|
ＳＣＯＯＰ！
（2016年 日本）（上映時間2時間）
監督・脚本：大根仁
出演：福山雅治、二階堂ふみ、吉田羊、滝藤賢一、リリー・フランキー、斎藤
工、塚本晋也、中村育二
＊TOHOシネマズ日劇ほかにて全国公開
ホームページ http://scoop-movie.jp
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
＜ストーリー＞
かつては報道カメラマンとして伝説的なスクープを手がけた都城静（福山雅
治）。しかし、今は芸能人のスキャンダルを追いかけるパパラッチとして、借
金と酒にまみれた生活を送っていた。そんなある日、ひょんなことから写真週
刊誌『SCOOP!』に配属された新人記者・行川野火（二階堂ふみ）とコンビを組
むハメになる。最初はギクシャクする2人の関係だが、やがて一緒に大きなネタ
を追うことになる……。
＜レビュー＞
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ゲスを演じる福山雅治をはじめ役者が輝くエンタメ映画
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
『モテキ』の大根仁監督の新作。1985年の原田眞人監督の『盗写 1／250秒』
を基にしているそうです。ただし、私はその作品を観ていないので比較はでき
ません。
この映画の見どころは、何と言っても主演の福山雅治の演技でしょう。二枚目
や善人の役が多い役者は、悪役やゲスな役をやりたがるといいますが、まさに
そんな欲求を満たすようなキャラ設定です。
冒頭はいきなり女の喘ぎ声がこだまします。なんと福山演じる都城静が、路上
の車に女を呼んでカーセックスに励んでいるのです。もうこれだけでコイツが
ゲスな野郎であることがわかってしまいます。芸能人のスキャンダルを追いか
ける彼は、酒と女にだらしなく借金まみれのようです。そんな彼が、ひょんな
ことから週刊誌の新人記者の行川野火と組まされることになります。
前半はメチャクチャな静と、何も知らない野火が反発し合いながらも、スキャ
ンダルを追いかける姿が描かれます。よくよく考えればステレオタイプだった
り、都合よすぎの展開も多いのですが、それを感じさせない大根監督の演出が
光ります。テンポがいいし、映像の鮮度が高いのでつい引き込まれてしまいま
す。コミカルな要素もたくさんあります。そして何よりも福山が嬉々としてゲ
スを演じているのが魅力的。
いろんな意味でサービス精神満点。エロいシーンもあるし、中盤ではカーチェ
イスなども飛び出します。その後に、野火があわやの目に遭うというのもこの
手の話の定番ですが、そこで救世主として表れるのが意外な人物。まあ、詳細
は観てのお楽しみということにしておきますが、その人物のブチ切れた演技に
も驚かされます。そんなこんなで少しずつ仕事が板についてくる野火。
一方、静はかつては報道の世界で花形カメラマンとして活躍していた人物。そ
れが今はこの体たらく。ということで、後半は「このままでいいのだろう
か？」という彼の悩みを背景に、野火とともに社会派のネタに迫っていく姿が
描かれます。ここも細かな仕掛けで見せていきます。コミカルな味わいも生き
ています。
こうしてこの一件が終わって大団円かと思いきや、そこで突然飛び出す静と野
火の濡れ場。なんだ？これ。二階堂ふみのきわどいシーンを出して、男性ファ
ンにサービスしているのだろうか？ などと思ったらそうではありませんでし
た。これって、ラストの伏線になっていたのですね。
その後、さらに衝撃的な出来事が起きます。そこで飛び出すのが福山演じる静
の壮絶なるシーン（これも詳しく書くとネタバレになるのでやめておきます
が）。ここに至って、最初はとんでもないゲス野郎だった静が、いつのまにか
カッコいいヒーローへと転化します。彼の生きざまがスクリーンにきっちりと
刻まれ、同時に二階堂ふみ演じる野火の記者としての成長もクッキリと見えて
きます。
いやぁ〜、それにしても大根監督は役者を輝かせるのがうまい。福山はもちろ
んですが、二階堂ふみも実にいい感じで映し出されています。静とワケありら
しい編集者を演じる吉田羊、そのライバル編集者役の滝藤賢一にもきちんと見
せ場を用意。静の協力者役のリリー・フランキーもド派手に活躍します。こり
ゃあ、役者は大根監督の映画に出たがりますよね。
元ネタの映画があるせいか、ちょっと説明不足のところもあったりするのです
が（静が昔起こした事件とか）、あんまりそういうところを感じさせません。
エンターティメントとしての面白さはかなりのもの。観て損はないでしょう。
≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆（＋1／2）
（87点）
（田中ひろあき）
〔鑑賞データ〕
2016年10月1日（土）新宿バルト9にて。午後2時の回
[「す」のページ][「アルファベット」のページ]
|
|