆行、音尾琢真、ピエール瀧、
中村獅童
＊丸の内TOEIほかにて全国公開
ホームページ http://www.nichiwaru.com/
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＜ストーリー＞
柔道の実力を買われて北海道警察に入った諸星要一（綾野剛）。まもなく刑事
となるが、先輩刑事の村井（ピエール瀧）から「刑事は点数を稼がなければダ
メだ」と諭される。村井のアドバイスに従って、裏社会に飛び込んで協力者と
なるスパイをつくり、暴力団幹部の黒岩（中村獅童）とも兄弟分になる。覚醒
剤や拳銃の摘発を重ね、着実に実績を残していく諸星だったが……。
＜レビュー＞
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ワルの限りを尽くして成り上がる悪徳警官の青春コメディー
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白石和彌監督の前作『凶悪』は、死刑囚の告発をもとに、殺人事件を起こした
ワルたちをリアルに描いていった映画。今回もワルを描くと聞いて、そのイ
メージで観たら今回は全然違いました。
柔道の腕を買われて北海道警に入った諸星という男が主人公。機動捜査隊に配
属された彼はマジメすぎる刑事。刑事になった動機も「公共の安全を守るた
め」とかなんとか、教科書みたいなことを言います。ところが先輩刑事の村井
はそれを鼻で笑い、「刑事は点数を稼がなきゃダメだ」と言い放ちます。村井
はヤクザともズブズブの関係で、スパイを使って成績を上げています。諸星も
それを見習って行動するようになります。
というわけで、とんでもないヤツを描いているのですが、それを面白おかしく
テンポよく描くのでつい笑ってしまいます。そして、漫画みたいな大げさな表
現がテンコ盛り。諸星がマル暴に異動になった時なんて、服装からしぐさまで
ヤクザそっくりに変身。それも、ちょうど昔のヤクザ映画に出てきそうなデフ
ォルメされたヤクザです。クラブで豪遊して、そこのホステスと懇ろになるあ
たりも、完全に昔のヤクザ映画ですね。犯人に仕立てた男と警察署の前で記念
写真を撮るなど、もうハジケ過ぎて笑うしかありません。コメディー映画とし
ての楽しさはかなりのもの。
その後、新設の銃器対策課に異動になった諸星は、ますますワルぶりに磨きを
かけます。違法捜査のオンパレード。しかも、組織がそれを後押しします。成
績を上げるために、わざと銃を密輸させて摘発するヤラセ捜査を公認。それに
乗った諸星は課のエースになります。はては、資金稼ぎのために自ら覚醒剤を
売りさばく諸星。
そんなこんなで中盤以降も笑えるのですが、同時に青春映画的な要素も前面に
出てきます。仲間とともに悪事に精を出し成り上がっていく諸星。ハリウッド
のギャングの成り上がり青春映画のような雰囲気が感じられます。ヤツらった
ら、やってることはワルだけど一生懸命ですから。
しかし、後半は笑っていられなくなります。税関も巻き込んだ大ヤラセ作戦が
失敗に終わり、危ない目にあう諸星。そこからが転落の始まり、どんどん転げ
落ちて、ついに……。
勧善懲悪の映画ではないので、スカッとした結末ではありませんが、まあ当然
の報いでしょう。それでも何となく憎めない諸星。アホでワルだけど、とにか
くまっすぐに生きて組織を信じているものだから、哀れさも感じたりします。
ハジケた演技に加え、陰影のある表情で諸星を演じた綾野剛の演技も見事でし
た。
この映画は実話を基にしたフィクション。諸星のモデルになった北海道警察の
元警部の告白本が原作です。けっして社会派の映画ではありませんが、冒頭で
実話ベースであることを告げられ、ラストで事件の顛末を知らせられただけで、
何ともやるせない気持ちにさせられます。いまだにああいう連中の残党が道警
にいるとしたら、私は北海道には住みたくありませんぜ。
≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
（87点）
（田中ひろあき）
2016年6月27日（月）池袋シネマサンシャインにて。午後1時の回
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