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ハクソー・リッジ（HACKSAW RIDGE）
（2016年 アメリカ・オーストラリア）（上映時間2時間19分）
監督：メル・ギブソン
出演：アンドリュー・ガーフィールド、サム・ワーシントン、ルーク・ブレイ
シー、テリーサ・パーマー、ヒューゴ・ウィーヴィング、レイチェル・グリフ
ィス、ヴィンス・ヴォーン
＊TOHOシネマズスカラ座ほかにて全国公開
ホームページ http://hacksawridge.jp/
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＜ストーリー＞
ヴァージニア州で生まれ育ったデズモンド・ドス（アンドリュー・ガーフィー
ルド）。父のトム（ヒューゴ・ウィーヴィング）は、第1次世界大戦で心に傷を
負い、酒におぼれていた。やがて、成長したデズモンドは、看護師のドロシー
（テリーサ・パーマー）と恋におちる。そんな中、激化する第2次世界大戦に心
を痛めたデズモントは、衛生兵になるべく陸軍に志願する。だが、「汝、殺す
ことなかれ」という聖書の教えを大切にする彼は、基地での訓練で銃に触れる
ことを拒絶し、上官や他の兵士たちから嫌がらせを受ける。それでも信念を曲
げないデズモンドは軍法会議にかけられるが、彼の主張が認められる。こうし
て激戦のハクソー・リッジ（沖縄の前田高地）へと赴くデズモンドだったが…
…。
＜レビュー＞
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非武装の兵士を通して戦争や軍隊、そして人間の生き方を問う
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『マッドマックス』などで知られる俳優のメル・ギブソン。10年ぶりの監督作
は、実話をもとにしたドラマ。第2次世界大戦で武器を持たずに戦場に行って兵
士の命を救った米軍衛生兵を描いています。
前半はなぜ主人公がそんな行動をとるに至ったかを描きます。ヴァージニア州
で生まれ育った主人公のデズモンド・ドス。父のトムは、第1次世界大戦で心に
傷を負い、酒におぼれています。おまけに、デズモンドはケンカの果てに兄の
命を奪いそうになってしまいます。このことで、彼はキリスト教の「汝、殺す
ことなかれ」という教えを大切にするようになります。
続いて描かれるのは青年時代。デズモンドは、事故で重傷を負った少年の命を
適切な処置で救います。これが、彼のその後の人生につながります。さらに、
彼は少年が運ばれた先の病院で、看護師のドロシーと出会い恋に落ちます。
この前半があるからこそ、その後のデズモンドの言動が説得力を持ったものに
なります。
やがてデズモンドは軍隊に入隊します。しかし、狙撃の訓練が始まったとたん、
銃に触れることを拒否します。もちろんその背景には、彼の厚い信仰心があり
ます。
上官はデズモンドに除隊を勧めます。それも拒否したため、上官や仲間の兵士
たちから嫌がらせを受けることになります。おまけにドロシーとの結婚式にも
出られずに、命令を拒否したかどで軍法会議にかけられてしまいます。それで
もデズモンドは「信念を曲げては生きていけない」と言い切ります。
最初は、宗教的信念を基盤にしたデズモンドの姿を描いていたギブソン監督。
過去の監督作品『パッション』でキリストの受難を描いた監督らしい視点です。
しかし、ドラマが進むにつれて宗教的信念という枠を超えて、人間としての生
き方というテーマが浮上してきます。
軍法会議でピンチを迎えたデズモンドを救うのは意外な人物。こうして彼は望
み通りに武器を持たずに戦場に向かいます。
後半は、ハクソー・リッジでの壮絶な戦いを描きます。これが、かなりエグい
描写なのです。あっさりと頭を撃ち抜かれ、火炎放射器で火あぶりになり、内
臓をまき散らし、手足をもがれ、苦痛にのたうち回る兵士たち。『パッショ
ン』や『アポカリプト』で暴力や苦痛を「これでもか」という容赦のなさで描
いてきたギブソン監督は、今回もまったく手をゆるめません。
その中から、戦争や軍隊の本質も見えてきます。戦場に来る前は、デズモンド
を臆病者扱いしていた兵士たちが、恐怖で顔をゆがめ、弱音を吐く皮肉。それ
に対して、デズモンドは本当に武器を持たずに丸腰で、兵士の命を救っていき
ます。
そして、デズモンドが武器を持たないことを誓う原因となった、もう一つの衝
撃的な事件も明らかにされます。やはり、彼を突き動かしているのは宗教的信
念だけではなかったのです。
クライマックスには大きな見せ場が用意されています。戦場に一人残ったデズ
モンドが、多数の負傷者の救出にあたります。しかし、そこにはまだ敵の目が
光っています。しかも、そこは切り立った崖の上。どうやって、デズモンドは
負傷兵たちを救うのか？
手に汗握る展開で全く目が離せません。2時間19分があっという間でした。そし
てデズモンドの行動で印象的なのは、仲間の兵士だけでなく、敵である日本軍
の兵士まで救おうとすること。彼の信念の強さをうかがわせます。
戦争や軍隊についてはもちろん、人間の生き方についても考えさせる作品でし
た。観応え十分です。
≪ぽちの満足度≫
★★★★☆
（93点）
（田中ひろあき）
〔鑑賞データ〕
2017年6月24日（土）ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後12時15分の回
[「は」のページ]
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