ベイビー・ドライバー(BABY DRIVER)


(2017年 アメリカ)(上映時間1時間53分)
監督・脚本:エドガー・ライト
出演:アンセル・エルゴート、ケヴィン・スペイシー、リリー・ジェームズ、
エイザ・ゴンザレス、ジョン・ハム、ジェイミー・フォックス、ジョン・バー
ンサル、CJ・ジョーンズ、フリー、スカイ・フェレイラ、ラニー・ジューン、
ビッグ・ボーイ、キラー・マイク、ポール・ウィリアムズ、ヴィヴィアナ・チ
ャベス、ブローガン・ホール、ウォルター・ヒル
*新宿バルト9ほかにて全国公開
ホームページ http://www.babydriver.jp/
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<ストーリー>
天才的なドライビング・テクニックで犯罪者の逃走を手助けする「逃がし屋」
のベイビー(アンセル・エルゴート)。幼い頃の事故で両親を亡くし、自身も
その後遺症で耳鳴りに悩まされているが、音楽を聞くことで耳鳴りは消える。
そのためiPodが手放せず、常にお気に入りのプレイリストを聴き続けていた。
そんなある日、ベイビーはウェイトレスのデボラ(リリー・ジェームズ)と出
会い、恋に落ちる。そして彼女のために、この世界から足を洗おうと決意する
のだが……。

<レビュー>
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音楽全開で描く天才ドライバーによるカーアクション
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犯罪者の逃走を請け負うドライバーの話は、これまでも何度か映画に登場して
います。そんな中、この映画のユニークなところは、主人公のベイビーという
青年が常に音楽を聞いているところ。幼い頃の事故で両親を亡くし、自身もそ
の後遺症で耳鳴りに悩まされているものの、音楽を聞くことで耳鳴りは消えま
す。

というわけで、冒頭の銀行強盗の場面からノリノリの音楽が全開です。ベイ
ビーは強盗が犯行を行っている間、音楽に合わせて全身でリズムを取り、体を
動かします。それがまるでミュージカルのような雰囲気を漂わせます。

そして犯行を終えた犯人たちが乗り込んでくると、音楽を聞きながら天才的な
ドライビング・テクニックを駆使して、警察などの追手をかいくぐって逃走し
ます。そこでは当然ながら、スリリングで迫力満点のカーアクションが展開さ
れるわけです。これがこの映画の最大の魅力です。

ドラマ的に感心するのは、ベイビーのキャラを最初のほうで簡潔に見せている
ところ。両親の事故のトラウマなどもあり、犯罪の片棒を担ぎつつも、彼が根
っからのワルでないことが何度も示されます。

では、なぜ彼はこんな仕事をしているのか。実はもっと若い頃に自動車泥棒を
して、間違って、そこに積んであったギャングの麻薬を盗んでしまったのです。
そのため、ギャングのボスのドクに借金を背負わされ、その返済のために無理
やり働かされています。それでも、ドクからは「あと1回手伝えば借金完済」と
言われています。

そんなある日、ベイビーはダイナーのウェイトレスのデボラと偶然出会い、恋
に落ちます。ベイビーは彼女のために、この世界から足を洗うこと決意するの
ですが……。

ちなみに全編に流れる音楽は、少し古めの音楽が中心。なにせエドガー・ライ
ト監督は映画や音楽のオタク。『ホット・ファズ 俺たちスーパーポリスメ
ン!』『ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!』などの過去作でも、
オタクぶりをいかんなく発揮してきた監督です。

さてさて、ついに最後の仕事を終えたベイビー。これで晴れて足を洗えると思
ったのですが、ドクは脅迫まがいの言葉でさらなる犯罪への加担を強要します。

そこから先はすさまじい展開。カーアクションに加え、ガンアクション、爆破
シーンなどいろんなものがテンコ盛り。二転三転する展開で観客を飽きさせま
せん。いったん死んだと思った男が何度も登場するなど、ある意味何でもアリ
の世界です。

まあ、このへんは個人的にはやりすぎにも思えます。過去の作品でもライト監
督は、ありとあらゆるものを詰め込んでいましたが、今回はさらにギュウギュ
ウ詰めの感がぬぐえません。

とはいえ、ラストのオチはなかなかのもの。ちゃんとベイビーに落とし前をつ
けさせて、その上で温かな余韻を残してくれました。

そしてエンドタイトルで流れるサイモン&ガーファンクルの「ベイビー・ドラ
イバー」。やっぱりオタクだよなぁ。ライト監督。もしかし『ベイビー・ドラ
イバー』ってタイトルも、ここから取ったんじゃないの?

主演のアンセル・エルゴートは初めて見ましたが、この役にはぴったりでした。
デボラ役のリリー・ジェームズも魅力的。さらにケヴィン・スペイシー、エイ
ザ・ゴンザレス、ジョン・ハム、ジェイミー・フォックスなどの悪役のくせ者
ぶりも見事です。

≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆(+1/2★)
(86点)
                            (田中ひろあき)

〔鑑賞データ〕
2017年8月29日(火)新宿バトル9にて。午後7時20分の回


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