シング・ストリート 未来へのうた(SING STREET)


(2015年 アイルランド・イギリス・アメリカ)(上映時間1時間46分)
監督・脚本・原案:ジョン・カーニー
出演:フェルディア・ウォルシュ=ピーロ、ルーシー・ボーイントン、マリ
ア・ドイル・ケネディ、エイダン・ギレン、ジャック・レイナー、ケリー・
ソーントン、ベン・キャロラン、マーク・マッケンナ、ドン・ウィチャリー
*ヒューマントラストシネマ有楽町、渋谷シネクイントほかにて公開。順次
全国公開
ホームページ http://gaga.ne.jp/singstreet/
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<ストーリー>
1985年、アイルランドのダブリン。父親の失業で優秀な私立校から荒れた公立
校へ転校を余儀なくされた14歳のコナー(フェルディア・ウォルシュ=ピー
ロ)。両親はケンカが絶えず、学校でもイジメの標的になる。そんなある日、
街で見かけた少女ラフィーナ(ルーシー・ボーイントン)に心を奪われたコ
ナーは、自分のバンドのビデオに出演しないかと誘ってしまう。慌ててメン
バーを集めて、即席のバンドを結成。音楽マニアの兄のアドバイスを受けなが
ら猛練習を開始するコナーだったが……。

<レビュー>
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困難を乗り越えバンドに賭ける少年の青春音楽映画
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ジョン・カーニー監督とくれば、『はじまりのうた』『ONCE ダブリンの街角
で』などの音楽映画でおなじみ。今回も音楽をフィーチャーした映画です。

大不況にあえぐ1985年のアイルランドの首都ダブリンが舞台。主人公の14歳の
少年コナーは、父親が失業したため私立校から公立校へ転校させられてしまい
ます。そこは掃きだめのような場所で、コナーはイジメの標的になります。一
方家庭では両親が不和で離婚間近。コナーの唯一の楽しみは、音楽マニアの兄
ブレンダンと一緒にミュージックビデオを観ることでした。そんなある日、街
で出会った自称モデルの少女ラフィーナにひと目ぼれしたコナーは、「ウチの
バンドのビデオに出てくれ」と誘ってしまいます。もちろん、バンドなんか存
在しません。そこで慌ててメンバーを集めて、猛練習を開始します。

というわけでストーリー自体はありがちなのですが、これがキラキラと輝く見
事な青春映画に仕上がっているんです。何しろ躍動感がハンパではありません。
超ユニークなメンバーを集めて、最初はぎこちないながら、次第に上達してい
くバンド。当時の流行も取り入れつつ、やがてオリジナリティーを獲得してい
きます。その練習風景やビデオの撮影風景など、すべてに嘘がないし、常にワ
クワク感が漂います。

劇中に登場するデュラン・デュランをはじめ当時のバンドの楽曲も素晴らしい
し、それ以上に「シングストリート」というコナーのバンドのオリジナル曲が、
ドラマの内容とシンクロして心にしみてきます。

そしてバンド活動と並行して描かれるコナーの初恋物語。ラフィーナに対する
コナーの初々しくて切ない思いが、クッキリとスクリーンに刻み付けられてい
ます。実は、ラフィーナには年上の彼氏がいて、それがコナーとの関係にも影
を落とし、このロマンスをますます切なくさせるのです。

一方、学校でもコナーの前には、イジメっ子や強圧的な校長などが立ちはだか
ります。それを乗り越えていくところも青春映画らしい展開。

とにかく印象的なシーンが数限りなくある映画です。例えば、ビデオ撮影で会
場に来ないラフィーナを思いながらコナーが歌うシーン。コナーの目の前には
空想の世界が広がります。ビデオ撮影でラフィーナが海に飛び込んでしまう
シーンも鮮烈。これぞ青春です!

クライマックスの学校でのライブシーンもこれまた感動的。そしてそこからコ
ナーたちの旅立ちを描くラストへ。その旅立ちは、彼らの成長を物語ると同時
に、閉塞感に包まれた当時のアイルランドの人々の思いを代弁したものでしょ
う。そこで兄のブレンダンが見せるガッツポーズがすべてを象徴しています。
「どんなにひどい状況にあっても、そこに必ず喜びや希望がある」。そんな思
いを抱かせるエンディングでした。

青春映画の必須要件であるキラキラさと切なさ、そして甘酸っぱさを詰め込ん
だ音楽青春映画の傑作だと思います!!

≪ぽちの満足度≫
★★★★☆(+1/2★)
(96点)

                             (田中ひろあき)

〔鑑賞データ〕
2016年7月21日(木)ヒューマントラストシネマ有楽町にて。午後6時50分の回


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