|
エンドレス・ポエトリー（POESIA SIN FIN）
（2016年 フランス・チリ・日本）（上映時間2時間8分）
監督・脚本・製作：アレハンドロ・ホドロフスキー
出演：アダン・ホドロフスキー、パメラ・フローレス、ブロンティス・ホドロ
フスキー、レアンドロ・タウブ、アレハンドロ・ホドロフスキー、イェレミア
ス・ハースコヴィッツ
＊新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほかにて公開。全国
順次公開
ホームページ http://uplink.co.jp/endless
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
＜ストーリー＞
故郷トコピージャから首都サンティアゴへ移住したホドロフスキー一家。青年
アレハンドロ（アダン・ホドロフスキー）は、抑圧的な父に反発して家を飛び
出し、芸術家姉妹の家に転がり込む。そこで個性あふれる若きアーティストた
ちと交流を重ね、自らも詩人として生きていこうとするのだが……。
＜レビュー＞
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
強烈な映像で綴るホドロフスキーの自伝的映画
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
『エル・トポ』『ホーリー・マウンテン』などでカルト的な人気を持つアレハ
ンドロ・ホドロフスキー監督。70年代に超大作『デューン／砂の惑星』の監督
に抜擢されたものの、トラブルで降板したエピソードでも有名です。
今年88歳になったホドロフスキー監督の新作は、自伝的作品だった前作『リア
リティのダンス』の続編です。今回は、青年時代の自身を描いています。
チリで故郷のトコピージャから首都サンティアゴへ移住したホドロフスキー一
家。しかし、アレハンドロは、抑圧的で金儲けのことばかり考え、文学を理解
しようとしない父親に反発して家を出ます。親戚の同性愛の青年から、芸術家
姉妹を紹介されたアレハンドロは、彼女たちの家に住み着き、そこに訪れる個
性的な芸術家たちと触れ合います。その中で、後に世界的な詩人となるエンリ
ケ・リンやニカノール・パラらとも出会います。
ストーリー的には典型的な青春物語です。青春の輝き、苦悩、友情、裏切り、
そして成長がスクリーンに映し出されます。しかし、目の前に現れるのは、お
よそ現実とは思えない妖しく、美しく、不可思議な人物や出来事ばかり。アレ
ハンドロの母親がオペラのような歌でしか会話しなかったり、歌舞伎の黒衣の
ような黒装束の人物が登場人物から物を受け取ったり、渡したりするのは『リ
アリティのダンス』でもおなじみの光景。
芸術家姉妹の家に来る芸術家たちも個性揃いです。常に体を密着させるダン
サーの男女、全身を使ってカンバスに色を塗りたくる画家、ピアノを破壊しな
がら演奏するピアニストなどなど。アレハンドロが恋する女詩人もすさまじい
女性です。
そうした個性的な人物たちの姿を、原色を中心にした鮮やかな色遣いの映像で
描いているのは、ウォン・カーウァイ作品などでおなじみの撮影監督クリスト
ファー・ドイル。映像美などというものを超越して、もはや夢に出てきそうな
ほど強烈な映像です。そして、笑いの要素もあちこちにあります。
主人公のアレンハンドロは、当然ながら監督自身の若き日の姿。苦悩する彼の
前に、現在のホドロフスキー監督自身が現れて、様々な含蓄に富んだ言葉を送
ります。「生きる意味などない。ただ生きるんだ！」「老いは素晴らしい。す
べてから解放されるんだ」。
ラストで、ファシズムが国を覆い始める中で、アレハンドロはパリへ旅立つこ
とを決意します。そこでの父との別れのシーンが胸を打ちます。そこには、監
督自身の過去の自分に対する痛切な思いが込められているのでしょう。
映画が、いかに自由で、何でもアリの世だかということを改めて思い知らせて
くれます。今までホドロフスキー監督の映画を観たことがない人も、一見の価
値がある作品です。
≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
（87点）
（田中ひろあき）
〔鑑賞データ〕
2017年11月19日（日）ヒューマントラストシネマ有楽町にて。午後2時45分の回
[「え」のページ]
|