火花

（2017年　日本）（上映時間2時間）
監督：板尾創路
出演：菅田将暉、桐谷健太、木村文乃、川谷修士、三浦誠己、加藤諒、高橋努、
日野陽仁、山崎樹範
＊TOHOシネマズスカラ座ほかにて全国公開
ホームページ　http://hibana-movie.com/
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＜ストーリー＞
お笑いコンビ"スパークス"として活動しながらも、まったく芽が出ないお笑い
芸人の徳永（菅田将暉）は、ある日、営業先の熱海の花火大会で先輩芸人の神
谷と出会う。その天才肌の型破りな芸風にほれ込んだ徳永は、弟子入りを志願
する。すると神谷は「俺の伝記を書いてくれ」という条件で、それを受け入れ
る。2人は毎日のように飲みに出かけては芸について話し、徳永は神谷のお笑い
哲学に心酔していく。だが、2人の間にいつからかわずかな意識の違いが生まれ
るようになる……。

＜レビュー＞
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売れない芸人たちを通してうたい上げる負け組への応援歌
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人気お笑い芸人の又吉直樹が芥川賞を受賞したベストセラー小説を、同じくお
笑い芸人で映画監督としても評価が高い板尾創路が映画化しました。

主人公は、お笑いコンビ"スパークス"の徳永。ある日、営業先で先輩芸人の神
谷と出会った彼は、弟子入りを志願します。それに対して神谷は、「それなら
俺の伝記を書いてくれ」という条件を出します。

神谷は天才肌で破天荒な人間。彼が組んでいるコンビ名は「あほんだら」。そ
の漫才も常識を外れたものです。いわゆる「巧い漫才師」などでなく、そうい
う芸人に徳永がほれ込むという構図が、この映画の大きなポイントです。なぜ
なら芸人が考える純粋な面白さと、世間が求める笑いのギャップが、この映画
の大きなテーマだからです。

こうして師弟関係になった徳永と神谷。徳永は神谷の要求通りに、彼の言動を
目の当たりにして伝記を書きます。そこに描かれた神谷と徳永自身の2人の10年
間に渡るドラマが、この映画の展開の柱になります。

何より面白いのが2人の会話です。それはまさしく漫才のボケとツッコミ。何気
ない会話も、すぐに笑いの方向に走っていきます。ただし、それを通して様々
な真実もチラリチラリと見えてきます。さすがに原作者と監督が現役のお芸人
ということで、芸人世界の裏舞台もたっぷりと描かれます。

やがて大阪で活動していた神谷は東京に出てきて、風俗嬢の家に居候します。
しかし、相変わらずの破天荒さゆえに、思うような成功は得られません。一方、
徳永のコンビ「スパークス」は、一時的に多少売れるようになります。しかし、
基本的には鳴かず飛ばずのまま。バイト生活をしながら、芸人としての活動を
続けます。そんな中、相方との間にも隙間風が吹き始めます。

徳永が直面したのが、先ほど述べた芸人が考える純粋な面白さと、世間が求め
る笑いのギャップ。なかなか売れない徳永たちを尻目に、キャラ勝負の芸人が
あっという間にスターになったりします。それは徳永の求める笑いとは違いま
す。はたして徳永は世間に妥協するのか。それとも思いのままに突っ走るのか。

ただし、そんな徳永の苦悩がイマイチ伝わりにくいのが惜しいところ。そうい
う心情は、基本的に彼の独白で処理しちゃっているんですよね。できれば独白
やセリフ以外で、もっと徳永の抜き差しならない心情をじりじりとあぶりだし
て欲しかったのですが。

それでも終盤になると、ようやく徳永たちの心情がスクリーンを覆います。特
に最後のライブで彼が胸の内をぶちまけるシーンは壮絶で迫力満点。

その後の後日談はよくある展開ですが、意表を突いた展開を盛り込みつつ、明
確なメッセージを発しているところに好感が持てます。それは夢を果たせなか
った負け組たちに対する温かな応援歌です。彼らの負けがけっして無駄ではな
かったことを力強く伝えて、温かな余韻を残してくれます。

≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆
（83点）

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（田中ひろあき）

2017年11月26日（日）ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後2時40分の回

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