すれ違いのダイアリーズ(THE TEACHER'S DIARY)


(2014年 タイ)(上映時間1時間50分)
監督: ニティワット・タラトーン
出演:スクリット・ウィセートケーオ、チャーマーン・ブンヤサック、スコラ
ワット・カナロット
*シネスイッチ銀座ほかにて公開
ホームページ http://www.moviola.jp/diaries2016/
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<ストーリー>
元レスリング選手のソーン(スクリット・ウィセートケーオ)は、山奥にある
小さな水上学校の教師の職を得る。だが、慣れない教師生活で失敗ばかりして
いる。そんなある日、ソーンは前任の女性教師エーン(チャーマーン・ブンヤ
サック)の日記を見つける。そこには、自分と同じように悩むエーンの気持ち
が綴られていた。日記を読むうちに、会ったこともないエーンに惹かれていく
ソーンだったが……。

<レビュー>
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2人の教師の現在と過去が共鳴する心温まるドラマ
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日本ではあまり上映されないタイの映画です。

主人公は元レスリング選手で、仕事もないソーンという青年。ようやく山奥の
水上学校(本当に水の上に浮かんでいる)の教師の職を得たものの、電気も水
道もなく、携帯電話もつながらない生活。おまけに初めての教師の仕事とあっ
て失敗ばかりしています。そんな中、ソーンは前任の女性教師エーンの日記を
見つけて読むようになります。そこにはソーンと同じような悩みが綴られてい
ます……。

この映画の特徴は、日記を媒介にして、新任教師ソーンの現在進行形のドラマ
と、前任のエーンの過去のドラマが並行して描かれているところ。しかも、そ
れがはっきり分かれていないんです。例えば、校舎の1階で過去のエーンが生
徒を相手にしていると、その2階では現在のソーンが生徒を相手にしていたり。

そこで描かれるのは、2人の教師としての成長物語と恋愛問題。アウトローな
エーンと未熟なソーン。2人は生徒たちと向き合ううちに、教師として少しず
つ成長していきます。子供たちのとびっきりのかわいらしさも、2人の成長を
リアルに見せます。その一方で、2人は私生活では恋愛に悩んでいます。そう
いう背景もあって、まだ見ぬお互いに心惹かれていきます。

やがてソーンは実際にエーンに会ってみたくなります。とくれば、それをクラ
イマックスに持ってくるのが普通の展開。ところが、この映画ではそれを中盤
に配置。そして後半は立場を逆転させて、ソーンと入れ違いで再び赴任してき
たエーンがソーンが綴った日記を読むという展開。

この映画、脚本が憎らしいほど巧みです。エーンの過去とソーンの現在が、時
空を超えて共鳴していく展開に、まったく目が離せませんでした。星形のタト
ゥーや柱のキズといった、細かなアイテムも絶妙な形で使われています。ユー
モアもタップリで、全編笑いどころが満載です。

瑞々しい演出も印象的。2人のまだ見ぬ相手に対する思い、教師として生徒に
接する時の気持ち、さらには水上学校周辺の懐かしい風景など、どれもが心に
残りそうなシーンばかりです。

さてさて、邦題通りに「すれ違い」ばかりでなかなか会えない2人。それを最
後の最後で見事な形で決着させるラスト。そこはかとない余韻を残しつつ、誰
の心も温かくしそうな終わり方です。主演の2人もいいよなぁ〜。

何度も言いますが、うますぎるぞ! この映画。2人の教師の成長と恋愛をバ
ランスよく描き、ここまで観客を心地よくさせてくれるんですもの。個人的に、
今年観た映画の上位にランクしそうな作品でした。

≪ぽちの満足度≫
★★★★☆(+1/2★)
(95点)
                                          (田中ひろあき)

〔鑑賞データ〕
2016年5月14日(土)シネスイッチ銀座にて。午後1時40分の回


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