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シン・ゴジラ
（2016年 日本）（上映時間2時間）
総監督・脚本：庵野秀明
監督・特技監督：樋口真嗣
出演：長谷川博己、竹野内豊、石原さとみ、高良健吾、大杉漣、柄本明、余貴
美子、市川実日子、國村隼、平泉成、松尾諭、渡辺哲、野村萬斎
＊TOHOシネマズ新宿ほかにて全国公開
ホームページ http://shin-godzilla.jp/
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＜ストーリー＞
羽田沖から海水が噴出し、東京湾アクアトンネルが崩落する。各閣僚が出席し
た緊急会議では、海底火山が原因とされるが、内閣官房副長官・矢口蘭堂（長
谷川博己）は未知の巨大生物の可能性を指摘する。まもなく、巨大生物が姿を
現わし、"ゴジラ"と名付けられる。ゴジラは東京の街を破壊していくのだが…
…。
＜レビュー＞
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怪獣映画の魅力に加えて社会性も加味した久々のゴジラ
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12年ぶりの日本版ゴジラの登場です。一応、総監督と脚本が庵野秀明、監督と
特技監督が樋口真嗣となっていますが、これは完全に庵野秀明の映画ですね。
だって、映像や演出が『エヴァンゲリオン』とそっくりなんですもん。『エヴ
ァ』の作戦がヤシオ作戦で、『シン・ゴジラ』の作戦がヤシオリ作戦ってのも、
そっくりすぎて笑っちゃいます。
冒頭はいきなり羽田沖で海水が噴出して、海底トンネルが崩落します。前フリ
なんか何もありません。そして、その後に延々と描かれるのは政府の会議。い
ろんな会議を重ねて、現状把握や出現したゴジラへの対処法を考えるものの、
指揮命令系統が不明確だったり、責任をなすり合ったりして何も決められませ
ん。膨大な登場人物があれやこれやとセリフをしゃべりまくるだけ。ついでに
おびただしい数のテロップも。
これって完全に東日本大震災と原発事故を意識してますよね。単なる怪獣映画
にとどまらず、予期せぬ危機に襲われた際の日本社会のありようを描き出して
います。もともと最初のゴジラは、ビキニ環礁の水爆実験をきっかけに生まれ
たもの。それをふまえて、本作も社会性を強く押しだしています。さらにゴジ
ラの傍若無人な暴れっぷりや音楽の使い方なども、昔のゴジラ映画へのリスペ
クトが感じられます。
中盤になるとゴジラはいったん海に戻ります。その間に、ゴジラが放射能と強
く関係した生物であることが明らかになります。いわば歩く原発みたいなもの
でしょうか。これもまた東日本大震災と原発事故を意識させる展開です。
そして再び上陸したゴジラ。自衛隊に加え米軍も攻撃を加えるものの、まった
く効果がありません。やがてアメリカが国連決議をもとに、核兵器でゴジラを
攻撃しようとします。それに対して内閣官房副長官・矢口蘭堂を中心とするグ
ループは、血液凝固剤をゴジラに注入する作戦を計画します（これがヤシオリ
作戦）。
中盤以降も、危機に対する日本人や日本社会の姿を描く姿勢は不変。日米同盟
だの、核兵器だの、現実の世界を背景にリアルに見せていきます。怪しげな日
本語を駆使する石原さとみ演じるアメリカの要人も絡んできたりして。
同時に怪獣映画としての魅力も、次第に大きくなっていきます。今回のゴジラ。
最初に登場した時は「何じゃそりゃ？」と拍子抜けするセコさです。それが次
第に進化して、強力で、凶暴なものになっていきます。この設定がとても効果
的です。
容赦なく街を破壊しつくすゴジラ。迫力の戦闘シーン。さらに落ちこぼれの役
人たちを集めた矢口グループの意外な活躍（特に市川実日子がいい味を出して
います）。ヒーロー＆ヒロインＶＳ怪獣というエンタメ映画の王道をきっちり
と押さえた展開です。
クライマックスの作戦決行のシーン。そして、ラストの矢口の未来への決意を
込めた表情。今は凍りついているゴジラの姿。というわけでエンディングも余
韻が残ります。
欲を言えばもっと民衆の姿を取り上げて欲しかったんですけど。描かれるのが
政府や与党の人ばかりで、矢口たちにしてもエリート層。それが愛国的に行動
するだけなので、個人的にはやや引いてしまいました。
それでも怪獣映画ファンは満足できるはずだし、社会性にも富んだ作品という
ことで、一見の価値があるのは間違いないでしょう。今年の日本映画の中でも、
上位にランクされる作品だと思います。
ちなみに、キャストには総勢328人が出演しているとか。ワンシーンだけ出演す
る有名な人もたくさんいます。そのほとんどを50音順で紹介するエンドロール
にもビックリ。
≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
（89点）
（田中ひろあき）
〔鑑賞データ〕
2016年8月25日（木）ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後12時45分の回
[「し」のページ]
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