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ブランカとギター弾き（BLANKA）
（2015年 イタリア）（上映時間1時間17分）
監督・脚本：長谷井宏紀
出演：サイデル・ガブテロ、ピーター・ミラリ、ジョマル・ビスヨ、レイモン
ド・カマチョ
＊シネスイッチ銀座ほかにて公開。全国順次公開
ホームページ http://www.transformer.co.jp/m/blanka/
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＜ストーリー＞
フィリピン・マニラの路上で窃盗や物乞いをしながら暮らす孤児の少女ブラン
カ（サイデル・ガブテロ）は、ある日、テレビで、有名な女優が自分と同じ境
遇の子供を養子に迎えたニュースを見て、「お母さんをお金で買う」というア
イデアを思いつく。そんな中、盲目のギター弾きピーター（ピーター・ミラ
リ）と出会ったブランカは、彼と一緒に旅に出る。旅先で、"3万ペソで母親を
買います"というビラを街中に配り始め、お金の工面に奔走するブランカ。一方、
ピーターはブランカに歌でお金を稼ぐことを教える。2人はレストランで演奏す
る仕事を得てお金を稼ぎ、ブランカの計画は順調に進むように見えたのだが…
…。
＜レビュー＞
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少女と盲目のギター弾きの交流が心にしみる
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元は写真家だという長谷井宏紀監督が、ヴェネツィア・ビエンナーレとヴェネ
ツィア国際映画祭の全額出資のもとで製作したイタリア映画。
ただし、舞台はフィリピンのスラム街。主人公のブランカは、マニラの路上で
窃盗や物乞いをしながら暮らす孤児の少女です。ある日、彼女はテレビで、有
名な女優が自分と同じ境遇の子供を養子に迎えたニュースを見た中年男が、
「あの女優いい女だな。金があれば買うのに」と言ったのを真に受けて、「お
母さんをお金で買う」というアイデアを思いつきます。
ブランカはその少し前に、路上でギターを弾く盲目の老人ピーターと知り合い
ます。そして、孤児仲間の少年達から意地悪をされて、ダンボールハウスを壊
されて途方に暮れたことから、ブランカはピーターを誘って一緒に旅に出ます。
ブランカは旅先で、"3万ペソで母親を買います"というビラを街中に配り始め、
お金を工面しようとします。一方、ピーターはブランカに歌でお金を稼ぐこと
を教えます。まもなく2人はレストランで演奏する仕事を得てお金を稼ぎ、ブラ
ンカの計画は順調に進むように見えるのですが……。
この映画の魅力は、何といってもブランカとピーターの交流にあります。ブラ
ンカ役のサイデル・ガブテロは、YouTubeで披露した歌声がプロデューサーの目
に止まって本作で女優デビュー。撮影時はわずか11歳だったそうですが、その
生き生きとした演技と抜群の存在感が実に魅力的です。
それに対してピーター役のピーター・ミラリは、本物の流しのミュージシャン。
おおらかで温かな人柄がにじみ出る演技で、ブランカを優しく包んでいます。
ちなみに、彼は映画完成後に亡くなったそうです。それを考えれば、なおさら
感慨深い演技です。
この2人の化学反応が、スクリーンに独特の空気感を立ち昇らせています。ブラ
ンカが「盲目なのに夢を見るの？」と尋ねたのに対して、ピーターが「もちろ
んさ。触ったものが夢になる」と答えると、ブランカが自分の顔を触らせて、
「これで夢に出られるね」と告げるシーンなどは、ブランカの健気さが心にし
みて素直に感動してしまいます。
それ以外にも、「みんな目が見えなければ戦争なんてないのに」というピー
ターのつぶやきや、「どうして金持ちと貧乏がいるの？」という孤児の素朴な
疑問など、含蓄に富んだセリフがそこかしこにあって、ドラマに深みを与えて
います。
孤児たちやトランスジェンダーの人たちなど、脇役にしっかりした存在感があ
るのも、この映画の魅力。そのほとんどは現地でスカウトしたようですが、自
然で地に足の着いた演技です。
後半、せっかく順調に歩み始めたブランカたちですが、ある罠に引っかかり、
再び苦境に陥ります。その後、ブランカは街の孤児と行動をともにし、それが
きっかけで彼女の身に危険が及びます。
このあたりのドラマの背景には、貧困や人身売買などのフィリピンの負の側面
も描き込まれています。社会派の映画ではないから、正攻法から取り上げてい
るわけではないのですが、それでも長谷井監督が地元に根を下ろしてこの映画
を撮ったことがうかがえます。
クライマックスでは、ブランカとピーターの絆が再確認され、ラストでもう一
度、それを強く印象付けます。その時に映るブランカの表情が絶品。この表情
の輝きだけで、観客はきっと幸せな気分で映画館を後にできるでしょう。この
表情だけでも観る価値のある映画だと思いました。
≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
（87点）
（田中ひろあき）
〔鑑賞データ〕
2017年8月13日（日）シネスイッチ銀座にて。午後2時50分の回
[「ふ」のページ]
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