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逆光の頃
（2017年 日本）（上映時間1時間6分）
監督・脚本・撮影：小林啓一
出演：高杉真宙、葵わかな、清水尋也、金子大地、桃月庵白酒、佐津川愛美、
田中壮太郎
＊新宿シネマカリテほかにて公開。全国順次公開
ホームページ http://gyakko.com/
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＜ストーリー＞
京都で生まれ育った高校2年生の赤田孝豊（高杉真宙）は、幼なじみのみこと
（葵わかな）への恋、同級生たちとの友情やケンカなどを経験しながら、少し
ずつ成長していく……。
＜レビュー＞
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京都の高校生の日常と成長を瑞々しく綴る
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青春ど真ん中の高校2年生の日常を描いたドラマ。漫画家のタナカカツキの初期
のコミックの実写映画化です。ちなみに、タナカカツキはフィギュアの「コッ
プのフチ子さん」の原案者でもあるそうです。
主人公の赤田孝豊は、京都に住むどこにでもいそうな高校生。まじめでよい子
ですが、ちょっと抜けたところがあります。そして、当然ながら人並みに悩み
もあったりします。
そんな彼の日常が、いくつかのエピソードを積み重ねる形で描かれるこの映画。
ただし、とりたてて大きなことは起きません。
前半で描かれるのは、彼にとって憧れと羨望の的であるらしい同級生の公平と
のエピソード。バンド活動をする彼は模擬試験を受けずに、ライブハウスに出
演します。それを観客席から見つめる孝豊。そして、その後、河原で無邪気に
水遊びする2人。まさにキラキラ輝く青春です。しかし、まもなくライブハウス
は閉店が決まり、マスターの勧めもあって公平は学校をやめて上京してしまい
ます。
中盤では、孝豊と幼なじみの、みことの恋が描かれます。夏休みにわざわざ学
校に行き、毎日英単語を覚えることにした孝豊。しかし、夜になっても家に帰
ってきません。心配したみことが学校に行ってみると、孝豊はつい居眠りして
しまっていたのです。
警備員に見つかるとまずいからと、2人は隠れます。その間の交流が描かれます。
それは実に初々しい恋。宇宙人がいるかどうかという他愛もない話をしたり、
２人で並んで美しい満月を眺めたり。同時に、そこで、ほんのちょっとした奇
跡を起こして見せます。何とも心にしみる素晴らしいシーンです。
後半では、今までケンカなどしたこともない孝豊が、自分とみことのことをか
らかう不良に対して、初めてのケンカを挑みます。そこには「あんな奴一発殴
ればいいのに」というみことの言葉や、孝豊の父親が昔、極道相手に大立ち回
りを演じたというエピソードが絡んできます。
その後、彼は父親から伝統工芸の手ほどきを受けます。これもまた彼の成長を
物語る出来事です。
こうしてほのかな恋愛、親子関係、友人関係など、青春時代の様々な側面を切
り取る小林啓一監督。『ももいろそらを』（2012）、『ぼんとリンちゃん』（2
014）と、瑞々しい青春を紡いできただけに、今回もキラキラと輝く青春を瑞々
しく切り取っています。
特に映像が魅力的です。アニメなども織り込みつつ、美しく鮮度の高い映像を
生み出しています。
京都が舞台ということもあって、その風景も印象的に使われています。孝豊と
みことが学校から帰る河原のシーンは、この世のものとは思えないほど幻想的
です（鴨川の納涼床？）。五山の送り火や満月の映像も素晴らしい映像です。
キラキラする青春にノスタルジーの香りも漂わせて、味わいに満ちた映画に仕
上げています。ただし、この映画の上映時間はたった66分。もう一つか二つエ
ピソードを重ねて、あと20分ぐらい長くしても良かった思うのですが……。
≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
（88点）
（田中ひろあき）
〔鑑賞データ〕
2017年7月12日（水）新宿シネマカリテにて。午後12時の回
[「き」のページ]
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