50年後のボクたちは(TSCHICK)


(2016年 ドイツ)(上映時間1時間33分)
監督:ファティ・アキン
出演:トリスタン・ゲーベル、アナンド・バトビレグ、メルセデス・ミュラー、
ウーヴェ・ボーム、アニャ・シュナイダー、ウド・ザメル、アレクサンダー・
シェーア、マルク・ホーゼマン、フリーデリッケ・ケンプター
*ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテほかにて公開。全国
順次公開
ホームページ http://www.bitters.co.jp/50nengo/
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<ストーリー>
臆病で同級生から変人扱いされている14歳のマイク(トリスタン・ゲーベル)。
おまけに母はアル中で父は若い女と浮気中だった。そんなある日、クラスに風
変わりな転校生チック(アナンド・バトビレグ)がロシアからやってくる。マ
イクは憧れのタチアナの誕生パーティに行くのを楽しみにしていたが、クラス
の中で彼とチックにだけは招待状が来なかった。まもなく夏休みになり、チッ
クはマイクをドライブに誘う。無断借用したオンボロ車に乗り、チックの祖父
が住むという"ワラキア"を目指して旅に出るのだが……。

<レビュー>
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2人の少年のヤンチャな冒険旅行のロードムービー
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ドイツの青春ロードムービーです。原作はドイツでベストセラーになったヴォ
ルフガング・ヘルンドルフの児童文学(日本でも『14歳、ぼくらの疾走』とい
うタイトルで出版されているそうです)。

主人公の男の子14歳のマイクは、不器用で臆病で、同級生から変人扱いされて
います。おまけに母はアル中です。マイクは、学校でも家庭でも居場所が悪い
生活を送っていたのでした。

そんなある日、クラスにロシアからチックという転校生がやってきます。チッ
クは刈り上げた髪型からして、不良を絵にかいたような少年。長髪で線の細い
マイクとは好対照です。

まもなくマイクにとって衝撃の出来事が起きます。彼はクラスの美少女タチア
ナが好きで、彼女の誕生パーティーでプレゼントしようと肖像画を描いていま
した。ところが、なんとクラスの中で彼とチックにだけは、招待状が来なかっ
たのです。それだけ浮いた存在だったわけです。

夏休みになって、マイクの母はアル中の治療のため保養施設に行くことにしま
す。一方、若い女と浮気中の父親は、出張と称してその女とどこかへ出かけて
しまいます(2人が出ていく時にマイクが銃で撃ち殺す妄想が面白い)。

こうして一人ぼっちになったマイク。そこにやってきたのがチックです。チッ
クはマイクをドライブに誘います。2人は無断借用したオンボロ車に乗り、チッ
クの祖父が住むという"ワラキア"という場所を目指して旅に出ます。

このヤンチャで冒険に満ちた旅での出来事の数々を、ファティ・アキン監督が
瑞々しく描き出します。畑の中を車で走り回ったり、風力発電の風車の下で野
宿したり、謎の母と子供たちに食事をごちそうになったり。なにせ盗難車&無
免許での旅だけに、警察に追われて逃げ惑う場面もあります。

そうした数々の波乱を通して、マイクは少しずつ積極的になり、成長していく
のでした。

そんな中で、マイクにとって大きかったのが、ゴミの山での少女イザとの出会
いです。汚い服を着て、ボサボサの髪をして、2人に悪態をつきまくるイザ。
「プラハの姉のところに行きたい」というのですが、どう見ても訳アリです。
しかし、その訳について詳しく描くことはしません。

その代わり、3人で湖に入ってはしゃぐシーンと、その後のマイクとイザとの親
密なシーンを通して、性的な目覚めも含めてマイクの成長を描き出します。そ
の中では、チックのある秘密もさりげなく明かされます。

全編に笑いが散りばめられたコミカルなタッチなのも、この映画の特徴です。
特に個人的に気に入ったのが、車の中でいつもかかっているリチャード・クレ
イダーマンの音楽。これが実にいい味を出しています。

まさにマイクにとって、絶対に忘れられない一生の宝物になった旅ですが、や
がて終わりが訪れます。

ラストはマイクの成長をクッキリと描くとともに、タイトルにある「50年後」
がキーワードになったある「約束」を示して余韻を残し、マイク、チック、イ
ザの未来に思いをはせさせます。観終わってノスタルジックで温かな気持ちに
なりました。主人公たちと同年代の子供たちだけでなく、かつて少年少女だっ
た大人たちの心にも響きそうな映画です。

≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆(+1/2★)
(86点)

                             (田中ひろあき)

〔鑑賞データ〕
2017年9月22日(金)ヒューマントラストシネマ有楽町にて。午後2時50分の回


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