|
ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ（THE FOUNDER）
（2016年 アメリカ）（上映時間1時間55分）
監督：ジョン・リー・ハンコック
出演：マイケル・キートン、ニック・オファーマン、ジョン・キャロル・リンチ、リンダ・カーデリーニ、パトリック・ウィルソン、Ｂ・Ｊ・ノヴァク、ローラ・ダーン
＊角川シネマ有楽町ほかにて全国公開
ホームページ http://thefounder.jp/
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
＜ストーリー＞
1954年のアメリカ。シェイクミキサーを売り歩く52歳の営業マンのレイ・クロ
ック（マイケル・キートン）は、１度に８台もの注文が入り驚く。注文先はマ
ックとディックのマクドナルド兄弟が経営するバーガーショップ「マクドナル
ド」だった。さっそく店を訪ねたレイは、その無駄のない合理的なシステムに
感心する。ビジネスとしての可能性を見出したレイは、兄弟を説得してフラン
チャイズ化に乗り出すのだが……。
＜レビュー＞
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
巨大企業のウラ事情から見える資本主義の光と影
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
あの有名なハンバーガーチェーン「マクドナルド」。その"創業者"のレイ・ク
ロックの伝記ドラマです。
映画の冒頭で、そのレイ・クロックの顔が大写しになります。52歳の営業マン
の彼は自分が扱っているシェイクミキサー（シェイクを作る機械）を必死で売
り込むセールストークを展開しているのでした。しかし、客はあっさり断りま
す。いろんな職を転々としてきたレイですが、今の仕事もあまりうまくいって
いない様子です。
そんな中、突然、一度に８台もの注文が舞い込みます。いったいどんな客なの
か。レイがカリフォルニア州南部に車を飛ばすと、そこにあったのは大繁盛の
ハンバーガーショップ「マクドナルド」。経営するのは、マックとディックの
マクドナルド兄弟です。
その店は、システマティックな調理で、注文からわずか30秒で商品が出てくる
のをはじめ、当時としては画期的な店。レイは、「これは商売になる！」と感
じ、「絶対にフランチャイズ化すべきだ！」とマクドナルド兄弟に提案します。
しかし、兄弟は全店で質を維持するのは困難だと断ります。それでもレイは必
死で頼み込み、ついに契約を取り交わします。こうしてフランチャイズ化に乗
り出すのでした。
前半の見どころは、マクドナルド兄弟がレイに語る創業物語。開店前にテニス
コートに図を描いて、そこでスタッフ総出でシミュレーションした、なんて面
白いエピソードがテンコ盛り。それを『しあわせの隠れ場所』『ウォルト・デ
ィズニーの約束』のジョン・リー・ハンコック監督が軽妙に描きます。
ここまで聞いてお気づきのように、このままなら創業者はマクドナルド兄弟で、
レイではありません。それがなぜ"創業者"になったのか。それが後半で描かれ
ます。
レイは妻に内緒で家を抵当に入れて金を借り、店をオープンさせます。友達に
も声をかけて出店させます。しかし、何だか変な店も出てきたりして、思うよ
うにいきません。そこで、自ら気に入ったオーナーをスカウトして、店を出さ
せます。
実のところ、マクドナルド兄弟とレイの間には、最初から隙間風が吹いている
のですが、それでもこの頃までは、レイも兄弟同様に、店の質を落としたくな
いという共通の思いがあります。
しかし、まもなく転機が訪れます、店は増えるものの、利益が思うように上が
らないレイ。借金が返せずに家を取られそうになります。妻にも知られて険悪
な雰囲気に。そんな苦境を背景に、彼はコスト削減のため低品質の商品を売ろ
うとします。それが兄弟を激怒させ、ますます両者の関係は悪くなります。
そして決定的だったのが、レイが新たなビジネスを始めたこと。ある男のアド
バイスで、自分で土地を買って、それをリースするビジネスモデルをつくり上
げたのです。これは飲食店というよりもはや不動産業です。
ドラマが進むにつれて、レイはどんどん強引に、どんどん容赦なくビジネスを
展開していきます。それにつれて、伝記映画を越えた作り手の意図が見えてき
ます。それは金さえ稼げれば何でもありの、弱肉強食の資本主義の様相です。
そして、ついにレイはマクドナルド兄弟と全面対決し、彼らから「マクドナル
ド」を奪って、自ら"創業者"を名乗ったのでした。
はたしてレイは偉大なビジネスマンなのか、それとも血も涙もない資本主義の
怪物なのか。観る人によって解釈が異なりそうな映画です。作り手も、そこは
断定的に描きません。
しかも、レイを演じるのはマイケル・キートン。ワルから正義のヒーローまで、
何でもできちゃう人ですからね。善悪の境界線をいく絶妙の演技が、この映画
をより陰影の深いものにしています。
身近な企業のウラ事情を知るだけでも面白いのですが、資本主義の光と影を見
せつけられるという意味でも、見応えのある映画です。
≪ぽちの満足度≫
★★★★☆
（90点）
（田中ひろあき）
〔鑑賞データ〕
2017年7月29日（土）角川シネマ有楽町にて。午後1時10分の回
[「ふ」のページ]
|