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アイヒマンを追え！ ナチスがもっとも畏れた男
（DER STAAT GEGEN FRITZ BAUER）
（2016年 ドイツ）（上映時間1時間45分）
監督：ラース・クラウメ
出演：ブルクハルト・クラウスナー、ロナルト・ツェアフェルト、リリト・シ
ュタンゲンベルク、イョルク・シュッタオフ、ゼバスティアン・ブロンベルク、
ミヒャエル・シェンク、ルーディガー・クリンク、ローラ・トンケ、ゲッツ・
シューベルト、ダニー・レヴィ、ロバート・アツォーン
＊Bunkamuraル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほかにて全国公開
ホームページ http://eichmann-vs-bauer.com/
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＜ストーリー＞
1950年代後半のドイツ・フランクフルト。戦争の記憶が風化しつつある中で、
ナチス戦犯の告発に執念を燃やす検事長フリッツ・バウアー（ブルクハルト・
クラウスナー）。ある日、彼のもとに逃亡中のナチス親衛隊中佐アイヒマンが
偽名でアルゼンチンに潜伏しているとの手紙が届く。アイヒマンの罪を裁くた
め、国家反逆罪に問われる危険を冒して情報をモサド（イスラエル諜報特務
庁）に提供するバウアー。部下のカール検事（ロナルト・ツェアフェルト）と
ともに証拠固めを進めるが、周囲にはナチスの残党が目を光らせており、激し
い妨害や圧力にさらされる……。
＜レビュー＞
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ナチスの戦犯を追い詰める検事長をスリリングに描く
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ナチスでユダヤ人虐殺の中心的役割を担ったアイヒマンが、1960年に潜伏先の
アルゼンチンでイスラエルの諜報機関モサドに拘束され、エルサレムの法廷で
死刑宣告されたというのは有名なお話。それに関する映画も何本か作られてい
ます。しかし、その裏で意外なドイツ人が活躍していたというのは、まったく
知りませんでした。
その人物とは、検事長のフリッツ・バウアー。舞台は1950年代後半のドイツ・
フランクフルト。経済復興が進む一方、戦争の記憶が風化しつつある中で、バ
ウアーはナチス戦犯の告発に執念を燃やします。そんな彼のもとにアイヒマン
がアルゼンチンに潜伏していると告げる手紙が届きます。バウアーは、その情
報をモサド（イスラエル諜報特務庁）に提供します。
それは国家反逆罪に問われかねない行為。それでもバウアーがモサドに接触し
たのは、ドイツでは捜査当局をはじめあちこちにナチスの残党がいて、思うよ
うに事態が進まないと見たため。実際に、彼らはバウアーの捜査をあの手この
手で妨害します。アイヒマンが捕まれば、自分たちの戦争中の悪事も露見する
危険性があるからです。それでもバウアーは、部下のカール検事とともに、モ
サドを動かすために証拠固めを進めます。
史実をもとにしたドラマですが、意外にエンタメ性が高いのが特徴。数々の妨
害や脅迫をものともせず、頑固一徹で遮二無二前進しようとするバウアー。し
かし、周囲にはあちこちに敵対勢力が存在します。極秘情報がなぜか彼らに漏
れてしまい、今度は逆にそれを利用して敵を欺くなど、敵対勢力との虚々実々
の駆け引きが展開します。普通のサスペンスとしてもスリリングで面白い映画
です。
実はバウアーは当時はタブーとされた同性愛者で、部下のカール検事も同じく
同性愛者。その設定を生かした仕掛けで、ドラマに波乱を起こすところなども
見応えがあります。とはいえ、上司と部下が二人とも同性愛者なんて、そんな
偶然があるのだろうか？ と思ったら、どうやらカール検事はこの映画のため
に創作した架空の人物のようです。つまり、史実をベースにしつつも、あらゆ
る手段で観客を楽しませているわけです。
ただし、さすがにナチスを扱った映画だけに、ただのエンタメでは終わりませ
ん。バウアーはユダヤ人で、一見、復讐心からナチスを追っているかのように
も見えます。しかし、映画を観ているうちにそうではなくて、とにかく正義を
追及したいのだということがわかってきます。それは過去の歴史としっかり向
き合うことでしか、本当の再生はできないという信念に基づく行動でもありま
す。
その証拠にバウアーは、アイヒマンを捕まえるだけでなく、ドイツで裁判を受
けさせてすべての真実を明らかにしようとします。その努力はけっして無駄に
ならなかったことが、映画の最後で示されます。
この映画で描かれたことは、日本にも無縁ではないと思います。はたして日本
は、かつての戦争ときちんと向き合ったのでしょうか。妥協やごまかしを許さ
ずナチスを追うバウアーのような人物が日本にもいたら……と思わず考えてし
まいました。
≪ぽちの満足度≫
★★★★☆
（90点）
（田中ひろあき）
〔鑑賞データ〕
2017年1月7日（土）ヒューマントラストシネマ有楽町にて。午後12時5分の回
[「あ」のページ]
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