少女

（2016年　日本）（上映時間1時間59分）
監督：三島有紀子
出演：本田翼、山本美月、真剣佑、佐藤玲、児嶋一哉、菅原大吉、川上麻衣子、
銀粉蝶、白川和子、稲垣吾郎
＊丸の内TOEIほかにて全国公開
ホームページ　http://www.shoujo.jp/
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＜ストーリー＞
幼なじみの高校２年生、桜井由紀（本田翼）と草野敦子（山本美月）。敦子は
剣道の団体戦でのミスが原因でイジメにあっていた。一方、由紀は敦子をモデ
ルに小説を書き上げるが、それを盗まれてしまう。やがてその小説は、国語教
師・小倉の名前で新人文学賞を受賞する。そんな２人の前に、親友の死体を目
撃したという転校生・紫織が現われる。死というものに囚われてしまい、本当
の死を目撃してみたいと思った由紀は、小児科病棟でボランティアを始める。
同じ頃、敦子は老人ホームでボランティアをするようになる……。

＜レビュー＞
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暗闇の中にいる2人の少女の友情と成長の物語……なのか？
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湊かなえの小説を『しあわせのパン』『繕い裁つ人』の三島有紀子監督が映画
化しました。

主人公は幼なじみの高校２年生、由紀と敦子。敦子はもともと明るい少女だっ
たのに、剣道の試合でミスしたことがきっかけでイジメにあっています。また、
彼女はいつも足を引きずっていますが、どうやら本当はもう治っているようで
す。一方、そんな敦子を助けられない由紀は、敦子をモデルに小説を書いて自
分の気持ちをそこに込めます。そして彼女自身にも、幼い頃からの祖母との確
執を抱えているようです。

映画の冒頭は、十字架の前で女子高生の集団が仰々しく遺書を読みます。まる
で舞台劇のようなシーン。こんなふうに仰々しかったり、鮮烈だったりする
シーンがあちこちに登場して、映像的な工夫が感じられはするものの、全体に
うわっ滑りしている感じは拭えません。

それというのも肝心の核になる話が弱すぎるからです。由紀と敦子、ともに暗
い過去を持ち「闇の中にいる」2人が友情を深め、お互いに成長して、その暗闇
を抜け出すというのが、この映画の本筋だと思われます。ところが、実際は話
があっちに行きこっちに行きして、とりとめがありません。

例えば、由紀が書いた小説を教師が盗み、それが新人賞を取ってしまうという
一件。由紀は彼を憎み「死ねばいい」と思います。そして実際に、彼は死んで
しまうのです。その死の真相を暴くミステリーかホラーにでもなりそうですが、
そういう展開でもありません。

そこからは、「親友の死体を見た」という謎の転校生が現れたり、「自殺した
死体を見た」という男子生徒が現れたりして、「死」というものが前面に出て
きます。それはいいとしても、その転校生が痴漢をネタにオヤジを恐喝するエ
ピソードは何なんだ？　物語において何の役割があるのか意味不明なエピソー
ドは、その後もたくさん出てきます。

後半は夏休みの出来事が描かれます。「死」というものが気になった由紀は、
自分も本当の死を見てみたいと、難病の子供がいる病院でボランティアをしま
す。そうこうするうちに、入院患者の男の子たちと仲良くなります。一方、敦
子のほうは老人施設でボランティアを始めます。

そこで「生と死」について向き合った２人は、新たな一歩を踏み出します……
と言いたいところですが、そういう感じでもありません。そもそも２人の人間
ドラマが浅すぎるんですよね。一応、過去の回想を使ったりして、それ風に描
いてはいるものの、「闇の中にいる」わりには彼女たちの心情がきちんと伝わ
ってきません。

そして相変わらずどうでもいいようなエピソードが目白押し。中年エロオヤジ
が由紀に迫るというのは、何の目的で挿入されたエピソードなのでしょう。意
味不明です。由紀の施設で働く男性スタッフ（演じるのは稲垣吾郎）の痴漢冤
罪と家族崩壊の話も、このドラマにおける位置づけが曖昧に思われます（しか
も、彼があの子の父親だなんて偶然すぎ）。

それでも、最後のほうになってようやく由紀と敦子の友情物語的な展開になり
ます。２人の疾走シーンがいかにも青春映画らしく、暗闇からの脱出を印象付
けます。

と思ったら、何ですか？　この最後のエピソード。あのエロオヤジとあの子
が？　はぁ？　いくらなんでも都合よすぎでしょう。これって、単にハッピー
エンドにしたくなかっただけなんじゃないの？　まったく意味が不明です。あ
と味悪すぎです。全編を通して、現代社会を投影させるようなリアリティも皆
無です。演出はともかく、脚本はもう少し何とかならなかったものでしょうか。

というわけで、私にはどこが面白いのかさっぱりわかりませんでしたが、そん
な中で本田翼と山本美月はカワイかったです（笑）。

≪ぽちの満足度≫
★★☆☆☆
（65点）
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（田中ひろあき）

〔鑑賞データ〕
2016年10月11日（火）池袋シネマサンシャインにて。午後12時50分の回

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