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アトミック・ブロンド（ATOMIC BLONDE）
●『アトミック・ブロンド』
（2017年 アメリカ）（上映時間1時間55分）
監督：デヴィッド・リーチ
出演：シャーリーズ・セロン、ジェームズ・マカヴォイ、ジョン・グッドマン、
ティル・シュヴァイガー、エディ・マーサン、ソフィア・ブテラ、ジェーム
ズ・フォークナー、ビル・スカルスガルド、サム・ハーグレイヴ、ヨハンネ
ス・ヨハネッソン、トビー・ジョーンズ
＊TOHOシネマズみゆき座ほかにて全国公開
ホームページ http://atomic-blonde.jp/
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＜ストーリー＞
冷戦末期、ベルリンの壁崩壊直前の1989年。西側に極秘情報を流そうとしてい
た英国秘密情報部"MI6"の捜査官が殺され、極秘リストが奪われてしまう。MI6
のエージェント、ローレン・ブロートン（シャーリーズ・セロン）は、極秘リ
ストの奪還と二重スパイ"サッチェル"の正体を突き止めるよう命じられベルリ
ンに降り立つ。現地で活動するスパイ、デヴィッド・パーシヴァル（ジェーム
ズ・マカヴォイ）と合流し、活動を開始したローレンだが、彼女の行動は敵側
に筒抜けとなっていた……。
＜レビュー＞
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シャーリーズ・セロンのキレキレのアクションと抜群の演技力の融合
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アントニー・ジョンソンによる人気グラフィックノベルの映画化。監督はスタ
ント畑出身で、『ジョン・ウィック』では共同監督を務め、『デッドプール』
続編の監督にも抜擢されたデヴィッド・リーチ。
冷戦末期、1989年のベルリンからドラマがスタート。英国秘密情報部"MI6"の捜
査官が殺され、極秘リストが奪われます。そのリストには西側のスパイの名が
記されており、それが東側に渡ってしまえば大変なことになります。
そこでMI6のエージェント、ローレン・ブロートンは、極秘リストの奪還と二重
スパイ"サッチェル"の正体を突き止めるよう命じられベルリンへ向かいます。
ところが、彼女はそこで大変な目に遭い、体中にあざを作った痛々しい姿で帰
国。いったいベルリンで何があったのか。上司たちの尋問に応じて、ローレン
はベルリンで起きた出来事を話し始めます。
ローレンは、現地で活動するスパイ、デヴィッド・パーシヴァルと合流し、活
動を開始。しかし、彼はかなりのくせ者でローレンを翻弄します。おまけに
ローレンを尾行する謎の女や、リストのネタ元の東側の役人など、いかにも怪
しげな人物が現れて混乱が深まります。そんな中、ローレンの行動は敵側に筒
抜けとなり、彼女は何度も命を狙われるのです。
ベルリンの壁崩壊前夜を背景に、誰が敵で誰が味方なのか全くわからない展開
が続き、ドラマが二転三転します。イギリス、フランス、アメリカ、ソ連のス
パイが暗躍し、裏切りのゲームを繰り広げます。それが破格のスリリングさを
生んでいます。
映像も素晴らしい。グラフィックノベルの映画化らしい独特の暗めの世界観の
中、ポップでテンポの良い映像が続きます。ニュー・オーダー、デビッド・ボ
ウイ、ザ・クラッシュなど懐かしめの音楽も場面ごとにふさわしい形で使われ、
場を盛り上げています。
とはいえ、この映画で最大の見せ場は何といっても、シャーリーズ・セロンの
演技。全身あざだらけの体を氷をはったバスタブに沈める登場シーンから存在
感がたっぷり。次々に襲いくる敵とのバトルアクションもキレまくっています。
タルコフスキーの名画『ストーカー』が上映されている映画館でのバトルなど
も印象深いもの。カーチェイスや、水中に突き落とされた車からの脱出シーン
などもあります。
そしてクライマックスは、ベルリンの壁崩壊のまさにその時。群衆に紛れて決
死の脱出劇に臨むローレン。しかし、またしても敵側に情報が漏れ敵に襲われ
ます。そこでビルの中で繰り広げられるバトルが圧巻。手近な武器を使って敵
をなぎ倒していきます。そのバトルにウソ臭さはありません。そこからリアル
な痛みさえ伝わってきます。相当なトレーニングをしたであろうシャーリーズ
のリアルな動きとカメラワークが、観客の目をくぎ付けにします。
このドラマの最大の謎は、二重スパイ"サッチェル"の正体は誰かというところ。
それに関して、いったんは予想通りの結論を提示しつつ、後日談では意外な真
相で度肝を抜きます。しかも、最後の最後で、それがまた見事にひっくり返さ
れるのです。
こうしてローレンという女スパイの全貌がついに明らかになることで、それま
での彼女の一挙手一投足に違った意味が見えてきます。自らの真の使命と
目の前で起きていることとのギャップに戸惑いつつも、自らを奮い立たせて前
に進んでいたローレン。要するに、この映画はただのアクションだけの映画
ではなかったのです。そこには、間違いなく彼女の明確な心情が刻まれてい
ます。
そのシャーリーズの抜群の存在感に加え、ジェームズ・マカヴォイら脇役の好
演も光ります。文句なしに、一級品のスパイ・アクション映画です。
≪ぽちの満足度≫
★★★★☆
（90点）
（田中ひろあき）
〔鑑賞データ〕
2017年10月21日（土）池袋HUMAXシネマズにて。午後1時30分の回
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