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雨の日は会えない、晴れた日は君を想う（DEMOLITION）
（2015年 アメリカ）（上映時間1時間41分）
監督：ジャン＝マルク・ヴァレ
出演：ジェイク・ギレンホール、ナオミ・ワッツ、クリス・クーパー、ジュ
ダ・ルイス、Ｃ・Ｊ・ウィルソン、ポリー・ドレイパー
＊新宿シネマカリテほかにて全国公開
ホームページ http://ame-hare-movie.jp/
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＜ストーリー＞
義父フィル（クリス・クーパー）の銀行で働くデイヴィス（ジェイク・ギレン
ホール）は、妻の運転する車で会社へ向かう途中で事故に遭い、妻を失ってし
まう。だが、彼は涙を流すこともできず、何の感情も湧かなかった。彼女への
愛はなかったと悟ったデイヴィスは、「心の修理も車の修理も同じだ。まず分
解して隅々まで点検し、再び組み立て直せ」というフィルの言葉を思い出して、
身の回りのあらゆる物を破壊し始める。その一方で、苦情の手紙を自販機会社
に送ったことがきっかけで、苦情処理係のシングルマザー、カレン（ナオミ・
ワッツ）とその息子クリス（ジュダ・ルイス）と交流を持つようになる……。
＜レビュー＞
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破壊行為を経て妻の死と向き合う男
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『ダラス・バイヤーズクラブ』『わたしに会うまでの1600キロ』のジャン＝マ
ルク・ヴァレ監督の映画。妻を亡くした男が再生するまでのドラマです。
映画の冒頭。主人公デイヴィスは、妻の運転する車で通勤しています。2人の会
話は何となくすれ違っています。そして次の瞬間、交通事故が起きて妻は亡く
なってしまいます。
デイヴィスは義父の銀行で働き、かなりいい暮らしをしています。しかし、妻
を亡くしても涙も出ず、彼女を愛していなかったと感じます。とくれば、これ
は西川美和監督の『永い言い訳』と同じシチュエーションですね。あちらは本
木雅弘演じる主人公が、父子家庭と関わることで再生していきます。しかし、
こちらはかなり様相が違います。
なんとデイヴィスは、「心の修理も車の修理も同じだ。まず分解して隅々まで
点検し、再び組み立て直せ」という義父の言葉を思い出して、身の回りのあら
ゆる物を破壊し始めるのです。最初は家の家電製品から。それがエスカレート
して、解体屋を手伝って他人の家を壊しまくります。
何かにとりつかれたように破壊を続ける彼の姿は、何を物語っているのでしょ
うか。おそらく義父の庇護のもとセレブな生活を送ってきたことなど、過去の
すべてが妻の死とともに厭わしいものとなり、何もかもぶち壊しくなったので
しょう。
ただし、その後はいったん破壊行為は影を潜め、壊れた自販機への苦情の手紙
を通して知り合ったシングルマザーのカレンと、彼女の息子クリスとの交流が
描かれます。2人もそれぞれに問題を抱えています。
デイヴィスの心の軌跡が明確に描かれるわけではありませんが、ところどころ
に挟まれる妻との過去などで、少しずつ何かがほぐれていく様子が伝わります。
また、カレンとクリスも少しずつ変化していきます。
そんな中、デイヴィスはクリスとともに、ついに自宅を破壊しまくります。こ
れで完全に過去を断ち切ったのか？
終盤はややバタバタした展開ですが、様々な出来事を経て、デイヴィスはつい
に心からの涙を流します。
破壊行為を描くとはいえ、実際は抑制的で丹念な描写が際立つ映画でした。正
直なところ、主人公の心は複雑で簡単に感情移入できるものではありませんが、
あと味はなかなかのものでした。最後はジンワリと感動できました。
複雑な主人公の内面を巧みに表現したジェイク・ギレンホール、そしてシング
ルマザー役のナオミ・ワッツ、彼女の息子役のジュダ・ルイス、義父役のクリ
ス・クーパーなどの役者の演技も見応えがありました。
≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
（87点）
（田中ひろあき）
〔鑑賞データ〕
2017年3月12日（日）新宿シネマカリテにて。午後1時45分の回
[「あ」のページ]
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