ブルーム・オブ・イエスタディ(DIE BLUMEN VON GESTERN)


(2016年 ドイツ・オーストリア)(上映時間2時間6分)
監督・脚本:クリス・クラウス
出演:ラース・アイディンガー、アデル・エネル、ヤン・ヨーゼフ・リーフ
ァース、ハンナー・ヘルツシュプルンク、ジークリット・マルクァルト、ビビ
アーネ・ツェラー、ロルフ・ホッペ、イファ・ルーバオ、ハンス=ヨヘン・ヴ
ァークナー
*Bunkamura ル・シネマほかにて公開。全国順次公開
ホームページ http://bloom-of-yesterday.com/
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<ストーリー>
ナチス親衛隊の大佐を祖父に持つトト(ラース・アイディンガー)は、その罪
と向き合うためにホロコースト研究者として活動していた。だが、勤務する研
究所で2年も準備に費やした「アウシュヴィッツ会議」のリーダーを外されてし
まう。そんな中、研究所に研究生として、祖母がナチスの犠牲者だというユダ
ヤ人のザジ(アデル・エネル)がフランスからやってくる。対照的な過去を背
負う2人は、アウシュヴィッツ会議を成功させるために奔走するのだが……。

<レビュー>
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ホロコーストの加害者と被害者の子孫による異色のラブストーリー
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第29回東京国際映画祭のコンペティション部門で最高賞の東京グランプリおよ
びWOWOW賞を受賞した作品。ナチス親衛隊の大佐を祖父に持つ中年男と、祖母が
ナチスの犠牲者である若い女との屈折しまくりのラブストーリーです。

ナチス親衛隊の大佐を祖父に持つトトは、その罪と向き合うためにホロコース
ト研究者として活動していました。しかし、勤務する研究所で2年も準備に費や
した「アウシュヴィッツ会議」のリーダーを外されてしまいます。

冒頭では、そのトトが新たなリーダーの方針に納得できずにブチ切れ、悪態を
つき、ボコボコにしてしまいます。しかも、彼がブチ切れている間に、その研
究所の責任者の教授が急死します。

トトがそんな不安定な状態に置かれている背景には、やはり祖父の存在があり
ます。忌まわしい一族の罪をぬぐうために、ホロコースト研究に没頭するトト
ですが、そこには様々な困難が伴います。それが原因なのかはともかく、彼は
インポテンツで、妻が他の男と関係を持つことを公認しています。

そんな中、研究所に若い女性のザジがフランスからやってきます。彼女の祖母
はナチスの犠牲者のユダヤ人。そして、このザジも登場した最初の頃からトト
に悪態をつくなど、精神的にかなりイカレています。

その背景には、やはり祖母の存在があります。トトが迎えに来た車が、かつて
祖母を殺害されたトラックと同じメーカーのものだと聞いて激高するザジ。そ
の後、トトの車に同乗した時には、突然ブチ切れて彼が連れていた犬を窓から
放り投げてしまいます。

ホロコーストの被害者と加害者という正反対の過去を背負うと同時に、その過
去の呪縛にとらわれて精神的にやばい状態にあるという共通点を持つトトとザ
ジ。2人はアウシュヴィッツ会議の成功のために、その鍵を握るホロコースト体
験者の老女優の参加を促すために奔走します……。

そうしたドラマを重苦しく描くわけではありません。あまりにもエキセントリ
ックな2人の言動などで、毒気の強い笑いを振りまいています。

トトとザジは衝突しながらも、少しずつ距離を縮めていきます。ところが、実
はトトの祖父とザジの祖母に関して重大な秘密が明らかになります。それでも、
ついに2人は関係を持ってしまいます。

この一件を通して、「加害者と被害者が過去を乗り越えるにはどうすればいい
のか?」「それは両者が過去の歴史を共有するところからしか始まれないので
はないか?」というクラウス監督の明確なテーマが浮上してきます。

まあ、それをインポの克服というところに落とし込んでいるのが、いかにもこ
の映画らしいのですが。

ただし、それでドラマは終わりません。トト自身の過去に関しても大きな秘密
が明らかになります。それを知ったザジは大きな決意をします。

というわけで、次々に登場するホロコースト映画の中でも、かなり異色の作品
です。ラブストーリーとはいえアクが強いので、好みは分かれそうですが、一
見の価値はあります。

≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆(+1/2★)
(88点)
                                                             (田中ひろあき)

〔鑑賞データ〕
2017年10月4日(水)Bunkamura ル・シネマ1にて。午後1時5分の回


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