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はじまりへの旅（CAPTAIN FANTASTIC）
（2016年 アメリカ）（上映時間1時間59分）
監督・脚本：マット・ロス
出演：ヴィゴ・モーテンセン、フランク・ランジェラ、キャスリン・ハーン、
スティーヴ・ザーン、ジョージ・マッケイ、サマンサ・イズラー、アナリー
ス・バッソ、ニコラス・ハミルトン、シュリー・クルックス、チャーリー・シ
ョットウェル
＊新宿ピカデリーほかにて全国公開
ホームページ http://hajimari-tabi.jp/
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＜ストーリー＞
アメリカ北西部の山奥の森で、自給自足のサバイバル生活を送るベン・キャッ
シュ（ヴィゴ・モーテンセン）と６人の子供たち。ノーム・チョムスキーを信
奉する厳格なベンの指導で、子供たちはアスリート並みの体力を持ち、学校に
行かないにも関わらず6カ国語を操ることができた。そんなある日、数年前から
入院生活を送っていた母親レスリーが亡くなってしまう。レスリーの家族から
拒否されたものの、一家は葬儀に出席するため2400km離れたニューメキシコを
目指して自家用バスを走らせるのだが……。
＜レビュー＞
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風変わりな家族の絆と成長のドラマ
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風変わりな家族の物語です。冒頭は森林の俯瞰。そこは山奥の森の中。この森
で父親ベンと6人の子供たちが、自給自足の原始的な暮らしをしています。厳格
なベンの指導の下で過酷なトレーニングをしているため、子供たちはすさまじ
い体力の持ち主。そして学校にこそ行かないものの、多彩な読書から豊富な知
識を持ち、6か国語を操ります。
ちなみに、父親ベンがこんな暮らしをしている根底には反体制・反権力という
ようなラジカルな考えがある模様。彼は有名な言語学者のノーム・チョムス
キーを信奉しています。
しかし、まあ、どう考えてもこの父親、自分の身勝手で子供たちを縛っている
としか思えないわけで、そのうちに絶対に破綻がくるのが見えています。つま
り、大筋は読めてしまう話。ですが、それでも面白い映画になっています。
何といっても風変わりな家族を生き生きと描いているのが魅力。見た目は普通
なベンの子供たちの世間とはかけ離れた言動で、たくさんの笑いを振りまくな
ど、観客を飽きさせない工夫がそこかしこにあります。
彼らの転機は入院していた母レスリーの死によって訪れます。ベンと仲の悪い
レスリーの父親は、「お前ら葬式に来るな！」と拒否。それに対して子供たち
が「葬儀に出たい！」といい、ベンもレスリーの遺言に書かれていたことを実
現しようと決意。一家はニューメキシコを目指して自家用バスを走らせます。
ここからはロードムービーになります。そこで起きる様々な出来事を通して、
子供たちは父親が主導する今の生活に疑問を持ち始めます。
そして、ついに一家は葬儀の場に乗り込んで大騒ぎに……。それをきっかけに、
子供たちは自立へのカウントダウンに突入。そして、父親ベンも、今まで自分
がやってきたことに疑問を感じ始めます。
クライマックスの盛り上げ方も、なかなかのものです。いったんは、バラバラ
になりかけた家族。しかし、母の遺言貫徹のためミッション遂行に乗り出しま
す。テンポの良いスリリングな展開の後に待っているのは、水辺での弔い。そ
こで家族が歌うガンズ・アンド・ローゼズの「Sweet
Child O'Mine」が印象的
です。
それがあるから、その後の後日談も納得できます。家族は再び絆を結んだもの
の、それは以前のものとは全く違います。
ラストにかなり長めに映される食卓シーン。何も言わず、ただ子供たちを見つ
める父親。そして、めいめい自由に振る舞う子供たち。清々しさと未来への希
望を感じさせるラストでした。
というわけで、陳腐な話になりがちなドラマをこれだけ面白くしたのは、マッ
ト・ロス監督による演出・脚本の功績。そして、それ以上に見事なのがヴィ
ゴ・モーテンセンの演技。エキセントリックさと普通さを巧みに混在させ、こ
こぞというときには観客の胸に迫る演技を披露します。さすがです。
≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
（88点）
（田中ひろあき）
〔鑑賞データ〕
2017年4月2日（日）ヒューマントラストシネマ渋谷にて。午後2時25分の回
[「は」のページ]
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