|
２０センチュリー・ウーマン（20TH
CENTURY WOMEN）
（2016年 アメリカ）（上映時間１時間59分）
監督・脚本：マイク・ミルズ
出演：アネット・ベニング、エル・ファニング、グレタ・ガーウィグ、ルーカ
ス・ジェイド・ズマン、ビリー・クラダップ
＊丸の内ピカデリーほかにて全国公開
ホームページ http://www.20cw.net/
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
＜ストーリー＞
1979年、カリフォルニア州サンタバーバラ。15歳の息子ジェイミー（ルーカ
ス・ジェイド・ズマン）を育てるシングルマザーのドロシア（アネット・ベニ
ング）。思春期を迎えた息子のことが理解できなくなったドロシアは、家に間
借りしている写真家のアビー（グレタ・ガーウィグ）と、夜ごとジェイミーの
部屋に忍び込んでくる幼なじみのジュリー（エル・ファニング）に、息子の教
育係になって欲しいと相談を持ちかけるのだが……。
＜レビュー＞
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
世代の違う3人の女性の人生を通して20世紀が見える
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
前作『人生はビギナーズ』で自身のゲイの父親のことを描いたマイク・ミルズ
監督が、今回は母親をモデルに描いた半自伝的作品です。
1979年のカリフォルニア州サンタバーバラでのひと夏の出来事を描いています。
主人公はドロシアという女性。夫と離婚して、40歳の時に生んだ15歳の息子ジ
ェイミーを育てているシングルマザーです。
彼女の家には、写真家のアビーという女性と便利屋のウィリアムという男性が
間借りしています。そんな中、思春期を迎えたジェイミーのことが理解できな
くなったドロシアは、ある出来事をきっかけに「自分だけでジェイミーを育て
るのは難しい。他人のサポートが必要ではないか」と考えて、アビーに加え、
ジェイミーの幼なじみのジュリーという女の子に、その役目を依頼します。
この映画は全編にユーモアが散りばめられています。そして、同時に瑞々しい
描写が光ります。そこで描かれるのはジェイミーの成長物語。父親がいないこ
ともあって母親ベッタリだった彼が、思春期を迎えて、教育係となった風変わ
りな2人の女性と交流する中で少しずつ成長していきます。
同時にこの映画が素晴らしいのは、世代の違う3人の女性たちそれぞれの人生を
描いているところです。
ジェイミーの母ドロシアは、かつてパイロットを目指し、その後はキャリア
ウーマンとして働いてきた先進的な女性。しかし、夫と別れ、年をとる中で、
孤独や焦燥感を抱えています。それが息子や間借り人たちとの交流を通して露
わになります。
一方、写真家のアビーは、子宮頸がんの疑いがあり、その原因を作ったらしい
母親との確執を抱えて悩んでいます。
また、ジェイミーの幼なじみのジュリーも、家族との確執を抱えて心のバラン
スを崩し、奔放な暮らしを送っています。彼女は夜な夜なジェイミーの部屋に
やってきて一緒のベッドで眠っていくものの、それ以上の関係は断固として拒
みます。
そんな3人の人生を通して、彼女たちの生きた時代が見えてきます。例えば、ス
タンダードな音楽が好きなドロシアに対して、アビーはパンクやニューウェー
ブに入れ込み、それがジェイミーにも影響を与えます。その他にも、戦争、女
性解放運動、政治の動きなど、20世紀の様々な社会が見えてきます。
つまり、この映画は少年の成長物語であるのと同時に、20世紀を生きた3人の女
性たちのドラマであり、彼女たちを通して20世紀という時代の形も見えてくる
わけです。
ついでに、もう一人の間借り人の男性ウィリアムの人生もまた、当時の時代を
象徴しています。
そんな個性的な登場人物を魅力的、かつ肯定的に描き出したところが、この映
画の最大の素晴らしさでしょう。
ジェイミーの成長をはっきりと示したのちに、最後に語られるのは、3人の女性
たちとウィリアムのその後。観終わって温かな気持ちになりました。
≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
（89点）
（田中ひろあき）
〔鑑賞データ〕
2017年6月10日（土）新宿ピカデリーにて。午後1時25分の回
[「と」のページ] [「数字」のページ]
|