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ひかりのたび
（2017年 日本）（上映時間1時間31分）
監督・脚本：澤田サンダー
出演：志田彩良、高川裕也、瑛蓮、杉山ひこひこ、萩原利久、鳴神綾香、山田
真歩、浜田晃
＊新宿K's
cinemaほかにて公開。全国順次公開
ホームページ http://hikarinotabi.com/
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＜ストーリー＞
とある地方都市。不動産業を営む植田（高川裕也）は、娘の奈々（志田彩良）
とともに4年前にこの町に引っ越してきた。不動産業を営む彼は、町の土地を買
い占めて外国人に売却していたため、地元では彼を快く思わないものも多かっ
た。一方、父の仕事の関係で転校続きだった高校3年生の奈々は、最も長く住ん
でいるこの町に愛着を感じ、この町で働きたいと思うようになるのだが……。
＜レビュー＞
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地方都市を舞台にモノクロ映像で描く父娘の葛藤
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地方の疲弊、外国人による土地買い占めなどの現実の社会問題を背景に、父と
娘の葛藤がリアルに描かれたドラマです。善意と悪意、理性と感情など、お金
と人間性など価値観を揺さぶる様々な対立概念を内包したドラマでもあります
妻と離婚後、男手一つで娘の奈々を育ててきた植田。2人は4年前に今の町に越
してきました。町はご多分に漏れず人口減少が続く地方都市。そんな中、不動
産業を営む植田は、町の土地を買い占めて外国人に売却していました。そのた
め、地元では彼を快く思わない者もいます。
植田は淡々と仕事をこなします。彼の仕事はいわゆる地上げ屋ですが、悪徳ブ
ローカーのような風体をしているわけではありません。冷静沈着、交渉相手か
らどんなに激しい言葉を投げつけられても表情を変えません。そして、相手の
面倒を何かと見ようとします。もちろん、それはただの親切心からではなく前
提にビジネスがあるわけだから、相手は素直に好意を受け取りません。だが、
それも織り込み済みで植田は行動します。
そんな父のせいで、高校3年生の娘の奈々は迷惑をこうむっています。彼女が通
学に使っている自転車が何度も壊されます。どうやらそれは父を敵視する町の
住人の仕業のようです。だが、奈々はそれを父に報告するものの、激しく父を
責めることもなければ、ことさらに父を遠ざけることもしません。
2人はそれぞれに心に葛藤を抱えています。植田は割り切って自身の仕事をこな
し、そこにある種の喜びも見出してもいるようですが、それが娘に悪影響を与
えていることに対して申し訳ない感情もあります。だからこそ、早く仕事にケ
リをつけて、この町を出て行きたいと考えています。
奈々も、そんな父の思いは理解しているようです。それでも、父の仕事の関係
で転校続きだった奈々は、最も長く住んでいるこの町に愛着を感じ、卒業後は
この町で働きたいと思っています。
元町長の三好、父が死んで空き家となった実家の片づけに訪れた優子、彼女の
幼なじみでワケありらしい道子などが絡んで、ドラマは終盤を迎えます。
植田は、この町に残りたいという奈々を翻意させようとしますが、彼女の気持
ちは変わりません。植田は娘のために3年前のある衝撃的な出来事を告白します。
ラストには、この映画で唯一、植田と奈々が笑顔を交わす場面があります。そ
れは単なる親子の心の通いあいではなく、奈々の自立と親子の別れを物語るも
のでしょう。
これが商業映画デビューだという澤田サンダー監督は、絵本「幼なじみのバッ
キー」で岡本太郎現代芸術賞に入選するなど多彩な人物のようです。
父の植田を演じた高川裕也は、テレビ番組「カンブリア宮殿」のナレーション
で知られる人物とのこと。その無表情さと額に刻まれた深いシワが、植田の内
面をより重層的に見せています。
それに対して、娘の奈々を演じた志田彩良はファッション誌「ピチレモン」の
専属モデルを務めたとのこと。ちょっと宮﨑あおいを思わせる顔立ちで、奈々
の心の奥底にある暗い影をさりげなく見せています。
≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
（85点）
（田中ひろあき）
〔鑑賞データ〕
2017年10月5日（木）新宿K's cinemaにて。午後12時35分の回
[「ひ」のページ]
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