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追憶の森（THE
SEA OF TREES）
（2015年 アメリカ）（上映時間1時間51分）
監督：ガス・ヴァン・サント
出演：マシュー・マコノヒー、渡辺謙、ナオミ・ワッツ、ケイティ・アセルト
ン、ジョーダン・ガヴァリス、ジェームズ・サイトウ、オーウェン・バーク
＊TOHOシネマズ シャンテほかにて全国公開
ホームページ http://tsuiokunomori.jp/
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＜ストーリー＞
富士山の北西に広がる青木ヶ原の樹海。そこに足を踏み入れるアーサー・ブレ
ナン（マシュー・マコノヒー）というアメリカ人男性。森の奥深くに入り、睡
眠薬自殺を図ろうする彼の前に、傷ついた体をひきずりながら森の出口を求め
てさまよう日本人男性（渡辺謙）が現れる。ナカムラ・タクミと名乗るこの男
を放っておくことができなくなったアーサーは、一緒に出口を探すもののなか
なか見つからない。森の中をさまよう２人に次々と試練が襲いかかる……。
＜レビュー＞
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富士の樹海で出会った２人の時空を超えた共鳴
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よくもまあ、こんな地味な脚本を映画化できたものです。しかも監督は『グッ
ド・ウィル・ハンティング／旅立ち』『ミルク』『エレファント』などのガ
ス・ヴァン・サント、出演がオスカー俳優のマシュー・マコノヒーに渡辺謙、
そしてナオミ・ワッツですもん。
マシュー・マコノヒー演じる大学の非常勤講師アーサーが主人公。アメリカか
ら日本に来た彼は富士山麓の青木ヶ原の樹海に入り、自殺しようとします。と
ころが、そこで出口を求めてさまよう渡辺謙演じる謎の日本人と出会い、彼を
放っておけずに出口を求めて樹海をさまよいます。
というわけで、いったいなぜアーサーは自殺しようとしているのか、そしてナ
カムラ・タクヤと名乗る日本人は誰なのか、どうしてここにいるのかが大きな
謎として提示されます。
映画の構成は、アーサーとナカムラが樹海をさまよう現在進行形のドラマに、
アーサーの過去が挟み込まれる形で進行します。
それを通して見えてくるのは、アーサーとナオミ・ワッツ演じる妻との複雑な
関係。２人の夫婦関係は最悪（どうやら不倫絡み）、そしてその後は妻が難病
に……。て、おいおい、なんだそのベタなドラマは、そんなんで樹海で死ぬの
生きるのって話になるんかいっ！ てな感じで最初はちょっとついていけませ
んでした。
現在進行形のドラマでは、２人がさまようだけでなく崖から落ちたり、外国人
の死体と遭遇したり、突然の大雨で流されたりといろいろあるので、それなり
に観てしまうんですけれどね。
そんな中で、ナカムラが歌う変な歌や、「ヘンゼルとグレーテル」、怪しげな
花など、ミステリアスなアイテムが登場してきます。むむ？ 何やらミステリ
アスな雰囲気。これって、いったいどういう映画なの？ と戸惑う私。
やがてアーサーの過去が意外な方向に転がっていきます。なるほどねぇ。そり
ゃあ後悔するわけですなぁ。死にたくなっちゃうのもわからんでもないなぁ、
と少しずつ共感し始めます。
しかし、その一方でナカムラの正体は謎のまま。わずかに彼が窓際に追いやら
れたサラリーマンで、妻の名がキイロ、娘がフユという名前であることが判明。
はい？ 妻の名がキイロ？ なんじゃ、そりゃ。
と思ったら、ははあーん、そうきましたか。ラストですべてが判明。そうかそ
うか。これは単なるミステリーや男同士の友情のドラマなどではなく、アー
サーの再生のドラマだったのですね。
このあたりの語り口は、いかにもガス・ヴァン・サント監督らしいところ。フ
ァンタジーやホラーの要素が濃厚なところは、黒沢清監督の映画とやや似た雰
囲気も感じました。
前半はちょっと引いてしまったものの、観終わったあと味はまずまずでした。
本当に地味な映画ですが、心に染み入ってくるものがあります。
≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
（86点）
（田中ひろあき）
〔鑑賞データ〕
2016年5月1日（日）池袋シネマ・ロサにて。午後1時の回
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