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われらが背きし者（OUR
KIND OF TRAITOR）
（2016年 イギリス）（上映時間1時間49分）
監督：スザンナ・ホワイト
出演：ユアン・マクレガー、ステラン・スカルスガルド、ダミアン・ルイス、ナオミ・ハリス、ジェレミー・ノーサム、ハリド・アブダラ、マーク・ゲイティス
＊TOHOシネマスズ シャンテほかにて全国公開
ホームページ http://wareragasomukishimono-movie.jp/
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＜ストーリー＞
イギリス人の大学教授ペリー（ユアン・マクレガー）と妻のゲイル（ナオミ・ハリス）は、モロッコでの休暇中にロシア人のディマ（ステラン・スカルスガルド）と偶然知り合う。ディマはペリーに自分がロシア・マフィアで、組織のマネー・ロンダリングを担当していたものの、まもなく命を狙われる身になると告白する。自分と家族の英国亡命を希望する彼は、組織の情報が入ったＵＳＢメモリーをＭＩ６に渡してほしいとペリーに依頼する。戸惑いつつも彼と家族のことを思い、これを引き受けるペリーだったが……。
＜レビュー＞
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一般人が巻き込まれるスリリングなスパイ劇
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スパイ小説で知られる（なにせ自分も元ＭＩ６にいたので）ジョン・ル・カレの小説の映画化です。ル・カレ原作の映画は、過去にも『裏切りのサーカス』『誰よりも狙われた男』など面白い作品が多かったのですが、この映画も文句なしに面白いです。
ただし、この映画は過去のル・カレ作品とはちょっと違います。スパイを扱っているのは同じですが、主人公はスパイではなく一般人です。
冒頭は、凄惨な殺人シーン。車に乗ったロシア人一家が警備兵らしき人物に射殺されます。続く舞台はモロッコ。大学教授のペリーが奥さんとともに休暇を楽しんでいます。ただし、２人の仲はギクシャクしている模様。そんな中、ペリーはレストランで怪しいロシア人と知り合います。そのうちにペリーは、そのディマというロシア人から「自分はロシア・マフィアでマネー・ロンダリングを担当している」と告白されます。しかも、まもなくボスから殺されると言うのです。ディマは「組織の情報と引き換えに、自分と家族はイギリスに亡命したい」と言い、ＭＩ６に情報の入ったＵＳＢメモリーを渡してくれるように頼みます。
その後はヨーロッパ各地を移動しながら、ディマとＭＩ６の担当者とのギリギリの駆け引きが展開。そこにロシア・マフィアのボスたちが絡んできます。ペリーと妻はそこに巻き込まれていきます。
このペリーと妻の存在が効いているんですねぇ。それでなくてもハラハラドキドキのドラマなのに、そこに一般人が絡むものだから、観客は彼らに感情移入して、彼らの目線で事の成り行きを見守ります。おかげで、なおさらハラハラドキドキするわけです。
この手のスパイものにつきものの「裏切り」というテーマも、ハラハラ度を高めます。主要な登場人物を見ながら、「コイツらは本心を語っているのか？ 本当は別のことを考えているんじゃないのか？」と疑心暗鬼になってしまいます。いわくつきの拳銃をはじめ、様々なアイテムも効果的に使われています。
リアリティもあります。こういうスパイものの場合、一歩間違えば「ありえねぇ」と思ってしまうところも多いのですが、それを感じさせません。ペリーと奥さんとの夫婦関係の変化を背景に描いたり、冒頭の殺人をペリーが事件に巻き込まれるポイントの一つに据えたりして、違和感なくストーリーに引き込んでいきます。ＭＩ６の捜査官が、上官の命令を無視して突っ走る背景に、家族をめぐる恨みを持ってくるあたりも、ドラマ的によく考えられています。
監督のスザンナ・ホワイトは、『ナニー・マクフィーと空飛ぶ子ブタ』（2010年）の監督で、こういう作品とは縁がないようにも見えるのですが、なかなかの手際のよさです。暗くて冷たい映像も魅力的。
いったんことがうまく運びかけて、それがひっくり返るところもスリリング。クライマックスはディマと家族の逃避行。もちろんペリーたちも一緒です。そこまでは比較的事件の傍観者的だったペリーに、ちゃんと見せ場を用意します。ラストは苦い結末。でも、まあディマの家族愛が感じられるラストだからいいか……と納得しかけたら、あらまぁ、最後の最後に用意された逆転劇。おかげで、カタルシスを味わうことができました。
大学教授のペリーと妻で弁護士のゲイルを演じたユアン・マクレガー＆ナオミ・ハリスの演技もいいのですが、それ以上に目立つのがディマを演じたステラン・スカルスガルドのすご味のある演技と、ＭＩ６のヘクターを演じたダミアン・ルイスの渋い演技。こちらもお見逃しなく。
≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
（89点）
（田中ひろあき）
〔鑑賞データ〕
2016年10月24日 ＴＯＨＯシネマズ シャンテにて。午後12時25分の回
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