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愛を綴る女（ＭAL DE PIERRES）
（2016年 フランス）（上映時間2時間）
監督：ニコール・ガルシア
出演：マリオン・コティヤール、ルイ・ガレル、アレックス・ブレンデミュー
ル、ブリジット・ルアン、ヴィクトワール・デュボワ、アロイーズ・ソヴァー
ジュ、ダニエル・パラ
＊新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町ほかにて全国公開
ホームページ http://aiotsuzuru.com/
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＜ストーリー＞
1950年代、南仏プロヴァンスの田舎町。美しい娘ガブリエル（マリオン・コテ
ィヤール）は、情熱的な運命の愛を求めるが、思いを寄せる地元の教師に相手
にされずエキセントリックな振る舞いで周囲を困惑させる。まもなく、母が決
めた無骨で正直者のスペイン人労働者ジョゼ（アレックス・ブレンデミュー
ル）との不本意な結婚を受け入れ、愛のない結婚生活を送る。そんなある日、
腎臓結石が発覚し、アルプスの療養所で温泉治療を受けることになったガブリ
エルは、インドシナ戦争で負傷した若い帰還兵アンドレ・ソヴァージュ（ル
イ・ガレル）と運命的な出会いをするのだが……。
＜レビュー＞
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不倫ドラマから究極の愛のドラマへ
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ミレーナ・アグスの小説『祖母の手帖』の映画化です。ドラマの幕開けは謎め
いています。タクシーに乗る両親と息子。息子はこれからピアノコンクールに
出るようです。ところが、たまたま住居表示を見た母親は、突然タクシーを降
りて「先に行って」と告げます。いったい、その場所に何があるのでしょうか。
そこから時間をさかのぼって1950年代へ。南仏プロヴァンスの田舎町に住む美
しい娘ガブリエルは、小説『嵐が丘』を読んで心をときめかせるなど情熱的な
運命の愛を求めています。しかし、思いを寄せる地元の教師に相手にされず、
彼女はブチ切れて突拍子もない行動に出ます。
ガブリエルは精神的に不安定なところがあり、エキセントリックな振る舞いで
周囲を困惑させ、両親から疎まれていたのです。
そんな中、母親はガブリエルに気があるらしいスペイン人労働者ジョゼに、娘
と結婚してくれるように頼みます。いわば厄介払いというわけです。
そんな事情を知りつつも、母親から"結婚か、精神病院か"と迫られたこともあ
り、ガブリエルは不本意な結婚を受け入れます。ジョゼは無骨で正直者で戦争
で苦労していたましたが、ガブリエルにとってはよく知らない男。だから彼女
は、「あなたを絶対に愛さない」とジョゼに告げて結婚します。
やがてガブリエルは、流産をきっかけに腎臓結石の持病が発覚し、医師からア
ルプスの療養所で温泉治療を勧められます。そこで彼女は運命的な出会いを果
たします。
相手は、インドシナ戦争で負傷した若い帰還兵アンドレ。ジョゼとは対照的に、
知的な雰囲気を漂わせ、しかも死の影に取りつかれています。そんなアンドレ
に、ガブリエルはどんどんのめり込んでいきます。
ここまでは完全な不倫ドラマの趣ですが、それを下世話な話にしていないのが
主演のマリオン・コティヤールの演技です。不安定な精神状態を背景に、純愛
を貫きつつも、危うさやもろさをチラチラと見せるガブリエルを巧みに演じて
います。ほんの少しの表情の変化で彼女の心理を示すあたりは、さすがにオス
カー女優です。
アンドレを運命の相手と確信し、激しい愛へと溺れていくガブリエル。そのハ
イライトは2人の濡れ場です。ジョゼとの濡れ場がいかにも愛のない物語だった
のに対して、こちらは愛に満ちた美しい映像が描かれます。
だが、やがて2人に退院の日が訪れます。「今は一緒にいられない。その日が来
るまで手紙をやり取りしよう」というアンドレの言葉を信じて、ガブリエルは
夫の元に戻っていくのですが……。
その後、ガブリエルとアンドレはどうなったのか。冒頭のシーンに戻って明ら
かにされます。そこからは意外な仕掛けが用意されています。実は、ジョゼは
ガブリエルとアンドレの関係に関して、ある秘密を持っていたのです。それが、
いかにも事実として描かれていたガブリエルの記憶までをも揺るがせるのです。
最後まで観れば不倫ドラマが究極の愛のドラマに転化し、マジメではあるもの
のサエない男だったジョゼに対する印象が、まったく違って見えてくるのでし
た。不倫ドラマと侮るなかれ。なかなか観応えのある愛のドラマでした。
≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
（87点）
（田中ひろあき）
〔鑑賞データ〕
2017年10月9日（月・祝）ヒューマントラストシネマ有楽町にて。午後12時25分
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