家族はつらいよ2


(2017年 日本)(上映時間1時間53分)
監督:山田洋次
出演:橋爪功、吉行和子、西村雅彦、夏川結衣、中嶋朋子、林家正蔵、妻夫木
聡、蒼井優、有薗芳記、広岡由里子、近藤公園、小林稔侍、風吹ジュン、中村
鷹之資、丸山歩夢、劇団ひとり、笑福亭鶴瓶
*丸の内ピカデリーほかにて全国公開
ホームページ http://kazoku-tsuraiyo.jp/
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<ストーリー>
東京郊外に暮らす三世代同居の平田一家。当主の周造(橋爪功)は、マイカー
での外出を楽しみにしていたが、車に傷が目立ち始める。そこで、高齢者の危
険運転を心配した家族は、周造に運転免許を返上させようと画策する。だが、
周造を説得する役回りを互いになすりつけ合ううちに、周造を激怒させてしま
う。そんな中、周造は故郷・広島の高校時代の同級生・丸田(小林稔侍)と40
年ぶりに偶然の再会を果たす。かつては羽振りの良かった丸田だが、今はア
パートで独り暮らしをしていた。その姿を不憫に思った周造は、同窓会を開い
て励ますのだが……。

<レビュー>
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「無縁社会」「下流老人」という深刻な問題を笑いにくるんで描く
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山田洋次監督による2016年の喜劇映画『家族はつらいよ』の続編です。前作同
様に、東京郊外に暮らす三世代同居の平田家を舞台に、家族が起こす大騒動を
描いています。

前作は熟年離婚をネタに大騒動が勃発しましたが、今回は高齢者の運転をめぐ
る問題が浮上して、大変な騒ぎになります。

最近、周造の車に傷が多いのを心配した家族。「人身事故でも起こしたら大変
だ」ということで、運転免許を返上させようとします。しかし、頑固な周造に
誰が話をするのか、同居する長男夫妻をはじめ、長女夫妻、次男夫妻がみんな
お互いに役目をなすりつけ合います。それを察知した周造は激怒します。

何しろ『男はつらいよ』をはじめ、長年喜劇を作り続けてきた山田監督だけに、
全編笑いが途切れません。個性的な家族によるテンポの良い会話で、爆笑から
クスクス笑いまで、様々な笑いを散りばめます。まるでコントのようなベタな
笑いもあります。絶妙の間も印象的で、これぞ喜劇という感じです。

とはいえ、ただ笑えるだけではありません。社会問題をきっちり織り込みます。
それは高齢化社会をめぐる様々な問題です。

妻の富子がカルチャースクールの仲間とともに、海外にオーロラを見に出かけ
たのをいいことに、周造はお気に入りの居酒屋の女将を乗せて車を走らせます。
その途中で、工事現場の交通整理をしている人物に出会います。彼は広島の高
校時代の同級生の丸田でした。丸田は高校時代はモテモテで実家も裕福だった
のに、その後事業に失敗して、今は家族とも別れて一人で粗末なアパートに暮
らしています。彼を通して、下流老人、無縁社会という深刻なテーマが見えて
きます。

周造は丸田のために即席の同窓会を開き、その帰りに彼を自宅に泊めます。し
かし、翌朝、丸田は冷たくなっています。そこからの描き方が秀逸です。救急
車の到着、死亡確認、そして警察に移管されて刑事の到着というように、こう
した場合の対応がリアルに描かれます。

ただし、それでもそこには笑いが満ちています。たまたま集合していた家族が、
刑事の事情聴取を受ける場面は、まるで舞台劇のような面白さ。小心な新米警
察官、調子のいい鰻屋なども配置して笑いを途切れさせません。

そして、強烈なメッセージが。周造の口を借りて、今の日本社会の理不尽さを
ストレートに、怒りを込めて告発します。山田監督の強い思いが伝わってきま
す。

最後は、丸田の葬儀をめぐる一件で、平田家の家族の人情の機微をすくいとり、
ホロリとさせます。おまけに、火葬場の職員としてチラッとあの人を登場させ
て、またまた観客を笑わせます。

個人的には前作よりも今回のほうが良かったと思います。社会問題を取り上げ
て、これだけ明確なメッセージを発し、ちょっぴりホロッとさせる。そして何
よりも楽しく笑わせてくれる。観客の年齢層は高いようですが、若い人にも山
田洋次監督の職人技をぜひ目撃してもらいたいものです

≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆(+1/2★)
(89点)

                             (田中ひろあき)

〔鑑賞データ〕
2017年5月27日(土)ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後1時30分の回


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