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ダンケルク（DUNKIRK）
（2017年 アメリカ）（上映時間1時間46分）
監督・脚本・製作：クリストファー・ノーラン
出演：フィオン・ホワイトヘッド、トム・グリン＝カーニー、ジャック・ロウ
デン、ハリー・スタイルズ、アナイリン・バーナード、ジェームズ・ダーシー、
バリー・コーガン、ケネス・ブラナー、キリアン・マーフィ、マーク・ライラ
ンス、トム・ハーディ、マイケル・フォックス、ジョン・ノーラン
＊丸の内ピカデリーほかにて全国公開
ホームページ http://wwws.warnerbros.co.jp/dunkirk/
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＜ストーリー＞
1940年、フランス北端の港町ダンケルク。英仏連合軍40万の兵士たちはドイツ
軍に追い詰められる。若き英国兵トミー（フィオン・ホワイトヘッド）が街中
を必死で逃げ回り海岸にたどり着くと、そこには多数の兵士たちが救助の船を
待っていた。そんな中、イギリス首相チャーチルは、民間の船まで総動員した
救出作戦を敢行する。それに呼応して、民間船の船長ミスター・ドーソン
（マーク・ライランス）は、息子とともにダンケルクに向かう。一方、戦闘機
スピットファイアのパイロット、ファリアー（トム・ハーディ）も味方の撤退
を援護すべく飛び立つのだが……。
＜レビュー＞
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3つの視点から迫力の臨場感で描く史上に残る撤退戦
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第二次世界大戦で、どんどん侵攻するドイツ軍によって、英仏連合軍の兵士40
万人がフランス北端のダンケルクに追い詰められてしまいます。そこでイギリ
ス首相のチャーチルは、彼らを救出する決死のダイナモ作戦を発動します。そ
の結果、兵士の犠牲を最小限に抑えることに成功し、その後の戦局に大きな影
響を与えました。
その史実を『ダークナイト』『インセプション』のクリストファー・ノーラン
監督が映画化しました。
まずスタートは街の中。若き英国兵トミー（フィオン・ホワイトヘッド）が街
中を必死で逃げ回ります。しかし、突然の銃撃で仲間はバタバタと死んでいき
ます。ようやく海岸にたどり着いたトミー。そこには多数の兵士たちが救助の
船を待っていました。
ここからトミー目線でのドラマが続くのが普通の映画。しかし、ノーラン監督
はそんな普通のことはしません。トミーたち浜辺の兵士のドラマ、空中戦に飛
び立ったイギリス空軍のパイロットのドラマ、そして軍に徴用されてダンケル
クに向かうイギリスの民間船（それもほとんどが小さな船）のドラマという3つ
の要素を並行して描きます。
それも3つの要素は時間軸が違います。浜辺の出来事は1週間、民間船は1日、空
軍パイロットは1時間。それを巧みに絡ませて描くのは並大抵のことではありま
せん。記憶が短時間しか持たない男を描いた出世作『メメント』で、時間軸を
解体して再構成して見せたノーラン監督らしい構成と言えるでしょう。
それが破格のスリルを生み出しています。最初から最後まで緊張感がまったく
途切れません。3つの要素とも「ヤバイ！」場面の連続でハラハラドキドキが続
きます。
浜辺の兵士たちは船に乗り込んで逃げようとするものの、敵の銃撃によって船
が沈みます。一方、空軍パイロットの戦いでは敵機を見事に撃墜するものの、
自分たちも銃撃されて不時着を余儀なくされます。また、民間船では途中で行
き場をなくしていた一人の兵士を救うのですが、敵の攻撃でトラウマを負って
いた彼が大暴れしたために、大変なことになってしまいます。
そんな3つの視点の様々なドラマを、絶妙に組み合わせて見せるのですから、こ
れが面白くないわけがありません。
これだけの大規模なスケールのアクションなのに、極力ＣＧを使わずにＩＭＡ
Ｘフィルムカメラなどを駆使して実写で撮っているというのも驚きです。兵士
たちが乗り込んだ船が魚雷に砲撃されて沈没するシーンも、ほぼ実写で撮った
とか。ドイツ軍戦闘機との空中戦も、実際にコックピットにカメラを取り付け
て撮影したというのだから、ある意味常軌を逸しています。
おなじみのハンス・ジマーによる音楽（というかサウンドといったほうがいい
かも）も、破格の緊迫感を煽ります。そんなわけで、観客はまるで自分も戦場
にいるような臨場感に叩き込まれてしまうのでした。
戦場を舞台にしているだけに、戦争の様々な側面も見えてきます。とはいえ、
戦争の本質に迫っているわけではありません。ノーラン監督自身にも、そうい
う意図はない模様。瀬戸際に追いやられた人間の姿をスリリングに描くことに
専心しているのでしょう。
これといった人間ドラマもないため、役者は目立ちにくい映画ですが、それで
も名優ケネス・ブラナーをはじめ、キリアン・マーフィ、マーク・ライランス、
トム・ハーディあたりが、さすがの存在感を発揮しています。新人のフィオ
ン・ホワイトヘッドもなかなかの演技でした。
≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆（1/2★）
（89点）
（田中ひろあき）
〔鑑賞データ〕
2017年9月20日（水）TOHOシネマズ日本橋にて。午後7時15分の回
[「た」のページ]
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