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トッド・ソロンズの子犬物語（WIENER-DOG）
（2015年 アメリカ）（上映時間1時間28分）
監督・脚本：トッド・ソロンズ
出演：エレン・バースティン、キートン・ナイジェル・クック、キーラン・カ
ルキン、ジュリー・デルピー、ダニー・デヴィート、グレタ・ガーウィグ、ト
レイシー・レッツ、ゾーシャ・マメット
＊ヒューマントラストシネマ渋谷ほかにて公開
ホームぺージ http://koinu-story.jp/
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＜ストーリー＞
小児ガンの男の子の家で飼われることになったダックスフント。だが、問題ば
かり起こすため母親（ジュリー・デルピー）たちによって安楽死させられそう
になる。それを救ったのが獣医の助手ドーン（グレタ・ガーウィグ）。その後
はアメリカ中をさまよい、映画学校で講師をしている落ち目の脚本家（ダ
ニー・デヴィート）や偏屈な老女（エレン・バースティン）など、様々な人々
の手を渡り歩いていくのだが……。
＜レビュー＞
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一匹の犬を通して描く現代社会の人間模様
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この映画の監督・脚本のトッド・ソロンズの過去の映画は未見ですが、ブラッ
クな笑いで人間の暗部を描いてきた監督だそうです。そんなイメージでこの映
画を観たら、良い意味で裏切られてしまいました。確かにブラックな笑いはあ
るものの、えげつなさは感じられず、むしろ不思議な詩情さえ感じてしまいま
した。
ダックスフントの子犬の話です（みんなウィンナー・ドッグと呼んでいます）。
といっても、かわいらしい動物物語ではありません。犬は狂言回しのような存
在で、その飼い主たちの人間模様を描いています。
最初の飼い主はがん患者の男の子。父親が子供のために子犬を連れてきたので
すが、母親は最初から嫌そう。子犬はいろいろと問題を起こし、留守中に子供
が人間の食べ物を与えて下痢をして、あちこちにウンチをまき散らします。そ
れに母親がブチ切れて安楽死を決断します。
しかし、持ち込まれた動物病院で助手の女がかわいそうに思って、自分の家に
連れてきます。彼女は孤独を抱えているようで、たまたま会った昔の同級生の
男に誘われて、一緒に旅に出ます。向かった先は彼のダウン症の弟夫婦の家。
そこでは、酒浸りで寂しく死んだ彼らの父親の死を介して、兄弟の和解が描か
れます。
こうして今度はその家に飼われたはずの子犬。しかし、そこで人を食ったイン
ターミッション（途中の休憩）が登場。子犬が西部劇のような荒野を進みます。
後半は落ち目の脚本家に飼われる子犬。せっかく書いた脚本の売り込みがうま
くいかず、講師をしている学校でも悪評まみれでクビの危機にある彼は、犬を
使ってとんでもない行動に出ます。
最後は偏屈そうな老女に飼われる子犬。そこに孫が金を借りに来ます。どうや
らその老女は孤独で人生にたくさんの後悔を抱えている模様。それが少女時代
のたくさんの分身たちと対話するユニークな仕掛けで描かれます。
というわけで、ブラックな笑いはあちこちにあるものの、それほど過激ではあ
りません。意外にマジメな映画です。犬の飼い主になった様々な個性的な人物
を通して、人間のダメさや弱さが見えてきます。同時に家族の抱えた問題や人
生の孤独など、現代社会の様々な風景も描かれています。
ラストはちょっとやりすぎ。あれがこの監督の持ち味なのでしょうが、あそこ
までやるのはちょっとねぇ。それでもあと味はそんなに悪くありません。ダメ
人間やどうにもならない人生を否定せずに、優しく見つめる視線が感じられる
からです。
変わった映画なので誰にもおススメするわけではありませんが、独特の世界観
は一見の価値があります。
≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆
（80点）
（田中ひろあき）
〔鑑賞データ〕
2017年1月22日（日）ヒューマントラストシネマ渋谷にて。午後3時15分の回
[「と」のページ]
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