沈黙 -サイレンス-(SILENCE)


(2016年 アメリカ)(上映時間2時間42分)
監督:マーティン・スコセッシ
出演:アンドリュー・ガーフィールド、アダム・ドライヴァー、浅野忠信、キ
アラン・ハインズ、窪塚洋介、笈田ヨシ、塚本晋也、イッセー尾形、小松菜奈、
加瀬亮、リーアム・ニーソン
*TOHOシネマズスカラ座ほかにて全国公開
ホームページ http://chinmoku.jp/
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<ストーリー>
17世紀、キリシタン弾圧が激しさを増す江戸初期。日本で布教活動を行ってい
たポルトガル人宣教師フェレイラ(リーアム・ニーソン)が、幕府の拷問に屈
して棄教したとの知らせがローマに届く。弟子のロドリゴ(アンドリュー・
ガーフィールド)とガルペ(アダム・ドライヴァー)はフェレイラの消息をつ
かむため日本へ行くことを決意し、マカオで出会った日本人キチジロー(窪塚
洋介)の手引きで長崎の隠れキリシタンの村に潜入する。村人たちにかくまわ
れて、彼らの支えになっていくのだが……。

<レビュー>
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極限状態の人間を描くスコセッシ監督渾身の一作
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遠藤周作の小説『沈黙』をマーティン・スコセッシ監督が映画化しました。

冒頭は日本でキリスト教の宣教師たちが、残虐な拷問を受けるシーン。江戸初
期の当時の日本では、キリスト教が弾圧されていたのです。そして、その場面
を見ているのがポルトガル人宣教師フェレイラ。

続いて舞台はローマに移ります、フェレイラが幕府の拷問によって棄教したと
いう知らせが届きます。弟子のロドリゴとガルペは、それが信じられず、真相
をつかむために日本に渡ることを決意します。そして、マカオで知り合った怪
しげな日本人のキチジローの手引きで日本に渡ります。

というわけで、前半で描かれるのは日本に渡ったロドリゴとガルペの苦難の
日々。最初は長崎の隠れキリシタンの村の人々にかくまわれて、彼らの支えに
なります。しかし、不自由な潜伏生活が続き、肝心のフェレイラの消息はまっ
たくわかりません。そんな中、村人に対して長崎奉行・井上筑後守の厳しい追
及の手が迫ります。

雄大な大自然を背景に、過酷な運命を前にしながら、それでも信仰を貫く人々
の姿が印象的です。彼らの信仰は本来のものとは微妙に違っていたりするので
すが、それでもその思いはホンモノ。それゆえロドリゴたちも心を動かされる
わけです。

その後、ロドリゴはキチジローの裏切りによってお上にとらわれ、井上筑後守
から棄教を迫られます。井上はロドリゴを責め立てるのではなく、隠れキリシ
タンたちに拷問を加えます。「お前のせいでキリシタンが苦しむのだ。彼らを
救うために棄教しろ」というわけです。

これでもかと加えられる拷問。次々に犠牲になる人々。自分が犠牲になるのは
いとわないロドリゴですが、人々が犠牲になることには耐えられません。そこ
に激しい葛藤が生まれます。いったい正しい道とは何なのか。

しかもそうした状況にもかかわらず、ロドリゴが信じる神は何もしてくれず、
沈黙を続けているように見えます、独白を中心に吐露されるその苦しみが、観
客にもリアルに伝わります。基本は信仰をめぐるお話ではあるものの、それを
越えて極限状態に追い込まれた人間の生き様に圧倒されます。そして観客にも
厳しい問いが投げかけられます「あなたならどうするのか?」と。

終盤ではフェレイラの消息がわかり、さらにロドリゴの後日談が描かれます。
ラストにほんのチラリと示される彼の本当の心の内のようなものが、大きな余
韻を残してドラマが終わります。

28年前に原作と出会ってから、ずっと映画化したいと思ってきたというだけに、
スコセッシ監督の気迫と熱量がひしひしと伝わってくる映画です。2時間42分と
いう長尺ですが、まったく長く感じませんでした。密度の濃い映画で観応え十
分です。

≪ぽちの満足度≫
★★★★☆(+1/2★)
(95点)
                            (田中ひろあき)

〔鑑賞データ〕
2017年1月21日(土)ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後3時30分の回


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