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否定と肯定』（DENIAL）
（2016年 イギリス・アメリカ）（上映時間1時間50分）
監督：ミック・ジャクソン
出演：レイチェル・ワイズ、トム・ウィルキンソン、ティモシー・スポール、アンドリュー・スコット、ジャック・ロウデン、カレン・ピストリアス、アレックス・ジェニングス
＊TOHO シネマズ シャンテほかにて全国公開
ホームページ http://hitei-koutei.com/
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＜ストーリー＞
1994年、アメリカの大学で教鞭をとるユダヤ人女性の歴史学者デボラ・E・リップシュタット（レイチェル・ワイズ）は、イギリスの歴史家デイヴィッド・アービング（ティモシー・スポール）が主張する「ホロコースト否ップシュタットを名誉棄損で訴える。訴えられた側に立証責任があるイギリスの司法制定論」を看過できず、自著の中で彼の説を真っ向から否定する。するとアービングは、リ度において、リップシュタットは「ホロコースト否定論」を崩す必要があった。そんな彼女のために、法廷弁護士リチャード・ランプトン（トム・ウィルキンソン）をはじめとする弁護団が組織される。やがて王立裁判所で裁判が始まるのだが……。
＜レビュー＞
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ホロコースト否定論者と闘う女性歴史学者の成長
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ナチスによるユダヤ人虐殺、いわゆるホロコーストを否定する人物と、ユダヤ人女性の歴史学者との裁判闘争の行方を描いた実話をもとにした映画です。
主人公はアメリカの大学で教鞭をとるユダヤ人女性の歴史学者デボラ・E・リップシュタット。彼女は、イギリスの歴史家デイヴィッド・アービングが主張する「ホロコースト否定論」を看過できず、自著の中で彼の説を真っ向から否定します。しかし、アービングは、それをネタにリップシュタットをイギリスの裁判所に名誉棄損で訴えます。
イギリスの司法制度では、訴えられた側に立証責任があります。それだけ難しい裁判ではあるものの、リップシュタットは受けて立つことにします。彼女は頑固で、自信家で、猪突猛進型の性格の持ち主だったのです。まもなく彼女のためにイギリス人たちによる弁護団が組織されます。
イギリスの法廷で実際に弁護をするのは、法廷弁護士の役目。その法廷弁護士に就いたのはリチャード・ランプトン。ベテランで実績充分ですが、アウシュビッツの現地調査での行動などから、リップシュタットは彼に不信感を持ちます。
さらに、弁護団は裁判でホロコースト生存者ばかりか、リップシュタット自身にも証言させないことにします。自らホロコーストの真実を証明したいと意気込んでいたリップシュタットにとって、それはとても耐えがたいことでした。
そんなふうに屈折しまくった裁判ではあるものの、『ボディガード』で知られるベテランのミック・ジャクソン監督が、メリハリのきいた面白い法廷劇に仕上げています。
その最大の要因は、法廷弁護士リチャードを演じるトム・ウィルキンソンと、ホロコースト否定論者アービングを演じるティモシー・スポールにあります。
2人の対決の最大のヤマ場は終盤に訪れます。アービングは「収容所にガス室など存在せず、遺体置き場兼防空壕だった」と主張。それにリチャードが理詰めで挑んでいきます。緊迫感と迫力に満ちたシーンです。
そんな法廷劇と同時に、リップシュタットの成長を描いた人間ドラマも描かれます。最初は直情型で、頑固で、自信家だった彼女は、裁判が進むにつれて、自分の感情だけをぶつけても事態は良い方向に向かわないと理解し始めます。
主演のレイチェル・ワイズの演技がさすがです。法廷では証言を許されないため、その表情だけで様々な感情を表現します。
ドラマの最後には一応のカタルシスが用意されています。ただし、お気楽なハッピーエンドにはなっていません。そもそもアービングの意図は、裁判で勝つ以上に自らをアピールすることにあったわけで、彼はある意味、目的を達したともいえます。歴史修正主義者とは厄介な存在であることを、強く印象付けるラストです。
ホロコーストに限らず、歴史を捻じ曲げようとする人間は、古今東西、様々な場所にいるだけに、なおさら重要な意味を持つ映画だと思います。
≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
（89点）
（田中ひろあき）
2017年12月9日（土）TOHOシネマズ シャンテにて。午後1時50分の回
[「ひ」のページ]
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