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わたしは、幸福（フェリシテ）（FELICITE）
（2017年 フランス・セネガル・ベルギー・ドイツ・レバノン）（上映時間2時間9分）
監督・脚本：アラン・ゴミス
出演：ヴェロ・ツァンダ・ベヤ、ガエタン・クラウディア、パピ・ムパカ、カ
サイ・オールスターズ
＊ヒューマントラストシネマ渋谷、ヒューマントラストシネマ有楽町ほかにて
公開。全国順次公開
ホームページ http://www.moviola.jp/felicite/
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＜ストーリー＞
コンゴの首都キンシャサ。酒場で歌いながら、一人息子を育てるシングルマ
ザーのフェリシテ（ヴェロ・ツァンダ・ベヤ）。ある日、息子が交通事故に遭
い重傷を負ってしまう。手術が必要だったが、そのためには手術代を前払いす
る必要があった。必死に工面に奔走するフェリシテだったが……。
＜レビュー＞
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コンゴのシングルマザーの歌手の内面を繊細かつ幻想的に描く
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ザイールのキンシャサを舞台にしたシングルマザーの物語。監督はセネガル系
フランス人監督アラン・ゴミス。第67回ベルリン国際映画祭で銀熊賞（審査員
グランプリ）を受賞しました。
主人公はフェリシテという女性。フェリシテというのは「幸福」という意味の
ようです。しかし、名前と裏腹に幸せとは縁遠い人生。キンシャサの酒場で歌
いながら、夫と別れて一人息子を育てるシングルマザーで、お金に苦労しなが
ら日々を過ごしています。
映画の冒頭は酒場のシーン。賑やかな酔客たちの間で、フェリシテはほとんど
表情を変えません。ところが、ひとたび歌い出すとその雰囲気がまったく変わ
ります。力強い歌声を発しながら生き生きと輝いていきます。
そんな中、病院から連絡が入ります。息子が交通事故に遭って重傷を負ってし
まったというのです。医師は手術が必要だと告げます。だが、そのためには手
術代を前払いする必要があります。
フェリシテは必死で金策に走ります。酒場の客などにカンパを募ったり、別れ
た夫や親戚に金を借りに行きます。ところが、病院に行くと医師は、命の危険
があったから息子の足を切断してしまったというのです。フェリシテは絶望し
て歌が歌えなくなり、息子もショックで抜け殻のようになります。
このドラマの背景には、貧富の格差などの社会問題があります。ただし、それ
以上に印象的なのがフェリシテの内面の描写です。無表情の奥にある微妙な心
理の揺れ動きを、手持ちカメラやアップの多用によって繊細に描き出していき
ます。
フェリシテの夢などの鮮烈なイメージショットも印象に残ります。特に夜の森
の中の幻想的なシーンが秀逸です。そこに登場する不思議な生き物は、エンデ
ィング近くの酒場にも現れ、フェリシテの心情に寄り添います。
フェリシテの活力に満ちた歌と対になる形で奏でられる、現地のアマチュアに
よるオーケストラや合唱団の清らかな演奏も心にしみます。
運命に翻弄されて歌えなくなったフェリシテですが、最後には再生が訪れます。
そこで大きな役割を果たすのが、酒癖＆女癖の悪いタブーという男性の存在。
彼と接するうちに、フェリシテも息子も少しずつ心がほぐれていきます。とは
いえ、フェリシテと彼の関係はありきたりの男女関係ではありません。それで
も、2人の間には温かな空気が流れます。
主演のヴェロ・ツァンダ・ベヤは、これが初めての演技だそうですが、力強い
歌声はもちろん、多くのことを物語る眼の表情が素晴らしい演技でした。
≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
（86点）
（田中ひろあき）
〔鑑賞データ〕
2017年12月21日（木）ヒューマントラストシネマ渋谷にて。午後1時40分の回
[「わ」のページ]
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