光

（2017年　日本）（上映時間2時間17分）
監督・脚本：大森立嗣
出演：井浦新、瑛太、長谷川京子、橋本マナミ、梅沢昌代、金子清文、中沢青
六、足立正生、原田麻由、鈴木晋介、高橋諒、笠久美、ペヤンヌマキ、福崎那
由他、紅甘、岡田篤哉、早坂ひらら、南果歩、平田満
＊有楽町スバル座、新宿武蔵野館ほかにて公開
ホームページ　http://hi-ka-ri.com/
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＜ストーリー＞
東京の離島、美浜島で暮らす中学生の信之は、同級生の美花と付き合っていた。
父親から激しい虐待を受けていた小学生の輔は、信之を慕っていた。ある夜、
信之は神社の境内で美花が男に犯されている姿を見て、男を殺してしまう。そ
れを目撃していた輔は、死体をカメラに収める。それからまもなく、島は地震
による津波に襲われすべてが消え去る。25年後、信之（井浦新）は東京で妻子
と暮らしていた。そんな彼の前に輔（瑛太）が現れ、25年前の事件をネタに彼
を脅す。さらに、輔は過去を捨てて女優になっていた美花（長谷川京子）も脅
し始める……。

＜レビュー＞
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荒々しさの中で人間の心の奥の闇が交錯する
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「まほろ駅前」シリーズでおなじみの三浦しをん原作、大森立嗣監督による映
画。とはいえ、ストーリーも演出もそれとはまったく違います。

物語のスタートの舞台は、東京の離島・美浜島。そこで暮らす中学生の信之は、
同級生の美花と付き合っています。そんな信之を慕っているのは、父親から激
しい虐待を受けていた小学生の輔。いつも信之にまとわりついています。

そんなある晩、信之は神社の境内で美花が男とセックスしているのを見てしま
い、美花に促されてその男を殺してしまいます。それを目撃していた輔は、死
体をカメラに収めます。それからまもなく、島は地震による津波に襲われすべ
てが消え去ってしまいます。

25年後、信之は東京で妻の南海子と幼い娘と暮らしています。そんな彼に輔が
接近します。南海子と肉体関係を持つようになり、25年前の事件をネタに信之
を脅します。さらに、輔は過去を捨てて女優になっていた美花も脅し始めます。

人間の奥底にあるどす黒いものに迫っていく映画です。幼い頃に、美花に促さ
れるようにして殺人を犯した信之ですが、その後はそれを封印して何事もなく
暮らしています。その前に、彼の過去を知る輔が現れて、様々な人物の狂気が
露わになってきます。

輔は父親に虐待されたこともあり、過去の出来事や現在の状況に不満を持って
います。それをひっくり返すべく、狂気をチラつかせるようになります。

一方、信之もまた、それまで封印していた狂気と暴力をちらつかせながら、輔
を再び支配し始めます。

おりしも、輔の前には父親・洋一が10年ぶりに現れ、彼を翻弄し始めます。信
之はそれも利用して、輔を狡猾に操ります。当初は自身の今の生活を守るため
に行動する信之でしたが、輔に脅かされていた美花と再会し、彼女を守るため
に狂気と暴力をエスカレートさせます。

その美花は、自分に対する信之の思いを利用して、彼を巧みに操ります。

というわけで、この3人の狂気が交錯するサスペンスドラマですが、展開や語り
口はかなり粗削りです。大森監督は、過去の作品とは全く違う作品をつくろう
としたようです。

時々流れる大音量のテクノミュージック。赤い花、巨大な樹木、信之と娘が訪
れる不思議な空間などの鮮烈なイメージショット。そうしたものも含めて、自
由かつ大胆に人間の奥底にあるものをえぐり出します。快感や楽しさはまった
くありません。むしろ不快で、常に背中がザワザワするような作風です。

そして特筆すべきなのは俳優たちの演技。静かで冷たい表情が秘めた狂気をに
じませる井浦新。汗や体臭も伝わってくるような瑛太の演技。両者の関係性に
は、同性愛的な屈折した愛情も見え隠れしています。長谷川京子の悪女ぶりも
なかなかのもの。平田満。橋本マナミも存在感タップリの演技でした。

不快感と緊迫感に包まれながら、最後まで目が離せない映画でした。

≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
（86点）

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（田中ひろあき）

2017年11月29日（水）新宿武蔵野館にて。午後2時25分の回

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